197 発見の話
ホースロドに戻って大地の牙とは別れた。クランマスターのチューニとだけフレンド登録を済ませておく。
大地の牙は冒険者ギルドへ。
俺は商業ギルドに。
素材販売カウンターに顔を出すと主任さんがすっ飛んで来た。
シロノオタケが目当てだろうか?
「おお! 待ってたぜ! 今日は何を取ってきたんだ?」
「まあ、色々。数が多いけど大丈夫かねえ?」
「数? うおおおっ!?」
マダラオオアリの甲殻をカウンターに全部出す。確認してなかったが、カラフルなのが241個もあった。
あのMPKの中に何匹いたんだよ。それでも金銀だけはいなかったんだよな。
主任さんが応援を呼んで職員が増える度に悲鳴が上がった。
「おーい、誰か手伝えー!」
「はーい。って何ですかこれー!?」
「いったいどうやってこんなに倒したんだよ? 巣でも襲撃したのか?」
「襲われたんでどーん! と」
「魔法使いだったのか、お前さん」
「違います」
レインディアの角は喜ばれた。砕いた粉を使って武器防具に雷撃を付与することが出来るそうだ。
シロノオタケも20個出す。
こちらは籠に盛ってカウンターに置いたら、卒倒する職員がいた。
毛皮も100枚以上あった。
こっちは狼やら熊やら兎やら鹿やら、とにかく種類が多い。
1つ1つの値段にそれほど差がないようだ。
それはドロップ品の毛皮の大きさが1m×1mでしかないからだと思う。
水蔓とかの採取物は今回見送ることにした。
カウンターの中が俺の提出物で大混乱なんだよ。採取物は自分で使うか、また今度にしよう。
武器類も暫くは所有しておくことにした。競売に出したらプレイヤーに行き渡らないかもしれないしな。
清算に時間がかかると言われたので、作業部屋を借りて時間を潰すことにする。
久しぶりにボウとベウンの出番だ!
まずは水蔓2本から美容液を4つ。これはギルドの販売カウンターで売っていた綺麗な瓶に入れた。見た目は大事だね。
1瓶が3000Gもしたけど。
前回は競売で400万で売れたというので、次は100万で買い取ってくれるという。
貯金が恐ろしいことになってんだけど、使い道ぃぃぃ……。
そんで道中アレキサンダーが取ってきて、俺も摘んでいた魔香草からMPポーションを作る。
磨り潰しはボウに任せて、俺は【魔力制御】を駆使して【魔力付与】を行う。
水に付与をしてもすぐ抜けちまうが、聖水なら平気なようだ。変質はするが。
煮て濾して煮て濾してを繰り返し、漸く4本のMPポーションが出来上がった。
半分以上失敗したんで、完成率は4割かねえ。
最大MPの10%を回復させる低級が3本。25%を回復させる中級が1本作成出来た。
今のところは売る気はない。
後は普通にポーションを作ってから、てのひら草を使って麻痺回復薬を作成する。
こっちは特に失敗することはなかった。
ポーションだけならボウに任せておけば量産出来るからな。
俺は毒消し薬や麻痺回復薬などを作る。
グリースの血を使って腐蝕防止薬が作れないかと試したが、なんだかよく分からないドロドロしたゲル状の液体が出来上がった。失敗である。
部屋に備え付けてある廃棄物用のゴミ箱に捨てた。
レドルフ肉をブツ切りにして串に刺すまでをベウンにやってもらう。焼くのは俺がする。
ベウンとか火の前に立たせると燃えそうで怖いんだよな。
あー醤油欲しいな。
また宝箱から出ないかな。
インベントリに幾つか果物もあるんで、オーク肉のオレンジ煮とかやってみるか?
米を炊いて俵結びにし、スライスして胡椒と塩をふった肉で包んで、小麦粉をまぶして唐揚げにしたれ。小麦粉は商業ギルドの売店で売ってた。
オーク肉に胡椒と塩をふってしばらく放置し、切れ込み入れてから香草やニンニクを差し込んでローストビーフならぬ、ローストオークにする。
刻んだ玉葱と唐辛子とオーク肉を炒めて、オレンジ煮の汁と絡めてご飯に乗せて肉丼に。
ふと思い付いて【アイテム知識】の中に醤油と味噌に該当する言葉がないか探してみるか。
普段は見知らぬアイテムを手に取ると、それについての説明が出てくる。
何処かに保存されている【アイテム知識】自体にアクセスして、中から情報を引き出すとか出来ないかね?
ステータスからスキル表示だけ抜き、【アイテム知識】をタップすると検索欄らしきものが現れた。
……あるんかい。
「醤油」を入れてみるとその下にアイテム名と説明が並ぶ。
……なんだよー。これ使えばスフィンクスまで聞きに行く手間が省けたんじゃねえか。
「醤油」の検索結果には醤油らしきものはあるが、実から絞り出すものらしい。
セウユの木という物に生る実がそれに当たるそうだ。
場所によっては市場で取り扱っているというので、部屋をベウンたちに任せてホースロドの市場まですっ飛んでいく。
普通に売っていた。
ただ籠1杯で5000Gもする。
実はゴルフボールくらいの大きさか。
籠に入ってる分は1キログラムはないかもしれない。
種を取ってから砕いて刻む。布で包んでから絞り出せば醤油っぽい物が出来上がった。
200ミリリットルもないなこりゃ。
しかし醤油は醤油。これで料理の幅が広がるぞー。もっと買ってこよう。
市場で枯渇するくらい買い込んで、最終的に5リットルの醤油が精製できた。
しかしこの情報はどうしようか?
市場で売ってるなら、そのうちプレイヤーの誰かしらが見つけるかもしれないしな。
また今度、嵐絶の本隊か別働隊に会ったら醤油を教えてあげよう。
ちょいと話数調整中なので、だらだら話が続きますね。
誤字報告してくださる方、ありがとうございます。




