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37 うり坊大進撃②の話


 料理を終えて、さてどういった方針でいったものかと考える。


 暮らせる場所といっても、うり坊であるからにはまだまだ親が必要になるだろうしなあ。

 それだとただ平原に放すよりは、誰かに飼ってもらう方向で?


 道具屋のおばあさんに相談したいところだけれど、うり坊はたぶん街中に入れないだろう。

 もう1つの案としては、牧場とかに頼んだ方がいいんじゃないかと思う。猪牧場とか聞いたことがあるしな。問題はその牧場が何処にあるかだ。


 分からない時は素直に知ってそうな人に聞く。

 街の東門に近付けば、門番の兵士さんたちがぎょっとした顔で警戒体勢に入った。


「そこで待て!」


 俺が近付く前に歩みを止められてしまい、槍を持った兵士さんが2名此方へ近付いてくる。


「それはキミのペットか?」

「あ、違います。ちょっと預かっただけでして」


「残念だがそいつらを連れて街に入るのは認められないな。申し訳ないが諦めてもらう」


 片方は厳ついオジさん、片方は年若い青年の兵士さん。

 2人は済まなさそうにそう断りを入れてきた。頭ごなしに怒鳴られるよりはずっといい。いい人たちだねえ。


「大丈夫です。街の中に入るつもりはありませんから。ちょっと尋ねたいことがあっただけです」

「尋ねたいこと?」


「はい。異方人なもので地理には疎いものでして。お聞きしたいのは、牧場を営んでいる方などに心当たりはありませんか?」

「「牧場?」」


 揃って顔を見合わせたお2人は、合点がいったという顔になる。


「西の街道の先にガルスという村がある。あそこなら牧畜が盛んだ」

「確かにあそこであればその動物たちも引き取ってくれるかもしれませんね」


 なんと西の街道の先にそんな村があったのか。

 貴広にもそんな話聞いたことがないけど。もしかして、こうやって住民から情報を仕入れないと解放されないのかな?


「お話、ありがとうございます。行ってみます」


 お礼を言ってその場を離れる。

 去り際に兵士さんが「街中を通してはやれないが、北門と西門の兵士には話を通しておこう」と言ってくれた。


 門に近付く度に同じ誰何(すいか)受けてたら堪ったもんじゃないからな。ありがたいことです。


「しかし、壁沿いに移動していくとして北門かあ……」


 ダンジョンで人が多い中、平原の比じゃないとんでもねえ騒ぎが発生しそうだぞ。

 兵士さんに気を使われちゃったから北門前を通るしか選択肢ないけどさ。





 壁沿いに移動して北門の付近に辿り着くと、ざわざわがどよどよに変化した。

 門からダンジョンの入り口まで50mしかないもんな。プレイヤーだらけというべき人の山。


 俺たちが近付くと、モーセのようにプレイヤーの群衆が割れて1本の道が現れる。もう開き直って平然とした様子で通るしかないわ!


 門番さんには「連絡があった者だな。通ってよし!」と声を掛けられた。

 「連絡のあった者」でプレイヤーたちが騒ぐが、深い意味ないから! そのままの意味だから! お願いだから変な邪推すんな!


 「何あれ?」「ビギナーさんだろ」「あれ全部ペットなのかな?」「もふもふ」「触りたい」「さすがです開祖様!」「何か東の森で発生したクエストらしいぞ」「マジか。どうやって見つけたんだよ」「何やらかしてるんですか兄さん……」「旨そう」

 おい全部聞こえるぞお前ら。特に最後の奴!


 誰かがうり坊を触ろうとしたらしく、後ろからシラヒメが「ヂー!」と威嚇(いかく)する声が聞こえた。さっさと通り抜けよう。



 西門の門番さんにも「通ってよし!」と言われたが、ちょっと休憩してから行こう。

 疲れた心をうり坊のもふもふとアレキサンダーのふにふにで癒す。西の街道はどうやって抜けよう?


 うり坊たちを見ながら考えていると、シラヒメが1頭1頭の背中に蜘蛛糸の傘を取り付けていた。

 アレキサンダーがぽよよんと跳ねて、うり坊を統制するように進ませている。自分たちに任せろってことかな?


 じゃあ俺はサルから投げ付けられる青柿に最大限の注意を払おう。



 ……と、意気込んだものの、西の街道にも結構な数のプレイヤーがいた。


 中には20人近い人数で弓と魔法を使い、群れたサルの投げる青柿と激しい応戦を繰り広げる集団もいる。

 白いサルの手の影響かな、これは。


 ペット連れたプレイヤーも多く、改めてアラクネさんに出会った状況を説明するという、講演会みたいな場にもなってしまった。


 思っていたほど大した戦闘もなく西の街道を抜けることが出来た。

 うり坊が柿の被害に遭わないだけでも良かった良かった。


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