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198 戯れる話

 商業ギルドの作業部屋は夜は使えないそうだ。

 醤油が使えるようになって料理を作り続けていたら、「時間です」って怒られてしまったからである。

 退出時に提出した物の金額を聞いたが、400万Gを超えていたのでそのまま貯金に回してもらった。

 今度、魔道具か何かを探し出して来ようと思う。


 それで味噌の方も実があるのかと思ったが、さすがにそこまで思うようにはいかなかった。

 ただソエビ豆という品種が、味噌を作るのに最適なんだそうな。

 こちらは畑で栽培が可能らしい。

 市場を探してみたが、豆類を扱っていた店では「ソエビ豆なんて聞いたことがない」、と言われてしまった。

 ま、幻の豆?


 しかしゲーム内で1泊というのがどうしても慣れないな。

 目をつむる。暗闇が通過する。朝になっている。体は爽快感が溢れている。意味が分からん。

 これ、起きていると普通に時間が経過するんだが、寝てる人とかどうなってんの?


 翌朝にまた市場へ足を伸ばしてセウユの実を買いに行く。

 お店の人に聞いてみたが、主な使い道は野菜と一緒に漬け込んで味をつけるくらいしかないそうだ。

 俺が大量に買っていくのを凄い喜んでいた。でも醤油としての使い方には興味はない様子だ。

 食文化の違いって奴かなあ。


 魔の森に稲穂狐を探しに行くには少し時間が足りない。

 こりゃ街中で時間を潰すか、早めにログアウトするかだなあ。

 後ろに着いてくるペットたちプラスぬいぐるみたち。

 ベウンはシラヒメに抱かれているし、ボウはグリースにまたがっている。

 ぬいぐるみ仲間が欲しいのか聞いてみたが、それを決めるのは(マスター)次第だから使い魔には決定権はない。みたいなことが伝わってきた。


 最近は戦闘ばっかりに連れ出していたので、たまにはペットたちと遊んでやるか。

 市場に近い中央広場でアレキサンダーたちを並べて、したいことの希望を聞いてみる。


 アレキサンダーはぽよんぽよんと跳ねて俺の頭の上に乗っかった。

 それを見たシラヒメは「おニイサマ、ズルい」とか呟いている。

 いや、仲間に加えたばかりの頃と同じことをしたいのは伝わってくるが、お前の巨体で頭の上に乗られたら首の骨が折れるだろう!?


 シラヒメは今や俺の背丈を超え、下半身の蜘蛛の頭が俺の腹の位置にある。

 なんだったら今度は逆に、俺がシラヒメの蜘蛛の背に乗せてもらおう。

「ソンナ、おトウサマヲ、ノセルダナンテ」

 クネクネと恥ずかしがっていたが、強めに「乗せてくれ」と頼み込むと「ジャ、ジャア、ドウゾ」と下半身の蜘蛛が腹這いになってくれた。

 跨ぐには少し広いので、腰掛けるように座る。ひょいと蜘蛛が立ち上がれば、今までとは違う2mくらいから見下ろす視界が体験出来た。

「おおー、これはこれで。結構高いなあ」

 四方を見渡して視界の違いを堪能してから降りる。

「ド、ドウデシタカ?」

「いやー、高いのも面白いなあ。また頼むな」

「は、ハイ。ガンバリマス」

 シラヒメの背中に乗るのってタブーか何かに引っ掛かるのか? すっごい赤面してるんだが……。


 グリースは肩に乗りたいとのことだった。

 街中だから鎧は外してて蹴爪があるんで少し食い込むが、思ってたより重くない。

 尾蛇もじゃれるように腕に巻き付いてくるので、乾いた布で磨いてやった。


 そしてツイナは存分に撫でて欲しいとのことだった。

 もっと違うことを要求されると思ったのだが、皆は俺の近くにいられればそれでいいらしい。

 たてがみを撫でて、ライオン頭を撫でて、ヤギ頭を撫でて、体を撫でてやる。

 途中で思い付いたことがあったので、哭銅の木切れを取り出す。


【大工】のスキルで思ったものが作れないか、木切れを手に取ると、問題なさそうのなので製作に入る。

 ノコで大きさを整えて、切れ込みを入れる。小刀で削って爪形を整え、ヤスリで削れば歪ながらも櫛の完成だ。

 まあまあというより、及第点みたいな失敗例かなあ。作成評価は「辛うじて櫛」とだけ……。

 うわーセンスないなー俺。


 それを使ってツイナの毛をすけば、なんか微妙な顔で首を傾けていた。

 うん、やはりブラシを使うべきだねこれは。


「ぐるる?」「メ、メェ?」

「うわー。ごめんなあ、ツイナ。小物の勉強もするからな?」


 ペットたちと広場で日向ぼっこ兼まったりとして過ごし、再び商業ギルドに赴いて小物のレシピか何かがないか聞いてみた。


「そういった物を作りたいのでしたら、該当する物を作っていらっしゃる職人の方に弟子入りした方が早いと思いますよ」

「ううーん、そうなるかー」

「ちなみにどういった物を作りたいのですか?」

「こんな感じの……」といって歪な櫛を渡す。

 受付してくれていた職員さんは、失敗作を微笑ましく見ていた。

 しかし後ろからそれを覗き込んでいた主任さんが、いきなり櫛を奪うとルーペを取り出してつぶさに観察し始めた。

「こ、これは……、哭銅で作った物なのですか?」

「あ、はい。切れっ端ですけど……」

「なるほど。ナナシ様、これを売ってもらうことは可能ですか?」

「へっ!?」

 失敗作なんだけど、どうするつもりなんだ?

 はっ!

 もしかして素人が作った駄作と称して、職人の卵の人たちに比較対象にさせられるんじゃあないだろうな!?


「すみません、それはまだ失敗作なんで、もうちょっとまともなものが出来たらでいいですか?」

「そうですか……。哭銅で作られた小物のようですし、これ以上の物を売って頂けるのでしたら。是非お待ちしております」


 あ、違った。

 素材が問題だったのかあ。これは下手な物を提出できねえな。

 俺は宿屋に戻ると、哭銅で櫛を何個か作ってからログアウトした。


 ここまでの主人公のステータス


 名前:ナナシ

 種族:稀人

 職業:ビギナーLv.39

 SP:0


 所有スキル:

 【拳豪Lv.11】【投擲Lv.41】

 【蹴撃Lv.38】【片手棍Lv.10】

 【致命攻撃】【反射】【闘気】

 【体術】【見切り】

 【死霊術Lv.30】【水魔法Lv.5】

 【土魔法Lv.15】【幻魔法Lv.6】

 【生活魔法】【大地魔術】

 【看破Lv.35】【気配察知Lv.54】

 【忍び足Lv.16】【軽業Lv.68】【隠れるLv.28】

 【水泳】【潜水】【登攀】【空駆】(使用不能)

 【魔力視】【魔力感知】【魔力付与】 

 【魔力操作】【魔力制御】

 【裁縫術】【料理長Lv.49】

 【調合Lv.46】【大工Lv.27】

 【植物知識】【鉱物知識】【アイテム知識】【スライム会話】

 【腕力強化】【知力強化】【脚力強化Ⅱ】

 【魔力強化】【MP増加】

 【毒耐性】【苦痛耐性】【環境耐性】【麻痺耐性】

 【暗視】

 【解体】


 ユニークスキル:【城落としLv.10】【幸運Ⅱ】


 称号:

 【後先考えぬ者】【死を垣間見た者】

 【草を食む者】【闇を歩む者】

 【強奪者】【殲滅者】

 【スライムの友】【アラクネの友】

 【料理人】【半魚人】

 【ネッツアーの加護】【マルクトの祝福】【イェソドの加護】

 【ゲヴラーの祝福+】【ティーフェレースの興味】

 【魔女見習い】【スフィンクスに認められし者】

 【ミノタウロススレイヤー】【甲殻スレイヤー】

 【プラントスレイヤー】


 ペット

 名前:アレキサンダー

 種族:エルダーレッドスライムLv.25


 名前:シラヒメ

 種族:アラクネLv.25


 名前:グリース

 種族:コカトリスLv.18


 名前:ツイナ

 種族:キマイラLv.25


 使い魔

 名前:ベウン

 種族:クマのぬいぐるみ


 名前:ボウ

 種族:牛のぬいぐるみ

    

 誤字報告してくださる方、いつもありがとうございます。

 ただ、シラヒメの発言にひらがな&カタカナ混合は誤字ではありませんのでご了承ください。


 編集地獄の最中に誕生日が過ぎていました……。

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― 新着の感想 ―
[一言] おにぎりがあるじゃろ。 醤油があるじゃろ。 焼おにぎりができるじゃろ?
[気になる点] コロナで暇だったから今日1から読み直したんですけど73話あたりの先行実装の話だかで出てきた宝箱に入ってた調味料セットに味噌とか醤油があるんですけどこれは個数制限なしの追加オプションみた…
[良い点] 配下の教育は異世界でも強し。 お米様の力なのかそれとも世界を跨ぐ前からの資質なのか (グレンの件)ひとしきり悩みますが、黒猫が暴れた国々に残した形跡はこう見ると素晴らしいものなのですね。 …
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