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33 やっぱり母が最強の話

 リアル回です。


 夕飯時の翠の視線はとても居心地が悪いものだったと言っておこう。

 チャットで会話を打ち切っちゃった事情を聞きたいんだろうな。

 あまりにも妙なプレッシャーを放出していたものだから、母親に兄妹喧嘩か何かなのかと心配されてしまった。


 という訳で翠の追及をかわすために、あいつが風呂に入った時間を見計らって外へ飛び出した。

 夜のジョギングなんて何時ものことだし、特に心配されるようなこともない。


 牙兄貴が念のため守護者(ガードドッグ)を連れていけというので、警備用に配置されている中から無難な外見の1匹に手招きをした。


 とっとことーと家の塀を乗り越えて俺の足元でお座りをしたのは守護者(ガードドッグ)のNo.02。見た目シェットランドシープドッグのコイコイ(命名母親)だ。俺たちはコイって呼んでるけど。


「ちょっと散歩のお供を頼むな、コイ」

「わふっ!」


 走り出した俺と並走するコイコイ。

 ここは積層型住宅ビルの中層だから、下に降りるには中央エレベーターを利用するしかない。でも外郭シールドの1部を数秒間だけ解除させ、下へ飛び降りるのが俺のやり方である。


 普段なら構造物の出っ張りを利用して下まで行くんだが、コイコイが居れば更に短縮が可能だ。コイツは重力制御で空中に浮けるからな。完全に停止は出来ないんで緩やかに落下していくけど。


 コイを足場にして積層型住宅ビルを降下し、着地と同時に走り出す。

 基本的に何処を通っても監視カメラの有る道ばかり。


 駅前まで遠回りな道順を組み立てた俺は、コイにコースを伝えるとハイペースなジョギングをスタートさせた。



 コイがコース上の不審な者なり車なりをチェックしてくれるため、何の不安もなしに進むことが出来る。


 徒歩なら10分の駅前まで大回りで30分。

 自販機で水を買おうとしたら帰宅途中だったプチ姉に捕まった。


「母さんから『息子と娘がケンカしてるの~!』とかメールが送られてくるんで何かと思ったわ」


 ということらしい。何故かプチ姉の背後にはバツの悪そうな顔の貴広もいた。


「何やってんだお前は?」

「いや~、ゲーセンから出たところでノフさんに取っ捕まった」


 こう、漠然(ばくぜん)とした人探しでプチ姉の右に出る者はおらんな。

 かくれんぼでプチ姉が鬼になると、隠れきった奴はおらんしなあ。


 その後は飲み屋に連れてかれてちょっとお説教をされた。


「翠ちゃんも聞き分けが無い訳じゃないんだから、逃げ回る前に会話する機会を設けなさいよ。責めるような視線を向けられたからって、相手は小さい頃から一緒なんだし。最初から話が通じないとか決めつけちゃ駄目よ。大気の知ってる翠ちゃんはアナタの話を聞かない子じゃないでしょ? 分かってるんだったら帰ったらごめんなさいして、キチンと話し合いしなさいね」

「はい」


「じゃ、私からのお説教は終わり。2人ともちょっとゆっくりしようね」

 満足そうに微笑んだプチ姉は頼んだあとに手を着けてなかったビールを傾けた。



「ワールドアナウンスのことか?」

「ああ、うん」


 俺が説教されてる最中にメニューを眺めていた貴広は注文パネルを叩きながら聞いてくる。プチ姉は「支払いは任せて! 好きなの頼みなさいねー」とビールの他に焼き鳥と揚げ出し豆腐とかを注文している。


 俺は飯食ったばっかなんだが、注文パネルからお新香と梅干しと烏龍茶を選択。


 プチ姉は牙兄貴が居なければ大人しいので、むやみやたらと絡んだりすることはない。

 俺と貴広の会話を肴に飲むくらいだろう。


「ダンジョンの入り口ってさあ」

「ああ」

「どうやって開けたんだよ。あんなでっかい入り口?」

「どうも何もクサビ打ち込んだら壁が丸ごと崩れただけだ」


 質問に正直に答えると首をひねって理解できないと呟いていた。

 ゲームだしいちいち発破を掛けるようなものでもないし、そんなもんだろうと納得すれば悩まなくていのになあ。


「貴広のクランって大きいのか?」

「それなりに名の通ったビギナーさんが入るんなら歓迎するぜ。インフィニティ・ハートって言えば通用する。本拠地はイビスだけどな」


 飲み屋の中の人混みを眺めていたが、聞き覚えのある名前に貴広の方を振り返る。


「インフィニティ・ハート? アサギリのとこか」

「お、大気はうちのクランマスター知ってんのか。なんで知り合ってんだ?」


 ぶっ!? アイツ、クランマスターだったの!?

 伝令係みたいなことやりやがって、クランの下っ端かと思ってたぞ!


「テイム関連で何回か会ったぞ」

「ああ、アサギリさん蛇持ってるしな。それでか」


 うーむ、そんな情報聞いちまうと今後の付き合いがギクシャクしないかな。

 ボリボリとお新香食っていると、貴広どころかプチ姉も横から強奪していく。いいけどね。


「大気はダンジョン行かないのか?」

「行かないだろ」


「は!? 行かないのか! 第1発見者だろ」

「まだまだ行かないといけない所とかあるんだから当然だろう。薬草も摘まないといけないし、サル毛皮も売らないとだし。蛇肉もまだ食ってないんだからな」


 なによりんな所連れてったらシラヒメが死んじゃうかもしれないしな。

 うんうんと自分だけ納得していたら、プチ姉が俺の肩をつんつんと突つき、小声で(ささや)いてきた。


「貴広くんショック受けてるみたいだけど?」

「へ?」


 貴広をよく見てみるとストローを差し込んだコーラをブクブクと吹いていた。なんとなくしょんぼりしているような気もする。

 ぶつぶつと「そっかー行かないのか、そうか~」とか呟いているようだ。


「おいタカ!」

「あ、え、な、何?」


「ダンジョン一緒に行きたいんならそっちから誘ってくれよな」

「あ、うん」


「だいたいお前、ゲームに誘った癖に俺のとこまで顔を出さないとかどういう了見だよ。翠なんか初日に来たというのに、ちょっと無精が過ぎやしねえか?」

「いや俺がそこまで責められる側じゃねえだろ」


「こっちは1人プラス2匹だからPT(パーティ)組むときにそこは考慮してくれよ」

「スルー!?」


 その後は俺が貴広の言い分をすっ飛ばしたとかで口論になり、プチ姉がケタケタ笑いながらそれを眺めているという妙な構図となった。

 それのせいで思っていたより帰宅が遅くなり、プチ姉と揃って玄関で激おこな母親に土下座したのは言うまでもない。


 なんか姉に言われて気付いたらVRゲームランキングの1位になっていた。

 ここ数日の伸びがすごいですが何があったのでしょう?

 ブックマークも2千人超えているし、PVも30万をこえているという。

 とにかく、お読み頂きありがとうございます。


◎用語解説

 積層型住宅ビル:

 1階層に庭付き一戸建てが5~8軒ほど円を描くように設置された高層ビル。反射や光ファイバーにより自然の光を充分に取り入れられる造りになっている。外側は透明な外殻シールドで覆われていて転落などを防ぎ、外からの強風を和らげる役割も持つ。


 守護者:

 犬や猫などの愛玩動物を模した動物型警備ロボットのこと。ガードドッグやガードキャット、ガードモジュールとも呼ばれる。警察に緊急通報出来る通信機や発信機、テイザー銃などの機能を内蔵している。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] は?主人公なんか悪いことした? 妹と会話がなさすぎて訳が分からん。 作者の脳内だけで完結しないでもらいたい。
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