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224 北の森の話(5

 夜に焚き火をしながら魔導コンロで料理を作っていると、シェルバサルバが別荘から出てきた。

 扉をバーン! と開けて「チッ、あの糞親父め」とか悪態を吐きながら。

 いったいどっから帰ってきたんだよ?


「お、なんだそれ?」

「料理だけど。一応お前さんの分も用意したぜ、食うだろ?」

「おお! いいのか?」

「場所を借りてるしな。マジでここ快適だから」


 さっき境界線らしきところを、こっちを恨めしそうに見ながら6本足の虎が通り過ぎて行ったからなあ。

 視認は出来るけど、足を踏み入れることは無理なのか?

 いったいどういう仕組みなのかねえ。


 ちなみに作っているのは醤油に漬け込んで、胡椒をふっておいたオーク肉の唐揚げである。

 みりんがあればなあ。照り焼きみたいに出来るんだけど。

 最悪は作るという手もあるんだが、種麹やら米焼酎やらが必要なんだよなー。

 工程が多すぎて手に負えん。時間はあるんだが……。

 まあ、後々考えるとして、もう1品の焼おにぎりも作ろう。


 大皿4つ分の唐揚げに、大皿2つ分の焼おにぎりを家の床に並べて夕食にする。


「じゃあ食うか。いただきます、と」

「おお? 何の挨拶だ?」

「まあ、恵みに感謝しますとか命を頂きますとか、そんな感じの食事の挨拶だよ」


 オークと巨大狐に感謝することになるんだけど、その辺りはこの際気にしない。


 ペットたちも「ぐるぐる」「メエメエ」「ケココ」「イたダキマス」「ちー!」と鳴いたりしながら各々食べ始める。

【生活魔法】で生成した水をコップや皿に入れて配ろう。 

 あとベウンに足りなくなるのも含めて、唐揚げを延々と作ってもらっている。

 余ったらインベントリに入れればいいだけだしな。

 ボウも手伝っているから大丈夫だろう。

 シェルバサルバはぬいぐるみのクマと牛が延々と唐揚げを作っているのを見て、水を噴いていた。

 使い魔が動いているのを見るのは初めてらしい。


「男で魔女なんてやってる奴なんざ初めて見たぜ。ナナシは前衛って聞いていたからな」

「厳しい師匠に気に入られれば、勝手に魔女修行を受けさせられるんだぜ」

「……なんつーか、人族も色々大変なんだな」


 話しといてなんだが、しみじみと納得しないでくれ。

 悲しくなるから。 

 あと魔族にも魔女って言って通じるんだなあ。こればかりは世界共通のようだ。


「明日は森に突っ込んでまた狩りをしてみて、大丈夫そうなら北へ向かう予定だ」

「そうか」

「それにしても北に行ったら何があるんだ? シェルバサルバの知ってる場所なのか?」

「それは行ってのお楽しみだ。悪いようにはならねえと思うぜ、……たぶん」

「その『たぶん』がこえーんだけど、希望的観測に推定を付けるの止めてくんねえ」

「こればっかりは俺もどーなるか分からねえからな。後はお前の運が頼りだ」

「怖い怖い、その笑顔がメチャクチャ怖いから! そんで運頼みかよ! 俺、運は悪い方なんだけどなあ」

「大丈夫だ。ここで俺と会えたんだから、ナナシの運は悪くないと思うぜ」

「ああ、うん。……参考にさせてもらうよ……」


 それにしても魔王復活の時間バーがミリ単位も動かないんだけど。

 俺が北に行ったら動き出すのかね?

 楽しい団欒のあと、シェルバサルバ は大あくびをして別荘に帰って行った。

 俺も家の中で寝そべったツイナを枕に寝ることにする。目を瞑って体感時間6秒で朝が来るけどな。


 朝食を作りすぎた唐揚げと野菜スープで済ます。

 シェルバサルバは来なかった。また朝から何処かへ出かけたんだろう。

 さあ行くか。というところで昨日見かけた6本足の虎が襲ってきた。

 きっとこの付近で俺たちが出てくるのを待っていたと思われる。執念深いな!

 名称はアースタイガー。体だけならツイナより一回りデカイ。

 大口を開けて襲いかかってくるが、空中に魔力固定で置いてみた棒を口にくわえることとなり、一瞬戸惑っていた。

 その隙をついて、立ち上がって無防備になった胸のど真ん中へ、身体強化込みで破撃乗せの全力パンチを叩き込んだ。

 胸骨を砕き、内臓を突き破って背骨まで到達する。

 アースタイガーは口と鼻と目から血を噴き出して絶命した。


「おー」

 

 今のは手応えありまくりだったな。

 会心の一撃だったという自覚がある。


「がう」「メ~」

「コケッ」


 ツイナとグリースが体をすり付けてくる。シラヒメが言うには、活躍したかったらしい。

 ドロップ品は床に広げられる頭部付きの毛皮だ。観賞用か?


「これはいいな。これはいい」

 ぽよんぽよん。


 腕を振り回していたら、活躍させろとアレキサンダーが俺の目線までジャンプしてくる。

 全員が目をギラギラさせて、やる気に満ちあふれていた。

 アスミも「ちー」と首元で鳴いて自己主張している。

「次な、次」となだめながら森の中を進んでいると、早速前方から突っ込んでくる黒い巨体が。

 ツイナとアレキサンダーに火吹きを頼むが、ヘビィボアは火柱2本をものともせず突進の勢いは止まらない。

 俺に近付いたところで、用意していた見えないトゲに左目と鼻を貫かれて悲鳴をあげた。

 ヘビィボアの勢いはそのまま威力になるからな。

 とはいえ4本用意していて2本しか当たらないとは、間隔をもう少し(せば)める必要があったなあ。

 傷口にグリースが毒を吹き掛ければ、顔の半分がぐすぐずと崩れていく。

 最後はシラヒメの糸が首を切断して終わった。


「なんか攻撃が凶悪になってねえ?」

「ガンバッテ、ミナデかンガエマシタ」

「マジかい……」

「コケッ!」

「がう!」「メエ!」

 ぽよんぽよん。


 参加してなかったアスミだけが「ちー」と残念そうだ。

 考えただけで攻撃の精度があがるとか、このゲームのAIはどーなってるんじゃい。


 ドロップ品はまた盾と肉か。盾はかさばるからいらないんだけどなあ。

 今の2匹の成果を見るに問題がなさそうなので、このまま北に向かって進もう。

 この先に待つのはシェルバサルバのいうことから察するに、山脈だけじゃあなさそうだが何があるんだかねえ。



 誤字報告してくださる方々、いつもありがとうございます。


 とうとうガラフォで色々機能が適応できなくなった。

 スマホはどうも苦手です。時代に置いて行かれている自覚はあるけど。

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― 新着の感想 ―
[一言] スマホは便利ですよー いざ使ってみると手放せないです 何とも凶悪な きっとこいつらも普通の冒険者がここに来たら、死に戻り続出なんだろうなあ ……しかし、シェルバサル、魔王の関係者なんだろう…
[一言] 初めての物はいつでも使いにくい物です。私もガラケーからスマホに切り替えて慣れるまで半年以上かかり、更に何年も使っているにも関わらず未だに使いこなせているとは言い切れません。でもまぁ最低限以前…
[一言] 素手パンチで、胸骨砕いて体貫通して背骨まで砕くのか。 とんでもないな。
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