253 骨祀りの話
主人公視点に戻ります。
まさか土地の魔力を1割借りただけで、スケルトン召喚の範囲がヘーロンの隅々まで及ぶとは思わなかった。
あちこちから悲鳴と怒号が聞こえてくるが、俺がスケルトンたちに下した命令は『チンピラ共を懲らしめろ』というものなので、一般人に被害は出ないはずだ。
まあ普通に暮らしていればスケルトンなんて目にしたこともない住人は、驚いて逃げ出すか、怯えて縮こまるかか?
慌てて逃げ出して怪我はするかもしれないが、死傷するほどではないだろう。
……たぶん。
借りた魔力の返済は俺の魔力から少しずつ返すか、いっぺんに返すかを選べるようだ。
その返済期間中はMP表示が、少しずつの場合は1割減が1ヶ月間ほどになるらしい。いっぺんにの場合は数日間ほぼゼロで過ごすことに。
選択するならばMP1割減かな。
MPが全くないと【城落とし】が使えなくなるというデメリットが発生するからだ。
俺の生命線だしな、このスキルは。
「どどどどどーすんだよこれええっ!?」
隣ではオールオールが頭を抱えて混乱していた。
通勤時の大混雑に匹敵するような密集状態のスケルトンを目にして、パニックになりかけている。
そのほとんどが蜜に群がる蟻のように、先程のチンピラ共のアジトに向かって移動していた。
しかし一度の召喚で実行命令が1つしかないのも考え物だな。
いざという時、プレイヤーとぶつかり合ったら力押し一辺倒しか行かなさそうだ。
どーしたものかねえ。
とりあえずチンピラ共がどうなったのか確認してみよう。
「おおおおい! 置いていくな!」
「別にオールオールは襲われないんだから、ビビることもないだろ?」
頭を抱えたオールオールを置いて、スケルトンの列の中を移動していると慌てて彼が追い駆けてきた。
オールオールは俺が設定した『チンピラ共』の定義に入らないから、特に問題がないと思うんだ。
「それでもこのスケルトンの中に1人立っててみろ! 気が狂うわ!」
「そんなもんかねえ?」
「お前のような逸脱した強者と他者を一緒にするなっ!」
師匠の龍樹姉ェの方がよっぽど逸脱してると思うんだが、ここに居ない人を引き合いに出すと話がややこしくなると思って、オールオールの非難は甘んじて受けておこう。
しかし、変な人と言われたことはあるが、逸脱した、というのはあんまり記憶にないな。
「うわ、何だあの骨の球体は? 集合体?」
「懲らしめてやれ、がどうやったらあんな球体になるんだよ……」
アジトに近付くにすれ、そこにそびえ立つ物を見上げる羽目になり、俺たちは呆れるしかない。
そこにあったのは直径が5メートルになる骨の球体だった。
今も周囲にいるスケルトンが外周に引っ付き少しずつ膨張している。
そしてよく見れば骨の集合体となった隙間から、チンピラ共が数人埋まっているのが見えた。
この中に満遍なく埋まっているんだろうなあ、あいつら。
どいつもこいつも「助けてくれええええっ!?」と、涙と鼻水を垂らしながらむせび泣いている。
「貴族のお坊ちゃんがいねーぞ」
「もしかしてだけど、あれじゃねーか?」
あれだけビビっていたオールオールが、骨の球体を一回りしてチンピラ共に命令していた子供を見付けられず首を捻っていた。
だが俺は球体の頂点の方からすすり泣く小さな声を捕らえ、そこを指差す。
チンピラ共は顔が辛うじて分かるくらいに埋まっているが、そのお坊ちゃんだけ埋まっているのは首から下だけのようだ。
か細い声で「たすけてぇ~」と、べそべそと泣きながら助けを求めている。
「どーすんだあれ?」
「放っておけ」
「放置するのか。いいのか?」
「そのうちプレイヤーが綺麗に掃除してくれるだろう」
スケルトンを召喚した直後に周辺マップを開いたら、ヘーロンの街中に味方を示す無数の青い点が出現していたのだ。
まるで大量の米をぶち撒けたような……。
前回の襲撃からそこそこのプレイヤーがヘーロンに残っていたらしく、改めて周辺マップを開くと冒険者ギルド周辺や中央広場のオークション会場周辺、大通りに展開するスケルトンたちがものすごい勢いで駆逐されてるようだ。
もちろんプレイヤーたちは赤で表示されている。
プレイヤーたちが敵味方識別表示に気付く前にとっととこの場から、ヘーロンから逃げなければならないな。
「アスミ!」
「ちー?」
「出来る限りの大水で、ここら辺のスケルトンを纏めて中央広場の方に押し流せ!」
「ちー!」
「ええええええっ!?」
指示を与えると、俺の首から肩に移動したアスミが鼻息荒くふんすと気合を入れた。
まず俺たち2人と1匹が水の二重膜に包まれる。
その瞬間、20階建てのビルの高さに匹敵するような大瀑布が壁に沿って出現し、スラムを含む一帯の家屋とスケルトンを纏めて呑み込み、北の中央広場の方に押し流して行った。
「おいおいおいおい! あれは関係ない住人も巻き込まれるんじゃないか!?」
「ちー!」
「んー、なんか大丈夫そうだぞ」
「なんで分かるんだよ!?」
オールオールが押し流す水量を見て慌てるが、ふんぞり返ったアスミを見て俺は大丈夫そうだと太鼓判を押す。
シラヒメの通訳がないからよく分らんが、なんかそういう感じがするんだよなー。
「それよりこっちはとっとと隠れよう」
「えっ!?」
「前回の襲撃の発端の下水道がすぐ近くだから、その中で暫くやり過ごすぞ」
「は!?」
俺はオールオールを担ぎ上げると、周囲を警戒しながら素早く下水道に潜り込んだ。
さすがにこの中にまではスケルトンは発生しておらず、安心して息を潜めることが出来る。
「ひええええっ!?」
「何だよ、やかましいぞオールオール。どーした?」
「なななな、なんかぐにゅッとしたものを踏んだ!?」(←【暗視】スキルなし)
「ああ、野生のスライムだから。大して害はない」(←【暗視】スキルあり)
「足の踏み場もない程ぐにゅぐにゅなんだが!」
「俺にスライムに好かれる称号があるんだよ。諦めろ」
「どーなってんだお前の称号は!?」
そんなの俺が聞きたいくらいだ。
これまでの主人公のステータス
名前:ナナシ
種族:稀人
職業:ビギナーLv.47
SP:1
所有スキル:
【拳豪Lv.26】【投擲Lv.47】
【蹴撃Lv.45】【片手棍Lv.18】
【致命攻撃】【反射】【闘気】
【体術】【見切り】【威圧】
【腕力強化】【知力強化】【脚力強化Ⅱ】
【魔力強化】【MP増加】【魔法強化】
【水属性強化】←new【防御力強化】←new
【死霊術Lv.40】【暗黒術Lv.7】【幻魔法Lv.12】
【水魔法Lv.12】【土魔法Lv.20】
【無属性魔法Lv.15】【空間魔法Lv.1】
【生活魔法】【大地魔術】
【看破Lv.43】【気配察知Lv.61】
【忍び足Lv.16】【軽業Lv.79】【隠れるLv.28】
【水泳】【潜水】【登攀】
【追跡】【鷹目】【牧畜】
【魔力視】【魔力感知】【魔力付与】
【魔力操作】【魔力制御】
【裁縫術】【厨師Lv.2】
【調合Lv.46】【大工Lv.32】
【詩吟】←new
【植物知識】【鉱物知識】【アイテム知識】
【スライム会話】
【劇毒耐性】【苦痛耐性】【睡眠耐性】
【環境耐性】【麻痺耐性】【忍耐】
【闇耐性】【魔耐性】【精神耐性】
【暗視】
【解体】
ユニークスキル:【城落としLv.10】【幸運Ⅱ】
称号:
【後先考えぬ者】【死を垣間見た者】
【草を食む者】【闇を統べる者】
【強奪者】【殲滅者】
【スライムの友】【アラクネの友】
【料理人☆】【半魚人】
【ネッツアーの加護】【マルクトの祝福】【イェソドの加護】
【ゲヴラーの祝福+】【ティーフェレースの加護】
【魔女見習い☆2】【魔王軍四天王】
【スフィンクスに認められし者】【魔王の話し相手】
【ミノタウロススレイヤー】【甲殻スレイヤー】
【プラントスレイヤー】【マリンスレイヤー】
ペット
名前:アレキサンダー
種族:エルダーレッドスライムLv.31
【物理攻撃無効】【炎無効】【炎魔法】【形態変化】
【インベントリ】【溶解】【罠発見】
名前:シラヒメ
種族:アラクネLv.31
【糸精製】【糸射出】【かみつき】
【空間機動】【裁縫師】【劇毒】
名前:グリース
種族:コカトリスLv.24
【腐蝕の視線】【腐蝕毒】【腐蝕無効】
【貫通攻撃】【格闘】
名前:ツイナ
種族:キマイラLv.31
【雷魔法】【風魔法】【火魔法】【水魔法】【土魔法】【死霊術】
【かみつき】【飛行】
名前:アスミ
種族:ケツァルコアトルLv.5
【飛行】【水魔法】【風魔法】
名前:ルレイ
種族:シルキーLv.5
【管理】【料理】【掃除】
使い魔
名前:ベウン
種族:クマのぬいぐるみ
【大工】【軽業】【料理】
名前:ボウ
種族:牛のぬいぐるみ
【登攀】【調合】【植物知識】
名前:ブラウ
種族:羊のぬいぐるみ
所有スキル:【植物知識】【料理】【牧畜】
名前:バター
種族:パンダのぬいぐるみ
所有スキル:【登攀】【隠れる】【忍び足】
お読み頂きありがとうございます。
期間があいたものでステータスの方、どこか間違っているかもしれません。




