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28 異種交流の話


 街道に沿って進むとハイロモンキーばかりがわらわらと湧いてくる。

 群れてないだけ有難いが、青柿がどんどん溜まっていくばかりだ。サルの毛皮以外は落とさないようだしな。


 たまに反応が遅れて肩や背中に当てられてしまうけど、ダメージはHPの表示バーが1ドット減るくらい。

 防御が充実してるっていいなあ。


「蜂はいまんとこ3匹だけか」


 ハチミツが出たのはそのうち1つだけ。

 アレキサンダーが1度だけ針を食らっていたが、ステータスに毒表記はなかった。打撃は無効のようだが、刺し攻撃も大丈夫なのかね?


 ハイロモンキーも1匹だけ白いサルが混じっていて、鉄の玉を投げ付けてきた。

 超危ないんだけど。


 嫌な予感がして避けたら、ドゴンと地面にめり込んでるんだもんな。

 ボスザルかなにかだったのか。


 そいつから「白いサルの手」というアイテムが出たんだけど、肘から先の腕そのまんまで、見た目がメチャクチャ気持ち悪い。帰ったら売ろうと思います。


 ステータスを見たら急所攻撃が上がっていた。

 SP1ゲットだが、サルの顔面は急所だったのだろうか? 謎だ。

 特殊効果はダメージの増加だけである。


 あとアレキサンダーが自身を腕のように変化させて、サルに青柿を投げ付けるという攻撃を始めていた。

 ステータスのスキル数変わってないから、使う分にはスキルいらないんだろう。たぶん。



 サルの相手に飽きてきたので、林の中に踏み込んでみた。

 薬草の他に倒木に自生しているキノコや山菜も摘める。


 どうも街道沿いならサルに襲われるが、森林内に踏み込むと姿が見えなくなるようだ。

 蜂は森林内の領分になっているのだろうか?



 一応全方位を警戒しながら進んでいくと蜂の巣を見付けてしまった。大きさとしては広げた傘くらいか。蜂の子が人の腕くらいありそうだな。こっちの蜂の子も食えるのかねえ。


 巣の周囲を4匹の蜂が飛んでいる。4vs2はちと厳しいな。

 アイツラの針は防具抜くし、青柿持ってるとトンファーは持てないからな。毒のことも考えなきゃならん。


 手を出すか迷っていたら、後ろにいきなり出現した気配に声を掛けられた。


「手ヲ貸ソウ」

「え?」


 振り向いたそこに居たのは白い巨体だった。思わず凍り付いたわ!


 小型のプレハブサイズの白い蜘蛛。

 頭の上に同じく白い女性の裸身が乗っていて、4つの眼が此方を見下ろしている。


 なにこのモンスター?

 人の言葉喋った?


「……」

「ナンダ。アラクネヲ見ルノハ初メテカ?」


 無言で首を上下に振る。

 アレキサンダーに視線を向けると「なに?」とでも言うように体を傾けていた。この反応だと、あちらに敵意はないようだな。ああびっくりした。


 疑問に思ったことを聞こうとしたところで、複数の羽音が此方に向かってくるのに気付いた。

 蜂に気付かれてしまったようだ。


「質問ハアヤツラヲ倒シテカラダ!」


 アラクネさんが指の先から射出した糸が1匹のラージビーを空中で捕獲する。

 腕を振って分銅(ふんどう)のように振り回し、あちこちの木々に叩き付けていた。蜂は蜘蛛の天敵というし、直接的に戦うのは苦手なのか。


 俺とアレキサンダーに向かって来るのは3匹のラージビー。

 1匹は青柿で迎撃する。トドメは後回しだ。


 林の中だから、アレキサンダーは木をよじ登ってから近くに寄って来たラージビーに飛び付いた。そのまま体内にぐにぐにと取り込んで消化する作戦のようだ。見た目が凄まじく異様だから見ないようにしよう。


 残りの1匹は形勢不利とみたのかUターンして逃げ出した。


「逃・が・す・かぁー!」


 姿勢を低くしながら疾走して勢いを確保。

 木々を蹴って3角跳びの要領で空中のラージビーに肉薄。腹部の柔らかい下の部分へとトンファーの先端部をぶっ刺した。


 ついでに脚を掴んで姿勢を崩したところへ、アラクネの糸が飛んできて羽根を絡め取る。

 空中で急制動を掛けられた状態になったため前方へ投げ出される形になったが、腹から腕が外れる瞬間に、内臓を掴んで引き抜いてやった。

 うわあグロ。ここまで再現度高くせんでも……。


 青柿くらって地面に落ちてもがいてた奴にトドメを刺せば、戦闘は終了である。

 巣は世話する蜂が居なくなるので自然に滅んでいくそうだ。



 ドロップ品は甲殻と針が4つ、ハチミツ瓶が2つ。何故かアラクネさんが倒した分まで俺のところに。

 諸々(もろもろ)の汚れを落としてから改めてアラクネさんと向き直る。


 下半身の蜘蛛の部分だけでもプレハブ並みの大きさである。

 上半身は女性の裸体だけどマネキンみたいな感じだ。エロく見えるけど直視出来ないほどじゃない。視線は外したくなるがな!


 これ実はR18禁指定とかで、成人してたら相応に見えるんかね?



「助かりました。ありがとうございます」


 ペコッと頭を下げたら意外そうな顔をされた。


「イイヤ、我モ巣ノ近クニアノヨウナモノガアルト困ルノデナ。利害ハ一致シテイル」


 軽く会釈するとアラクネさんは方向転換して森の奥へ。

 これでお別れかと思っていたら、振り返って「ツイテ来イ」と言う。どうやら巣まで招いてくれるらしい。


「いやいや、余所者を巣まで連れてって大丈夫なんですか?」

 危機感無さすぎだって! 危害を加えるような人間だったらどーすんだ。


「普通ニ武装シタ人間ダッタラ手モ貸サヌガ、オヌシハ魔物ヲ連レテオッタカラノ」

「は!? アレキサンダーを連れてたのが判断基準?」


 アレキサンダーは自分が役に立ったのが嬉しいのか、俺の頭上で斜めになってくるくる回っていた。ブレイクダンスで片手で回るように。……器用な。



 アラクネさんの巣は森の奥、周囲に糸が縦横無尽に張り巡らされた場所にあった。この辺りだけ真っ白だな。断りを得て糸に触れてみたが、ねばついた様子は無い。細めのワイヤーのような感触だ。


 街道沿いのマップを外れて、この辺りはシークレットエリアのようだな。

 アラクネさん専用テリトリーと言うことか。


 葉っぱを貼り合わせて作ったコップに、甘ったるい樹液をいれたものでもてなされた。

 飲んでみた感想としては水飴である。


 テーブルはぶっとい幹を輪切りにしたもので、椅子は切り株である。共闘しただけでもてなされる意味が分からんのだが。


「単刀直入デ悪イノダガ、魔物ヲ連レテイルオヌシニシカ頼メンコトダ」

「はあ?」


 何か頼みがあるから連れてきたのか。魔物から頼まれるって【スライムの友】の影響じゃないよな?


「我ガ子ヲ外ノ世界へ連レテ行ッテモラエヌカ?」

「はぁっ!?」


 言いながらアラクネさんがテーブルに置いたのは、ソフトボール大のピンポン玉だ。

 我が子って言ってたから卵かこれ?


 スライム(魔物)を連れてるから信用されるのは分かるが、もう1匹連れ歩けってことかな、これは……。

 また掲示板で騒がれるんだろうなあ、ハァ……。


「あのー、参考までになんで自分に?」

「最近人間ガ巣ノ近クニマデ踏ミ込ンデ来ルコトガ多クテナ。未ダ争イニハナッテハオラヌガ、時間ノ問題デアロウ。オヌシノヨウニ魔物ヲ連レテココマデ来ル者ハ初メテナノデナ。コノ機会ニ外ノコトヲ学バセルノモ良イト思ッタマデダ」


 理由は分かったが、こりゃペット連れてる奴ならば誰でも可能性があるイベントなのかもしれないな。

 後でアサギリに連絡とって掲示板に情報流して貰うか。


 とりあえず子を連れて行くことを了承すると卵がパカッと割れて、両手の平に乗るくらいの真っ白い蜘蛛が誕生した。

 と同時に、


 アラクネ(幼体)の名前を設定してください。

 と、


 ━━称号【アラクネの友】を手に入れました。

 という脳内アナウンスが……。


 はいはい。アラクネとの好感度が上昇するんですね。解ります。ぐふぅ……。


 アラクネ子さんは成体になったら女性の上半身が生えるそうなので女の子確定ですね。

 ぐおおおっ、女の子の名前を考えるのかあぁぁ……。


「で、では無難に「シラヒメ」と」


 思案に思案を重ねるとド壺にハマるので直感で決める。

 名前を打ち込むと両前脚を上げて「チー!」と鳴いたシラヒメさんである。


「よし。アレキサンダー仲良くするんだぞ」


 声を掛けるとこくーと頷いたアレキサンダーは俺の頭上へ。その上にシラヒメが乗った。それでいいんかい、お前ら。


「…………」


 アラクネさん、感慨深く頷かないで下さい。

 「ヨロシク頼ムゾ」とか言われたら「はい、最善を尽くします。お子様のことはお任せ下さい」としか言えないじゃないですか。ちくせう。


 シラヒメさんのステータスは次回に。

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― 新着の感想 ―
[一言] アラクネにシラヒメって、『蜘蛛子』さんじゃないですかwww あれ?でもこれ、馬場翁先生に断っといたほうが良くね?
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