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21 城落としの話


 スキル選択……ウィンドウ展開。


 城パターン選択?

 めんどくさい、1番上でいい!


 効果範囲……780平方m~23万平方mぅ!?

 もっと縮小出来ねえのか?


 効果範囲選択……面制圧から一点集中攻撃型へ変更!

 それでも攻撃範囲10m!?


 発動しますか? Y/N と設定終了させたウィンドウを待機させながら、押され始めている戦況を見る。


「アルヘナ! ユニークスキルを使う! そいつと距離を取れ!」

「「「「ユニークスキルッ!?」」」」


 あ、他の皆が反応した。


「このまま続けてもジリ貧よ! 私が弾き飛ばすから誰か隙を作って!」

「アレキサンダー!」


 俺の意図を汲んでくれたのかアレキサンダーがスケルトンの足元から真上に跳ね上がり、顎をカチ上げる。

 がら空きになった胴へアニエラさんが「シールドバッシュ!」を叩き込み、スケルトンを2m程後退させた。


 そこへデネボラさんが「ファイアーボール」を撃ち込み、さらに後ろへ弾き飛ばした。


「いったれっ!」

 この隙を逃さず、城落としを発動させる!


 たたらを踏んだスケルトンの周囲を円型のグリッドが囲み、辺り一面が瞬時に暗くなる。


「「「「「え?」」」」」


 俺たち全員が上を見上げ、そこにあるものを見て表情を青ざめさせた。

 そこには天守閣を下に向けて落下する真っ白なお城があった。高さにして建物9階分だろうか。視覚的にも圧迫感と恐怖感で心臓が竦み上がる。


「「「「きゃあああああああっ!?」」」」


 エトワールの4名は悲鳴をあげて逃げ出すが、俺の方は城落としを発動させてから身動きがとれない。

 MP(マジックポイント)のバーが瞬時にゼロになり、落下してきた城が天守閣の屋根の角でもってスケルトンを押し潰す。傾いた状態で直立したままだ。


 地面が小刻みに揺れ、爆風が吹き荒れる。

 周辺にあった廃材が舞い上がり、倒壊しかけの家屋は根こそぎ吹き飛ぶ。

 落下地点からは土砂が噴出して、砂と土がない交ぜになった灰色の煙がたちまち視界を覆い隠した。


 1分か2分が過ぎた頃にようやく煙が晴れ、視界がクリアになった頃に城は消えていた。



 落下地点には大きな穴が開き、底に埋もれているスケルトンがビクビクと微かに動いていた。


「まだ動いてやがる」


 ようやく動けるようになったので穴を覗き込んだ。

 呟いた俺の隣に並んだデネボラさんが「ファイアーアロー」を撃ち込んで、スケルトンは動きを止めた。消えていったりはしないようだ。


「危ないじゃないですか兄さん! 何ですかアレは!」


 俺の後頭部をポコンと叩きながらアルヘナが文句を飛ばしてくる。


「だから発動する前に言ったろう、ユニークスキルだって。俺だって初めて使ったんだぞ。あんなもんが降ってくるなんて分かるか!」


「まあまあ、兄妹喧嘩してる場合じゃないわよ!」

「そうですわ。アレキサンダーさんがいらっしゃいませんのに」


「え?」


 見回してみるとあの赤い姿が見当たらない。

 大声で呼び掛けてみると、大穴の向こう側でぽよんぽよんと跳ねている姿を見付けた。なんか「ココー、ココー」と呼んでいるようなので、近寄ってみる。 


「どうしたアレキサンダー。何か見付けたのか?」


 家屋の土台跡が残るそこには地下室へ続く扉らしきものがあった。

 罠無し鍵無しをアルヘナが確認し、扉を開けると本棚に囲まれた小部屋になっている。


「あのスケルトンの生前の部屋なのかしらね?」

「遺品で何か得られるものがあるかもしれませんわ」


 アニエラさんとエニフさんが中を覗き込みながらそう呟く。


「きっと宝の山」


 アルヘナに続き、デネボラさんが目をランランと輝かせながら中へ降りていった。



 数分後、中から彼女らが掘り出したものは今現在のプレイヤーの境遇からすると、かなりな上位アイテムの数々だった。


 まずMPポーションが10本。

 これは現在誰にも制作出来ておらず、プレイヤーが手にするにはまだ先になるとのこと。


 次に魔法を込めておけるスクロールで、何も込められてないのが2本。

 ファイアーボールの魔法が込められたスクロールが2本。ブリザードの込められたスクロールが1本。


 魔術士か神官が使えるスタッフが1本。デネボラさんが今持っている杖よりも魔法攻撃力が上がるものだそうだ。

 MP10点分の代替品の魔石が2個。あとはお金が6万G。


 そして死霊術のスキルが覚えられるスクロールが1本である。


「なんでしょうかね、これは?」

「惹かれるものがある。でも使ったら詰む気がする」


 デネボラさんが言うにはプレイヤーが使うにはNPCに忌避される可能性があり、市場に流すのもヤバい品だそうな。


「使ったらマズイのか?」

 俺のひと言で押し黙るエトワールの方々。


「誰も使わないなら俺はこれでもいいかな」

「「「「ええっっ!?」」」」


 俺が魔法系のスキルを覚えるには最低でもSP12が必要だ。例え人から忌み嫌われる魔法でも、この機会を逃すと次のチャンスが何時になるかは分からない。

 

 アルヘナが不満そうだったが、他の物はいらないと主張したら多数決で俺の物となった。

 残りはクラン・エトワールで分けるそうだ。あとはアレキサンダーの分も込みで2万Gも貰えた。



「いいですかナナシさん。他のプレイヤーの目がある所と街中では使ってはいけませんよ。街中で住民の方に見つかった場合は、最悪衛兵の方々に捕まってしまいます」

「おーけー、おーけー、了解した。気をつける」

「兄さん詰めが甘いんですから、本当っに気を付けてくださいね!」


 何故か正座してエニフさんの注意事項を聞くと言う変なプレイを強いられて、アルヘナに後ろから頭をポコポコ叩かれる。


「ああ、言い忘れてたんだが」


 みんなはお宝に目が眩んで気付かなかったようだが、俺はアレキサンダーが警戒心を持ったことで気が付いた。


「どうしたんですか?」

「団体さんがお待ちしてるんだがどうする?」


 顎でしゃくった先には、元路地だった所に大挙して待ち構える衛兵さんの姿があった。


 作中で表示した城のサイズですが、ネットで調べたものの正確なサイズ表記してあるものがなかったため、かなり適当な数値になっております。ご了承くださいまし。

6/27:効果範囲の部分を修正

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