191 装備を整える話
「うん、なんだこれ」
一撃でリングベアが吹き飛んだんだ。しかし、最後のトドメにしてもHPレッドゾーン状態は落ち着かねえ。
普通ならポーションをがぶ飲みするんだろうが、なんか別の回復手段が欲しいなあ。
回復魔法は神聖だけだったっけ?
前にレンブンが水にも回復魔法あるって言ってたが、どこまで上げりゃあいいのか。
ただ問題なのは、リングベアのHPが最大でなかったことだろう。
何故かというと【カウンター】スキルの発動率が50%だからだ。
1発目はただの打撃となり、スキルとして出たのは2度目となった。
最初のカウンターは【闘気】込みだったんでごっそり削ったからなあ。半分近くは減ったんじゃなかろうか。
やってから思ったがシラヒメに足止めを頼むんだったな。アレキサンダーたちは待機させてたので、後ろで見学してただけである。
胸部に大穴を開ける結果になったが、毛皮と肉は普通にドロップするようだ。レアドロップはなし。これは既に持っているからだろうな。
後は試すとしてオーガか?
考え込んでいたら、アレキサンダーに頭からポーションをぶっかけられた。
ベアーガからヘーロンへ飛んでリングベアまで来たけど、戦闘エリアから外へ出たら討伐待ちしてたプレイヤーが驚いていた。
「え?」
「ビギナーさんもう終わったの?」
「今入ったばっかりだよね……?」
「1分経ってない、よな?」
「早っ!?」
「リングベアごとき敵ではないということか!」
うげ。
戦闘を目撃されないけれど、エリア外に待ってる人がいる。というのを忘れていた。
新たな「ビギナー伝説」にならないといいなあ。……無理? 無理ですか?
手をひらひらと振って愛想を振り撒き(数名から歓声が上がった。信者か?)、その場を後にする。
次はベアーガでゲンドウたちから装備を受け取る予定だ。
数日ログインしていなかったら中では20日程経過していて、装備出来たぞメールが山になっていたのである。
「待ちくたびれたぞ!」
「悪い悪い。リアルが忙しくてなー」
「リアルの用事じゃあしゃーないね」
「まあ、オレたちも改良に改良を重ねたからな。当初に作った装備とは別物に……」
「どんだけ魔改造したんだよ……」
ゲンドウからはナックルガードが着脱式のガントレットを渡された。攻撃力が100超えてんだけど、何をどー加工したらこーなる?
「武器の名称がNP17っつーのは、なんかの略語かなにかか?」
「作り出すものに一々固有名詞なんか付けてられるか。識別すんなら、それで十分だろ」
「「「……」」」
その場にいたプレイヤーの白い視線がゲンドウに突き刺さる。みんな格好いい名前をつけているんですね分かります。
名付けが苦手な俺としては、ゲンドウの心情が驚くほど理解できるなあ。
別の人からは金属を織り込んだ布と、革を重ねた素材の上半身を覆う鎧を。腰周りや肘や膝や足の各所を守る防具も。これ革鎧か金属鎧のどっち?
こっちはバルクシリーズというプレイヤー名が付いていた。バルクさんだね。
「これは何の革だ?」
「イビスダンジョンのアシッドワームの革だ。攻略法が確立されてきたから、市場に少しずつ素材が流れ始めてる」
「だから酸耐性なんかついてんのか」
他には細かく砕いた魔石を、特殊な塗料で塗布したマントを渡された。
防御力は今まで使っていたのとあんまり変わらないが、魔法防御と風魔法威力UPとか付与されてる。
これは風格のマントという名前がついていた。
「風魔法は持ってないなあ」
「すみません。それ完成するまで何の効果が付くかはランダムなんですよ」
「SP12とかかかるからなあ。魔法」
「ビギナー職も大変だな……」
「本当に、これ代金いらねえの? あんまり出回ってない技術なんだろ」
「あれから調査して、無事鉄の鉱脈が見付かったからな。全生産プレイヤーの感謝の印と思ってくれ」
「武器防具作るって知られたら、オレらのトコに希少素材が大量に舞い込んで来たしな」
「お陰様で新工法が試せました。こちらとしても願ったり叶ったりです」
他にもアクセサリー職人からは素早さUPの腕輪やら、【聞き耳】スキルの付いたイヤリングなど頂いた。
アレキサンダーたちでも装備出来る小物アクセサリーを幾つか一緒に押し付けられた。
ツイナにはゆったりとした首輪。防御力UP。グリースには金細工の足輪。防御力UPと素早さUP。
シラヒメがネックレスや指輪や腕輪など。当人に聞いたら、二の腕につけられる腕輪を1つだけ選んでいた。
アレキサンダー用にと渡されたのはアクセサリーにもなってない板。作った人分かってるなあ。防御力と水耐性付き。
「あんまり納得できないが、そういうことならありがたく頂こう。ありがとう」
「おう! 耐久度減ったら遠慮なく持ってこいよ」
「アフターサービスも含まれていますからね」
バルクさんたちともフレンド交換をしてゲンドウたちとは別れる。
機会があったらまた鉱脈を探しておこう。ちと貰いすぎだ。
とりあえず当初の目的通り、米を探しにホースロドへ向かおう。
前回、表層程度では出なかったから奥地へ踏み込むべきか、利用する人たちのために道を切り開いた方がいいのかね。
相変わらず編集作業で難儀してて更新不定期です。




