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45 ダンジョンの話


「ええと……」


 言葉に詰まったように口をパクパクしているレンブンを見ながら、ドロップ品を確認する。

 魔石の他に鉄の短剣が入ってた。

 にしても持ってたのが銅剣なのに、鉄の短剣を持ってる経緯が分からんな。


「何時もあんな風に?」

「何を疑問に思ってるのかは解らないが、俺の戦い方はああだね。他に比べれば変なんだろうが」


「違います! 凄いんです! 他のプレイヤーではああも直ぐに倒すことは出来ませんよ! いったいどうやって、いえ、なんのスキルを使っているんですか!」


 震えてたと思ったらレンブンは矢継ぎ早にまくし立てて来た。

 そんなに興奮するような戦い方だったろうか?


「もの凄い無駄のある戦闘方法だと思うんだけどなあ」

「普通のPTでしたら片方を盾持ちの人が抑えて、片方を残りの人たちで集中攻撃ですね。それでも今みたいに10数秒で沈むことは有り得ませんよ」


 あれー? 【急所攻撃】ってみんな持ってないのかね?

 殴るより剣か槍で刺せば早いだろうに。そんなことも含めてレンブンに話してみる。


「【急所攻撃】、ですか……。聞いたことはありますが、持ってるって人はナナシさんが初めてですね。これであることは確認されましたが、習得方法が見付かってないと聞いています。他のプレイヤーに無くてナナシさんにあるもの。何か分かりますか?」

「あー、たぶんあれだ。残酷描写フルオープンと痛覚50%解放だと思う」


 オロシに聞いた話だと残酷描写の方かもしれないがなあ。なんか「さん」付けが復活してるよ……。


 レンブンは掲示板を良く見る、良く書き込む人らしい。でも【急所攻撃】のことは書き込まないでいてくれるという。

 その代わり、残酷描写と痛覚解放で得られる限定スキルがあることを書き込むのを許して欲しいと言ってきた。許すけどね!

 たぶんどっちかの条件に【解体】もあるよな。



 疑問を解消したら探索を再開だ。

 幸運にも行き止りにぶち当たる事もなく、階段を探しだすことが出来た。


 道中コボルトだけではなくロッククロウラーというダンゴムシにも遭遇した。結構硬かったがレンブンの魔法と、格闘Lv.20で取得した痛打(威力は通常攻撃並みで相手の防御力を無視する武技スキルらしい)でなんとか倒すことが出来た。


 あと1階を抜ける頃にようやっとビギナーが10レベルに上がった。


「長かった……」

「今、プレイヤーの平均レベルって13くらいだと思いますよ」

「どんどん離されていくな」


 もう笑うしかない。レンブンは魔術士12レベルだそうだ。

 攻撃力を上げるために【筋力上昇】でもとるかなあ。


「ああそうだ。忘れないうちにこれを渡しておく」

「はい? ポーションですか……薬草茶? MP回復!?」


 何やら驚いているが、渡したらマズイ物だったんだろうか?

 渡したのはたらいから移した薬草茶瓶15本中の5本だ。ちなみに瓶に移したら、解説が「薬草汁の混合液が浄化された薬草茶。MPを微量に回復する効果がある」と変わっていた。


「こ、これはどちらで?」

「作った、かな。製作者は黙っていてくれると嬉しい」

「分かりました。口止め料も込み、ということですね」


 いやいや、掲示板に載せるんならという意味だよ? 賄賂って意味じゃないよ。


 コボルトのドロップ品の鉄の短剣が地味にかさ張っている。

 装備品なのでインベントリの枠内に1個しか保管出来ない上に、後から後からドロップするのだ。レアドロップだけどレアな装備品じゃないということか。


 レンブンに断って足を止め、袋が無かったのでたらいに移し替える。

 俺から11個、アレキサンダーが4個だ。持ち上げるとガラガラ(やかま)しいたらいをインベントリへ格納する。


「外へ出たら山分けしよう」

「え、は、はい」


 目が点になってるが大丈夫か?



 レンブン的にはバフデバフを掛けるだけでも良いらしい。神聖魔法ならそれで良いんだろうけど精霊魔法はどうなっているのかねえ。


 そして地下1階へ到着だ。

 確かに通路と言わず、呼吸する空気すらも臭いと言っていい。腐った肉多めの生ゴミと言ったところだろう。

 10mと進まないうちにさっそくゾンビのお出ましだ。


「なるほどこう見えるのか。凄惨な腐乱死体(ゾンビ)とは言ったものだ」


 ゲーセンとかにあるゾンビを射殺するゲームの描写などは生ぬるいと言える代物だった。

 姿形だけは人間ではあるが、皮膚はほぼ無い。筋肉繊維はまる見え、骨が露出しているわ、筋肉繊維や内臓は装飾品のように垂れ下がっているわ、眼球は濁っているのがあったり無かったり。極めつけは口や眼窩(がんか)の空洞から溢れる蛆虫である。


「ナナシさんからするとどう見えます?」

「夜道では会いたくないってとこか」


 言いつつ青柿を手加減無しで投擲。

 顔面に当たって首がもげ、背中に垂れ下がった。動きは止まらないな。【急所攻撃】で狙うべき赤いところも見えないので、素直にHPをゼロにするしかないようだな。


 レンブンが「こちらも行きます」と言って火球を射出し、ゾンビに命中して爆発する。煙が晴れた後には下半身だけがゆらゆらと立っていた。

 「まだ動くんかーい!」と呟いたところでアレキサンダーが青柿を投げた。腰から下だけになったゾンビの股間へ命中し、ようやく敵は倒れた。


 レンブンと一緒に溜め息を吐き、顔を見合わせて苦笑い。


「凄惨なぶん、殴るのに躊躇(ちゅうちょ)するなー」

「それほどですか……」


 殴るのはまあいいとしても、飛び散った諸々ので汚れるのが嫌だなあ。

 ドロップ品は魔石だけ。魔石を換金アイテムとしかみないプレイヤーはいいけど、魔道コンロの燃料源として使う俺には重要だ。コボルトのと込みでもう少しは確保しておきたい。



 これの編集作業中、夜中に部屋の蛍光灯が寿命を迎えました。

 狭い部屋の中をディスプレイの明かりだけで動き回るのはとても不自由です。

 懐中電灯を部屋に常備しようと思いました。


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