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49 強襲イベントの話(貴広(ハイロー)視点)


 俺はあんまり気乗りしない顔の大気(ナナシ)の肩を叩く。

 こいつにはそれだけで伝わる筈だ。長い付き合いだからな。


 大気は今の世の中では過剰とも言える戦闘力を持ってる分、あんまり人前に出ようとはしねえ。使い方や運用を熟知している他、それを目撃してしまった人間がどういう対応を取るか知っているからだ。

 昔それでひと悶着あったしな。


 つか山野家が根本的なところからおかしーんだよあれは。

 あいつの妹の翠ちゃんだって隣にいても見えねえ時があるんだぜ。局地戦のエキスパートかっての!


「いいか大気。ここにいんのは大気(オマエ)じゃねえ、ナナシだ。そんで周りにいんのは馴染みじゃねえ、行きずり(赤の他人)だ。遠慮はいらねえ、ぶっぱなせ」


 耳元でささやいてやると大気はきょとんとした後、肩を震わせて笑いだした。


「なんだどーした?」

「中々心のこもった愛の告白(激 励)をどーもだ。恥ずかしくねえ?」


 ニヤニヤした顔にふつふつとした怒りが湧いてくる。

 こいつ、俺がやりたくもねー役回りを進んでやったのは誰のせいだと……。


「ばっ!? お前の事を気遣ってんだよ! 余計な意味にとらえんじゃねーよ!」

「はいはいツンデレどーも」


 分かっちゃいるが、振り回した俺の腕を何気なく叩き落とした大気は離れていった。

 軽く触れたような感じなくせに、腕全体に痺れが残る。

 どういう技能だよ、まったく……。


 何処へ行くのかと思えば、大気は兵士の1人に話し掛けて身振り手振りで何かを聞き出していた。

 後で聞いたら東の門番でよく会う兵士だとか。


 あいつプレイヤーの友達は少ない割に、NPCの知り合いは多いみたいだな。



「むう、ハイローさん酷いです」

「どわあああっ!?」


 いつの間にか横に居たアルヘナ()ちゃんにボソッと恨み言を呟かれ、超驚かされたっつーの!


「い、何時から居たんだよ!」

「ええと、ハイローさんが兄さんに愛の囁きをしたときですかねー」


「ほとんど最初からじゃねーか! 居るなら居るって言えよ!」

「いえ、なんか邪魔したら悪いかな~と思ったもので。ほら、兄さんの尻を蹴っ飛ばすのはハイローさんの役目じゃないですか」


 「ほら」とか付け加えるな。

 うちのクランの女性陣もアルヘナちゃんの周りで「ね! ワイルド系男性との絡みイイワ~」とか頬を染めるんじゃねーよ! そっちの会話できゃっきゃっうふふすんな!


 ああいうのに何言っても無駄だと分かってるから、こっちは適度に聞き流しておく。

 ゲームと言えど、女性陣の結託ほど面倒くせえものはないからな。



 ぎゃいぎゃいと(やかま)しいプレイヤーの集団だが、ここの街の兵士を束ねる隊長らしき者が高い所に現れると流石に黙る。

 一応空中に下向きの点滅矢印が表示されてるからな。

 いや、やりたいことは解らなくもないんだが、緊張感が崩れるんで運営はもうちょっと考えてくれ。



 他の兵士より少しだけ良さげな鎧を装備しているチョビヒゲのおっさんは「冒険者の諸君! よく集まってくれた! キミタチの力を、街を護るためにぜひとも貸して頂きたい!」と演説を始めた。


 アルヘナちゃんは肩をすくめると、アサギリに向き直る。


うち(エトワール)はちょうど解散した直後でしたので、残ってるのは私を含め3人くらいしかいません。ですので、あんまり期待しないで頂けると助かります」

「ああ、突発イベントだしな。そこは仕方ないとするよ」


 アサギリはNPCの向う側にいる大気に一瞬だけ視線を飛ばす。

 あ、なんか気付いてやがんなアイツ。


「エトワールが持ってるとかいう【城メテオ】スキルには期待しているがね」


 こっちを見てニヤリと笑うところを見ると、種は撒いといてやるからきっちり誤魔化せってことか。アサギリがナナシの信者でよかったぜ……。


「デネボラがその辺は引き受けるようなことを言ってましたけど、それも何時まで誤魔化せるなんてわかりませんよ」

「あいつもそーゆーことキッチリ主張できればいーんだがな」


 チョビヒゲ隊長が「遠距離攻撃手段を持っている者は壁の上で迎撃を頼む!」と叫ぶとプレイヤーの一部がぞろぞろ移動していく。


 そんな中で「ホレ、おめーもちっとやってこい」とボレロ(クランメンバーでドワーフの斧使い)に何かがゴロゴロ入った袋を渡された。


「なんだこりゃ?」

「リーダーがビギナーの兄ちゃんに聞いてきてな。石でも投げてスキルが得られればめっけもん、だとよ」

「すっかりビギナー教に染まってるようだな……」


 男2人でタメ息をこぼすと、アルヘナちゃんが「石コロならコストもかかりませんね!」と離れていった。石拾いに行ったんだなあれは。


 しゃーねえ、やるだけやってみるか。

 重い腰を上げて壁の方を見た瞬間、プレイヤーや兵士たちからどよめきがあがる。街壁の外側に唐突に出現した城砦が、気流をたなびかせて落下していくのが見えたからだ。


 あれが例の【城落とし】かよ。

 幅100m以上もある城砦が落下すれば、それ相応の数は減らせるだろう。ついでに落下した衝撃の影響だろうか、轟音と共に足元が波打つように揺れた。



 リクエストがありましたので他人視点をば。

 人が集まったりするシーンとかが一番苦手なので、隔日更新が途絶えたらそんなんで詰まってると思ってください。MMOだと避けて通れない道なのは分かっているんですけどね。

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