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03 キャラメイクの話


 『あるVRMMOの話』略して『あるブイ』と、プレイヤー間では通っているとのことだ。それは既に昨日から本格稼働は始まっていたらしい。


 貴広と翠は昨日、学業(VRでの圧縮授業。1日3時間程で7時限分に相当する)が終わったら俺を捕まえようとしていたそうな。

 だが俺が家を飛び出したタイミングに間に合わなかったため、ゲームを優先させたという。

 ちなみに昨日俺が何をやっていたのかというと、毎日の習慣にしているトレーニングである。


「先に連絡を入れるなり、メールを送るなりすりゃーよかっただろうに」

「まさか兄さんが家を出てから戻ってくるまで夕方になるなんて思いませんよ。普通」


 自室で機器の接続まで見送るという翠がむくれながら文句をいう。


「最近、お前と顔会わすのは朝食と夕食でしかなかったからなあ」


 朝夕は作る人が家族内持ち回りのローテーション。

 昼食は個々で自炊するなり外食するなりしろ、というのが我が家の方針だ。


 翠と会わなかった理由も、あるブイのβテスターをやっていたなら頷ける。


「ちゃんと運動とかしてるのか?」

「合間合間にストレッチとかしてましたよ。母さんに渡されたメニューもありますし。まずは兄さんに見付からないのが目標です」


 ムンと力こぶを作るようなポーズをとった翠が目をキラキラさせる。

 こいつは何故か隠密向きらしい素質を見いだされて山野家(ウチ)に来た。しかし母親はこの情報科学時代に娘を何に育てたいんだろうか?


「ゲームん中で暗殺者でもやってんのかお前は」

「それに転職するためのクエストはまだ見付かってないですねー」


 本人が納得してんならいーんだがね。

 公然と暗殺者目指してるとか公言すんな。ゲーム内でも狙われたりするんだろうか、やだなあ。


「私と貴広さんの連絡コードは従来通り、何かあったら連絡して下さい。質問でも迷子でも。何も無くても連絡は下さい。兄さんとパーティープレイくらいはやりたいですから。私の友だちも紹介しますよ」

「まあ、気が向いたら、な」


「ぜっっったいです!」

「はいはい」


 俺の顔に人差し指を向けて念を押してくる翠にコクコクと頷いておく。


 こいつは連絡を(おこた)ると毎日まとわりついてくるからな。

 後々の面倒は避けておいたほうがいいに決まっている。 



 VR接続用のヘルメット(バイザー型やベッド型もあるが、俺は不意の襲撃にも対応できるようにヘルメット型を愛用している。主に加害者は義姉&母親だが)を被り機器を起動させる。

 ゲームの専用ソフトは、母親からのメールと同時にインストールがされていた。


 個人認証保護法?


 そんなものウチの母親に掛かればプロテクトがあっても紙も同然に決まってるじゃないか。

 ウチだと誰も気にしないって。ははは……。



「んじゃ後でな」

「はい。まずはキャラクターメイキングを頑張ってください」


「……いきなり挫けたくなってきたわな」

「ふふふ。人によってはそこに1日掛ける人もいますから、兄さんも自由に悩めばいいんですよ」

「おーぅ」


 翠に手を振ってからダイブインをスタートさせた。






 畳まれていた壁がパタパタと展開するように形成され、白い空間が出来上がる。

 病室みたいだな。天井にあるブイのタイトルが踊ってるし。


 その空間のど真ん中に表示されているのは、機器にダウンロードされた自分の現身(うつしみ)である。へそ出しではあるが上は半袖型の下はスパッツ型のインナーを着ているので素っ裸ではない。



 他で見られるような案内人とかは現れないらしい。


 種族選択は【人間】【エルフ】【ドワーフ】【獣人(猫・犬・熊・鳥)】の中から人間に決定した。

 瞳は灰色に変え、髪の色はカモフラージュも兼ねて深緑色へと変更する。身長がもう少し欲しいが168cmそのままでいく。


 一通り解説を読んだが、ドワーフはアニメなどにあるような低身長ではなく、がっしりと筋肉質な体つきになるらしい。あまり元の体型から離れ過ぎると、体動かすのが大変だしな。


 鳥獣人は腕が翼となっていて、飛ばない時は羽毛の生えた人の腕へと変わるとあった。ついでに自力で羽ばたいて飛ぶには訓練が必要で、グライダーのように風に乗って滑空するのが普通らしい。



 名前にタイキと本名そのまま入れてみたが、重複があるようで弾かれた。大気から連想されるものを幾つか考えてみたが、しっくり来ない。

 ナナシと入れたら通ったのでこれで決定とした。


 後で翠たちの反応が手に取るように分かるなあ。呆れたり文句言われたりしそうだが、キャラメイク中に相談は出来ないので仕方ない。



 ……で問題は初期スキルである。


 キャラメイク時にあるSP(スキルポイント)は5。

 1ポイント使って5つのスキルを取ったり、どれかを2Lvに上げて4つのスキルにするかは自由らしい。この場で取れる最大レベルは3までのようだ。


 スキルにはレベルが有るものと無いものがあり、ゲームが始まってしまえば1ポイントで取れるのは基礎武器スキルのみ数種類だけのようである。



 SPはレベルアップ時に増える以外は、レベル有りスキルを10にした時に貰えたり。クエストの報酬にあったりするとのこと。


 眼前に表示された200近いスキルを上から下まで眺めつつ、うんうん唸っていると一番下に変なものを見付けた。


 『※※※』となっている部分をちょんと突つくと、大量に表示されたスキルが全て消え、手のひらサイズのルーレットマシンが出現する。


「なんだこりゃ?」


 付随する解説を読むと、5SPを消費して強力なユニークスキルを1つ得られるものらしい。

 ここで延々と悩んでても時間が消費されるだけだし、思いきってこれでもいいか。


 剣術スキルなどはゲーム内で練習すれば修得できるようだしな。


 5SPと刻まれた銀色のコインを投入口に入れ、マシンの横にあるバーをガッシャンコと下げる。

 今気づいたがマシンの表示に『3/3』とあるな。俺も含めて3人はユニークスキルを所持していると言うことかね。


 数秒のち、チーン! と安っぽい音とともに表示されたのは【城落とし Lv1】というスキルだった。

 ユニークスキルというが、どういう方向に強いのかなあ。


「なんぞこれ……?」


 解説は無し。

 実際にゲーム内で使用するときに設定やらを決める必要があるという。なんだか分からんがこれはこれで面白そうだ。


 明確な数値化したステータスは無いようだ。

 これは各個人の肉体能力に左右されるらしい。それでも体の弱い人も居るから最低限の数値は設定されてるが、表示はされないとのこと。


 HP(ヒットポイント)MP(マジックポイント)はバー形式。これは実際にダメージを受けてみて程度を確認しなけりゃならんな。


 装備は初心者用の服とズボンと靴。それぞれ防御力1点。

 戦闘用スキルを持っていないので添え物のような初心者用ナイフを受け取る。攻撃力は3点。


 再度、規約やらを一通り読み込んでおく。過去に色々あったからなあ。

 この辺りはキチンと確認しておかないと、泣くのはこっちだ。


 痛覚設定は50%。18歳未満だとこれ以上は上げられん。

 最大でも60%までみたいだけど、それ以上は課金の分類だ。100%に上げる奴は確実に変態扱いされるだろう。ちょっとやってみたいが、社会人の稼ぎ並の金額が必要なので、諦める。


 逆に残虐描写はフルオープンにしておくのである。

 こっちは課金必要なしの個人の耐性がものをいう部分だ。

 設定した途端、スキルの修得可能リストに幾つか挙がってきたものがあった。SPを得たら取る予定にしておこう。


 課金の部分も見てみるが、ほとんどが制限解除要項だった。

 バイト代次第では購入できそうなものもある。これも後日考えよう。


 セカンドキャラクターも設定出来るが、こちらも学生には厳しい高額課金仕様である。元から作る気はないけどな。


 続くチュートリアルも受けたが、基礎スキルが何もないので動作確認だけに終わった。


 跳んだり走ったりしたところ、過去にやったゲームと違い違和感がほとんど無いと分かった。これだけでも充分な収穫である。

 これなら低レベル帯の敵でも無手で相手できそうだな。


 最終的に俺のステータスは以下の通り。


 名前:ナナシ

 種族:人間(■■)

 職業:ビギナー Lv.1

 SP:0

 所有スキル:ナシ

 ユニークスキル:【城落とし Lv1】



 って、種族のとこなんかおかしーんだけど!?


 いじってみたがレベルが足りずに自分でも確認できないらしい。

 ちょっと待て俺っていったい何になってんの!?


 なお、子供は日に2時間以上の体を動かす等の運動をするのが義務化されている世界であります。

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