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53 ヘーロンに行く話


 途中のじゃれ合いはともかく妨害らしい妨害にも遭わず、街道のボス前へと辿り着いた。


 なんか2足歩行状態で待ち構えているけれど、ある一定エリアに入らなければ襲っては来ないらしい。

 立ち上がった状態で体高3mもあり、見た目は丸っきり月輪熊だ。体毛は黒に喉元だけに白い半円が描かれている。


「行くわよ!」


 アニエラさんと俺が真っ向から。

 俺たちの影に隠れるようにアルヘナが隙を突くように。デネボラさんがフレンドリィファイヤーにならないように魔法を撃ち込む算段である。


 アニエラさんが腕の降り下ろしを盾で受け流しながら、脇腹を切り裂いていた。同じ箇所を(えぐ)るようにアルヘナのナイフが刺さり、リングベアが悲鳴をあげる。


 俺は何時も通りに急所狙いをするのだが、リングベアの赤く見える部分は上半身に集中している。

 あっちから攻撃してこないとカウンターも有効に使えないな。


 1度腕の降り下ろし攻撃をトンファーで受けた時に、ニブイ音がした。

 あー、ダンジョン以降メンテナンスしてないから耐久度が限界か?

 それから2度程有効打を与えたところでポッキリ折れたのは言うまでもない。


 素手だと威力が低くなるからなあ、ゲーム内でも闘気とか使えればいいんだが無いものねだりしても仕方がない。以降は関節の弱い部分を重点的に狙って殴る蹴るの攻撃。

 だがトドメを差したのはアルヘナである。



「はぁああ。ここで壊れるか……」

「残念だったわね」


 アニエラさんが肩を叩いて慰めてくれた。

 傷心の中でドロップ品を確認していたら、幸い骨鶏トンファーに代わるものがあった。インベントリから出してみれば、熊の腕型の籠手である。


「なにそれっ!?」

「【リングベアの籠手】だとよ。そのまんまだな」


「嘘っ!? リングベアからそんなのドロップするの? 聞いたことがないわよ!」


 肘から手まで覆う熊腕に5本の鋭い爪が付いている。

 攻撃力が骨鶏トンファーの倍以上ある。数値にして+50だ。ついでに防御力も+8あるので総合計25になって称号【後先考えぬ者】の効果で30になった。


「俺はスキルと称号で、レアアイテムがドロップする確率が高いんだ」

「そんなの初めて聞きましたよ、兄さん。それは取る条件解ってるんですか?」


「称号はよく分からんが、スキルは難しいんじゃないか? 痛覚最大と残酷描写フルオープンがたぶん条件だ」


 この2つは1度キャラクターメイキングをしたら変更が不可能な部分だ。

 スキル1つのために作り直す奴は……、あんまり居ないだろう。たぶん。


 貴広に聞いた話だと、痛みが欲しいだけのために痛覚最大にする変態がいるらしい。そいつは痛み以外に何を求めてゲームをやってんだろうな。


 3人娘は条件を聞いただけでげんなりしている。

 まあ、あのゾンビを見れば卒倒する奴もいるだろう。ホラー映画は見られるが実際に目の当たりにするのは嫌だというようなものか。


 本来であればドロップ品は等分するのだが、格闘系のスキルを持っているのが俺しかいなかった。他に3人にもリングベアの毛皮と肉がそれぞれドロップしたこともあって、今回は俺が受け取ることになった。

 ただ、またレアドロップが出た場合は、物次第で3人に譲るという約束をした。まあそれはそのときになってみないと分からないけどな。


 ヘーロンはボス戦エリアからすぐ近くにあった。

 徒歩5分で森を抜けたらヘーロンの街壁が広がっている。幅だけみるならイビスの半分くらいか。


 アルヘナに聞いたところによると、ヘーロンには冒険者ギルドと宿屋と兵舎くらいしかないそうだ。

 つーかそれだけしかない訳はねーだろうよ。


 西門から入れば門番用の兵士詰め所が目に入る。

 その向こうには宿屋の他、外から来た者向けの商店が並んでいた。さらにその奥には民家があるのが分かる。


 入り口近くの商店でヘーロンの地図を買うと、ステータス画面のマップにヘーロンが追加される。

 開いてみれば西門近辺の主要な建物以外は真っ黒なマップが表示された。これはこれは、楽しめそうだな。


「兄さん。いまさらヘーロンの地図なんて買ってなにかありますか? この街はただの中継地点でしかないから何もありませんよ」

「何もないなんて、損してるなあ、お前は」


 俺の買い物を首を傾げて見ていた3人娘にヘーロンのマップを可視化させて見せてやる。


「真っ黒じゃない!」

「そうか? イビスじゃあこの真っ黒を歩き回ってアレキサンダーに出会えたんだ。なあ、アレキサンダー?」


 俺が問い掛けると、アレキサンダーは頷くように頭の上でぽよんぽよんと跳ねる。


 アニエラさんは頭の上とマップを交互に見てから(きびす)を返した。アルヘナやデネボラさんも慌ててそれに続く。

 商店にてヘーロンの地図を買い求めた3人は期待するような眼差しで俺のところに戻ってきた。


「それで何処から回ったら良いの?」

「まあ待て。急いては事を仕損じる、だ。時間は大丈夫か?」


 3人はステータス画面から時刻を確認して顔を強張らせた。

 うん、もう夕刻近いからな。翠はたしか夕食当番のはず。


 俺たちはまた後日にここで集まる(個々の都合が合えば)ことを約束してから宿を取り、ログアウトした。




 本日までのステータス


 名前:ナナシ

 種族:人間

 職業:ビギナーLv.11

 SP:13


 所有スキル:

 【格闘Lv.25】【投擲Lv.20】【蹴りLv.8】

 【急所攻撃Lv.15】【カウンターLv.15】

 【死霊術Lv.5】

 【観察Lv.15】【気配察知Lv.13】【忍び足Lv.5】

 【料理Lv.16】【調合Lv.1】【大工Lv.1】

 【植物知識】【鉱物知識】【アイテム知識】

 【毒耐性】【暗視】

 【解体】


 ユニークスキル:【城落としLv.3】


 称号:

 【後先考えぬ者】【スライムの友】【アラクネの友】

 【草を食む者】【闇を歩む者】

 【ネッツアーの加護】【マルクトの興味】


 ペット

 名前:アレキサンダー

 種族:レッドスライムLv.■


 名前:シラヒメ

 種族:アラクネ(幼体)Lv.9


 暑さでパソコンを起動させるのが怖い……。

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