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39 たらいの神器の話

 時々出るひどいタイトル例です。


 寝ている最中に1度ログアウトをしてトイレや鍛練、水分補給を済ませてから再びログインする。

 パッと起き上がって納屋の外に出ると、ゲーム内では朝日が昇ろうとしていた。


 リアルと同じようにストレッチをしようとした俺は、気配も無しに視界に入った存在に慌ててその場を跳び退いた。


「やあ、君が獣の子を保護してくれた(わっぱ)かい?」

「……なに?」


 流暢に人の言葉を喋るそれは長い牙をもつ獅子だ。

 サーベルタイガーとライオンを足したような姿をしていた。


 今、俺が納屋から出た時に周囲には誰もいなかったよな?

 朝日に目を向けた瞬間にその場に現れたとしか思えない。


「おや、何か驚いているようだね。大地が続く限り僕は何処にでもいるんだ。そこに居なくてもそこに居ると、覚えておいてくれ」

「何なんだアンタ?」


 何かこのヒョウヒョウとした感じ何処かで……?


 俺が首を傾げていると、サーベルライオンが前足で地面を叩いて注意を自分に向けさせる。


「さて、僕からのクエストを終えた君には、ささやかな報酬を与えよう。何がいい?」


 どうやらうり坊のクエストを発動させたのは、目の前の存在であるらしい。

 とするとあの時教えた人たちには、クエストが俺と同じ状況で発動しない可能性があるな。

 それはちょっと悪いことをしてしまったかもしれない。


「普通そういうのはそっちがそれ相応の物を用意するんじゃないのか?」

「緊急だったものでね。それ相応の物を君に選んでもらおうと思ったのさ。さあ、選んでおくれ」


 選んでくれと言われても、目の前に贈答品の例も無い中何を選べというのか?


「何か無いのかい。スキルとかアイテムでもいいよ。好きなものを選んでおくれ」


 ささやかなと言いつつ、好きなものとは矛盾してるだろう。

 どこまでが可能なのか聞いてみるのも手か。


「じゃあバーン! と強くなったりとか?」

「それはささやかの範疇外(はんちゅうがい)だねえ」


「強力な武器防具?」

「それは僕の範疇外だねえ」


「死者すらも跳ね起きる薬……」

「それも僕の範疇外だねえ」


 なるほど。武器や薬系は貰えないものなのか。

 ではスキル、アイテム類であまり重要視されないものとなると……。


「では大工道具を」

「それはまたずいぶん予想外なものが来たなあ」


「無理か?」

「いいや。それがいいというなら与えよう。僕に出来ることだしね」


 サーベルライオンが満足そうに頷くと、俺の足元にキラキラとした光が形作り、木製の工具箱が出現した。足元をチラ見しただけの一瞬でサーベルライオンは姿を消していた。

 早っ!?


 何だったんだあのサーベルライオンは?


 アレキサンダーとかはアレに対してどーだったのかと振り向けば、2匹とも納屋の入り口から半身を出してこちらを覗き込んでいた。

 おや? 警戒するようなことをせず距離をとるとは、よっぽど手に負えないか怖い相手だったのか。


 ━━称号【マルクトの興味】を手に入れました。


「ってまた何か来た」


 さっきのサーベルライオンはマルクトというのか。

 ははは、名称がある称号って嫌な予感しかねえよ。


 称号の説明には「大地と獣の神マルクトに興味をもたれた証。地と獣に関する親和性10%UP」とあった……。


 うん、見なかったことにしよう。

 俺は誰にも会ってないし、誰とも言葉を交わしてない。


 自分で自分を納得させるようにうんうんと頷いていると、上からひらひらと紙が降って来た。反射的に掴んでみると「無かったことにされると悲しいなあ」という文字が書かれている。


 ええと大地の神となると、地面の上に立ってる限り見張られていると思っていいのか?


「ストーカー並みk……」


 最後まで言いきることは出来なかった。

 頭上からデカイたらいが落ちてきたからだ。痛覚50%の恩恵を1番実感した気がするぞこれ!

 もの凄く痛いぃぃぃぃぃっっ……。


 神罰と書かれた紙がひらひらと舞って消えた。

 たらいは残っていた。


 触れてみるとアイテムの詳細が分かる。

 「たらい:一般的なたらい。マルクトの神器なため、穴が開いたり凹んだりしたら土に埋めておけば元に戻る」とあった。


 一般的な神器のたらいって何だよ! 


 大工道具の方も「マルクトより下賜(かし)された大工道具。刃が欠けたり折れたりしても、土に埋めておけば元に戻る」と書いてある。



 何かどっと疲れた気がするぞ。


 七夕にたらい(苦笑

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