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204 騒がしい一行の話

サブタイトルを『騒がしいダンジョンの話』から修正しました。

「こっちは私のフレンドの……」

「マーチです!」

「ファブルと申します」


 リリプルが戦士でマーチと名乗った女性が神官、ファブルと名乗った女性が盗賊だろう。

 3人共20代くらいかな。装備品は俺が初心者だった頃に街中でよく見た店売り初期装備だ。だとするとリリプルさんたちは第3陣ということか。

 俺に挨拶をすると2人はこはるさん、リリプルを引っ張ってちょっと離れる。 


「ね! ね! あの人ビギナーさんでしょう! なんで知り合ったの? 何処で知り合ったの?」

「この前困っていたところを助けてくれた方、というのが彼だったのですね。あんな有名人とお知り合いだなんて、リリプルさんはズルいです」

「あ、え、あ、え? ええと、まあ、そのう、あはは……」


 聞こえてる聞こえてる。しっかり聞こえてるからな。

 今度はリリプルをその場に残し、2人だけで俺の前に。


「リリプルちゃんがお世話になりました。どこか抜けてる子なんです。ごめんなさい」

「リリプルさんが何かとてつもなく失礼なことをしでかしたりしませんでしたか?」

「あんたたち! 私のことを何だと思ってるの!?」


 仲がいい人たちだというのは分かった。

 だが気掛かりの部分だけは一応聞いておこう。


「リリプルさん。あれから幽体離脱するような兆候とか、意識が体から離れるような感覚とかはありませんか?」

「何それ!? そんな後遺症があるっていうの!」

「なければいいんですが。そんな兆しがあったら連絡を下さい。こっちで対応すると、叔父が言っていました」


 1度意識離脱してしまうと離れ癖がつくとかなんとか、邦黎叔父さんが言ってたからなあ。その辺のサポートは万全にしておくそうだ。

 その時に手に持っていたヘルメットがなんだかコールタールみたいなオーラを放っていて禍々しかった。あれで何をする気だったのやら。

 今の彼女の反応を見るにその兆候はないみたいだけど。


 マーチさんがそーっとツイナに近寄って行ったが、牙を剥き出して威嚇されたんで慌てて離れていた。まだ機嫌が悪いから仕方がないね。もとより他の人に触られようとしないからな。


「今は機嫌が悪いから触ろうとすると、かじられるぞ」

「ご、ごめんなさい」

「代わりにこいつらなら存分にもふもふすることを許す」


 ベウンとボウをマーチさんたちの前に並べると、2人が瞬時に抱きついた。

 手前に2体を引っ張り出したことで、グリースとシラヒメが絶望的な表情でショックを受けていたけれど、コミュニケーションのためだ。許せ。


「わー! ぬいぐるみだー!」

「何故動けるのでしょう? でも愛らしさには敵いません」


 隙あらば救出しようと、シラヒメとグリースがじりじりと接近している。

 2人は気付いていない。果たして相手になるのか?


「ナナシさんは……」

「敬語はいらねーよ。この前みたいな態度で構わない」

「え、いいの?」

「良いも悪いもないだろ。先にフレンド登録してくれ」

「え、う、あ、うん。ありがとう」


 リリプルとフレンド登録していると「ずるーい!」と言い出したマーチさんがグリースにボウを奪取されていた。

 その流れでシラヒメもベウンを奪い取る。目にも止まらぬ早業だ。お前らぬいぐるみ好きすぎだろう。更に弟妹を増やしてやるべきなのかなあ。

 シラヒメとグリースの勝ち誇った笑みに悔しがるプレイヤー2人。普通、逆じゃないかね。

 しかし2人の興味はこちら側に向いていた。「「私も私も」」と主張するマーチさんと、ファブルさんともフレンド登録を交わす。

 しかし俺のフレンドの大半は攻略組3大クランばっかだからな。ゲンドウもクリエイトクラン(名前聞いてない)だし。

 個人の登録だとオロシとオールオールとレンブン以外じゃ久しぶりじゃなかろうか。


「あのぬいぐるみってどうやって作るんですか? 作り方って教えて貰えるものなの?」

「マーチさんは怖いもの知らずなのでごめんなさい。前から言っていましたが、掲示板も見なさいと言っているでしょう。取得スキルと称号一覧の掲示板を見れば分かりますよ」

「別にそれくらいで怒ったりしないわい。でも情報を教えるには対価200万かかるぞ」

「「にひゃくまんんんんっ!?」」


 声を揃えて噴き出したのはリリプルとマーチさんだ。

 掲示板を一切見ない俺が言うのも何だけど、知らなかったんかい。

 驚くのも分からないではないけれど。これ、3大クラン協議の末の決定なんだよね。

 俯いて「今の所持金じゃ全く足りない……」と呟いている。つか戦士で【見習い魔女】になるのは方向性が全く違うんじゃねーの? 神官は分からんけど。


「じゃ、じゃあ! そのペットってどうやって集めるの?」

「色々やってみたらこうなったんだが……」

 ぽよよん。


 アレキサンダーが前に出て、目を三角にしながらご立腹である。

 話すにしても対価が発生するのもあるからなあ。聞かれて「はいそうです」と返すのも難しい。

 苦笑いで誤魔化すをしているとファブルさんがマーチさんの頭を引っ叩き、離れたところへ連れていってお説教をし出した。

 リリプルが申し訳なさそうな顔をして頭を下げる。


「好奇心旺盛な上に、物怖じしない友人でごめんなさい」

「リリプルは悪くないじゃん。まあ、ブレーキをかける人がいる分にはいいんじゃねえ。ああいう場合だと、いきなりPVPに発展するような気の短い人もいるだろうから、気を付けた方がいい」

「うん。気を付ける」


 目の前でそういう暴挙があった場合、俺が割り込むけどな。理不尽な相手はメタメタのボコボコのグシャグシャのベショベショにしてやる所存である。

 しかしここで出会えたのも何かの縁だ。ちょっと思いついて誘ってみることにした。


「これからイビスダンジョン行くんだけど、一緒に行かないかな?」

「え?」

「ほら、前に聞いた話だとイビスダンジョン行くときに意識はく奪されたとか言ってたろ。だったらイビスダンジョンに行けるくらいのレベルなんだよな?」

「行けるには行けるけど。まだ地下2階までしか行ったことないのよね」

「地下2階って……。ああ、グリーンスライムか。あれは楽だろう」

「楽なの!? あんなうねうねどろどろなんて進み切れないよ!」


 そのうねうねどろどろが率先してカエルを献上してくれるから、俺たちは先に進める。称号がないプレイヤーがあそこを抜けるのは力業しかないだろうなあ。

 ちなみに嵐絶は広範囲火炎魔法で焼き払うのだそうな。なんて酷い。

 リリプルが半泣きでグリーンスライムとポイズンフロッグの怖さを説明していると、お説教から解放されたマーチさんが「何々、何の話?」と乱入してきた。

 すぐさまファブルさんに「失礼ですよ」と殴られていたけれど、俺が一緒にダンジョンへと誘いをかけたと聞くと目を輝かせて了承した。


「行く! 行きまーす! 私をダンジョンに連れてって!」

「差し支えなければ私も一度、ご同行を頼みたいです。あそこだけはどーしても進めなくて……」

「……と、友人たちは乗り気らしいのでお願いしますナナシ……くん」

「「お願いします(致します)」」

「連れていくのはいいが、俺たちはそのまま下まで行くから。地下2階以降は自己責任だぞ。自分のことは自分で守ってくれ」

「「「ひえええええ……」」」


 抱き合って震えることか?

 周囲からザクザク視線が突き刺さるのがうっとうしいので、周囲を見渡して視線が合った奴に殺気を飛ばしてみると引いて行った。


「じゃ、行くか」

 ぽよよんぽよよん。

「いキマショウ」

「コケケ」

「がるるう」「メエエ」

「お、お手柔らかにお願いします」

「ビギナーさんてどう戦うんだろうね。ね? ファブルちゃん」

「きっと私たちの想像もつかないことなんですよ」


 賑やかな一行というのも珍しいのかもしれんなあ。


 いつも誤字報告してくださる方々、ありがとうございます。


 仕事のストレスを文章にしているせいで、長期休みの間って文章が浮かばない……。

 1500万PVを超えました。読者の方々にはいつも感謝しておりまする~。

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