231 採取の話
魔王のおじさんのオールナイトフィーバー講釈地獄に晒され、飯を食ってる暇がないので途中からデメリットが発生した。
飢餓状態によるHP減少である。
紅茶は出されてはいたんだけれど、部屋に備え付けの分が切れると、魔王のおじさんのオールナイトフィーバーに巻き込まれないように給仕が部屋にも入ってこない。
インベントリ内に食い物はあるけど、(一方的に)話をされている最中に、食事をするのは失礼だろう。
仕方なく【暗黒術】のレベルアップで覚えたダークヒールで、HPを回復させつつ耐えていたのが【忍耐】を取得した原因かねえ。
魔王のおじさんが我に返ったころには、俺のHPとMPがすっかりレッドゾーンに陥っていたのである。
危うく死ぬところだったぞ。
魔王の前で死に戻りとか、わりと王道なんだろうけど。
死因が講釈による餓死とか情けないにも程があるよなぁ。
解放された直後に飯を詰め込み、客間を借りて休ませてもらったので、徹夜による疲労困憊も解消できた。
ペットたちはアレキサンダーのインベントリに確保してあった食料で腹を満たし、玉座前の廊下で一塊になって眠りこけていたらしい。
出勤してきたメイドさんが、それを見て悲鳴を上げたとか何とか。
いったいどういう寝相だったのやら。
あと、やたらと魔王城の中に人が少なかった理由が判明した。
俺を勇者と勘違いしていた魔王のおじさんの指示によって、一時的に城に勤めている者たちを遠ざけていたようだ。
いや、前に来た勇者ってどれだけ傍若無人で破壊の限りを尽くしたんだよ。
このような誤解が発生しないように、勇者を見つけたら注意深く観察し、問題があると判断したら性根を叩き直す必要がありそうだな。
いい人ばかりの魔族に迷惑をかける奴は俺の敵だ。
【空間魔法】だが、取得すると同時に【城落とし】とリンクしたらしい。
なんと、落下させた城の限界時間を調整出来る機能が備わった。
それでも時間にして倍か半分になる程度だが、12時間も居座られるよりは、6時間の方がまだマシなのかもしれないな。
それと城のラインナップに魔王城が加わっていた……。
これ落としていいんかい!?
魔族の仕業に間違えられないように、なるべく落とさないようにしよう。
あと称号の【魔女見習い☆1】が☆2になっていた。
どうやら【空間魔法】のスキルを取得したことで格が上がったらしい。
それで【空間魔法Lv.1】で使えるのは結界とアイテムボックスと転移だった。
「いきなりそれか!?」と言われそうだが、それぞれが1回使用するごとにMP全消費である。
MP回復ポーションと茶がえらい減ったわな。
この辺り【城落とし】と変わらないじゃないか。
結界の大きさは直径1メートルのドーム状。小さい。
アイテムボックスは1度生成すれば開閉は俺の意思1つで済むが、1辺50センチメートル四方の小さい箱である。複数箇所に設置可能だが、傍に置けるのは1つだけのようだ。
転移で跳べる先も魔族の街しかない。2ヶ所以上を自在に行き来するためにはレベルを上げなければならないという。
ちなみにペットたちと一緒に使用すると『MPが足りません』という表示が出る。完全に個人用じゃねーか。
魔王のおじさんに聞いた(解説に半日程費やされた)ところ、【空間魔法】はとにかくMPを馬鹿食いするのだとか。
「死ぬかと思った……」
「まあ、親父の病を再発させた奴が通る宿命だ。諦めろ」
「そこは先に言っておいてくれよ」
シェルバサルバがゲラゲラ笑いながら俺の隣を歩く。
理不尽過ぎるだろう、魔王城の宿命って。
現在、シェルバサルバの案内で魔王城の裏手に広がる花壇と牧場へ向かっているところだ。
昨晩というか、もう一昨日のことだが面白がってんじゃねーよ。
こっちは切実に命の危機が掛かってたんだからな?
俺の後ろには頭にアレキサンダーを乗せたツイナと、蜘蛛の背にグリースとアスミを乗せたシラヒメが続く。
アスミが離れているのは幾ら新参者とはいえ、四六時中俺にくっついているのは不公平だとツイナがごねた結果である。
いや、ツイナやシラヒメに四六時中くっつかれたら俺は潰れるからな。
せめて、背に乗せるくらいにしておいてくれ。
昔のように小さければ何とかなったんだがなあ。
「これが花壇だな」
「……おいおい、なんだこりゃ?」
城の表門から出て壁に沿ってぐるりと回る。
半周過ぎた辺りからチラホラと見えていた物に嫌な予感を感じていたが、シェルバサルバがそれを指しているので間違いはないんだろう。
花壇とは名ばかりの、鬱蒼と繁った森から1部分を削り取ってきたといわんばかり。
魔の森の入り口と遜色ない光景がそこに広がっていた。
「森じゃねーか」
「前は花壇だったんだよ」
なんでも勇者の襲撃で庭師がやられてからは、魔王のおじさんが暫定的に管理をしていたんだと。
ただ趣味嗜好であちこちからかき集めた植物を無造作に植えていき、魔王業が忙しかったため放置が長かったらしい。
「俺も裏には来ねーからな。気が付いたらこう……」
「管理が杜撰すぎるっ!?」
明らかに魔王城を越える丈の木々があるんだけど。
なんでこれが正面から見えないんだよ!?
あ? 結界の作用で空間がひん曲がっている?
結界も重ねすぎると空間が歪むのかよ。魔王のおじさんのMPってどんだけあるんだろう?
「おトウサマ、アレ」
「水蔓じゃん。花壇にぶら下がるもんじゃないだろうに」
シラヒメが指差した先には枝から垂れ下がる水蔓が何本か。
上に登ったらシロノオタケとか生えてそうだよな。
この中に突っ込んで行かないと、目的の天頂草とかいう花は見つからないんだけどな。
とか思っていたら、トトトトトッとダッシュでグリースが花壇の中へ飛び込んで行き、暫くしてミニサイズのヒマワリを咥えて来た。
「ア、コレガソノクサデハ?」
「全然違う!」
「コケッ!?」
得意げに胸を反らしていたグリースが、一瞬で項垂れた。
あてずっぽうで持ってきても当たるわけねーよ。
その後で血眼になって(シェルバサルバを除く全員で)探しまくったが、見つかった天頂草は一つだけだった。
しかも木のうろに生えているとか気付かねえから!
◇ これまでの主人公のステータス ◇
名前:ナナシ
種族:稀人
職業:ビギナーLv.45
SP:16
所有スキル:
【拳豪Lv.23】【投擲Lv.47】
【蹴撃Lv.42】【片手棍Lv.18】
【致命攻撃】【反射】【闘気】
【体術】【見切り】【威圧】
【腕力強化】【知力強化】【脚力強化Ⅱ】
【魔力強化】【MP増加】【魔法強化】
【死霊術Lv.38】【暗黒術Lv.7】【幻魔法Lv.12】
【水魔法Lv.12】【土魔法Lv.20】
【無属性魔法Lv.12】【空間魔法Lv.1】←new
【生活魔法】【大地魔術】
【看破Lv.40】【気配察知Lv.61】
【忍び足Lv.16】【軽業Lv.76】【隠れるLv.28】
【水泳】【潜水】【登攀】
【魔力視】【魔力感知】【魔力付与】
【魔力操作】【魔力制御】
【裁縫術】【厨師Lv.2】
【調合Lv.46】【大工Lv.32】
【植物知識】【鉱物知識】【アイテム知識】
【スライム会話】
【毒耐性】【苦痛耐性】【睡眠耐性】
【環境耐性】【麻痺耐性】【忍耐】←new
【暗視】
【解体】
ユニークスキル:【城落としLv.10】【幸運Ⅱ】
称号:
【後先考えぬ者】【死を垣間見た者】
【草を食む者】【闇を歩む者】
【強奪者】【殲滅者】
【スライムの友】【アラクネの友】
【料理人】【半魚人】
【ネッツアーの加護】【マルクトの祝福】【イェソドの加護】
【ゲヴラーの祝福+】【ティーフェレースの加護】
【魔女見習い☆2】【スフィンクスに認められし者】
【魔王の話し相手】←new
【ミノタウロススレイヤー】【甲殻スレイヤー】
【プラントスレイヤー】
ペット
名前:アレキサンダー
種族:エルダーレッドスライムLv.30
【物理攻撃無効】【炎無効】【炎魔法】【形態変化】
【インベントリ】【溶解】【罠発見】
名前:シラヒメ
種族:アラクネLv.30
【糸精製】【糸射出】【かみつき】
【空間機動】【裁縫師】【劇毒】
名前:グリース
種族:コカトリスLv.23
【腐蝕の視線】【腐蝕毒】【腐蝕無効】
【貫通攻撃】【格闘】
名前:ツイナ
種族:キマイラLv.30
【雷魔法】【風魔法】【火魔法】【水魔法】【土魔法】【死霊術】
【かみつき】【飛行】
名前:アスミ
種族:ケツァルコアトルLv.4
【飛行】【水魔法】【風魔法】
使い魔
名前:ベウン
種族:クマのぬいぐるみ
【大工】【軽業】【料理】
名前:ボウ
種族:牛のぬいぐるみ
【登攀】【調合】【植物知識】
誤字報告してくださる皆さま、いつもありがとうございます。
ステータス入れました。
掲示板を入れる関係上、中途半端で切りましたが、次の次はリアルサイドじゃなくて今回の続きです。
4/17 本文に少し足して、ステータスの一部変更。




