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187 怪獣退治の話

 タイトルが全てを(以下略

 翌日はまたゾロゾロと引き連れて枯れ道という坑道へ。


 ほぼ全員がソロで壁をツルハシで掘って抜き、壁の向こうで合流する。順次PTを組んで大規模リンクを繋ぐ予定だ。

 俺は先に進んでゾンビを掃除して待つ。

 ただ人が合流するにしたがって、ゾンビがどんどん湧いてくるんだけど。


「ああそれは人員の自乗という検証結果がありましてね」

「自乗?」


 顔に出ていた疑問に、こちらに来ていた人が教えてくれた。

 何やら検証クランで法則が判明しているそうな。


「PTの人数が増えれば増えるほど、クエストの難易度が上がっていくというものだね」

「数が増えたり、相手のレベルが1段階あがっていたりするみたいですよ」

「じゃあ、このゾンビはそのせいか。なるほど」

「ゾンビじゃないのも混じってるみてえだが」

「あっちに出るとレドルフとオークが襲ってくるから、それは俺のせいかも」

「赤いヤツかあ……」

「オークとはやり合いたくねえな……」


 何人かが、ツイナが前足パンチでぶっ飛ばしたレドルフを見て遠い目をしている。

 デカイ武器持ってる人が多いからなあ。素早い敵には向かないって話だからねえ。

 生産の延長上でメイスとか両手斧とか。鍛治屋がメイスなのはまだ分かるが、何の延長で両手斧?

 聞けば家具職人だったり大工だったりと、木工品を扱っているプレイヤーだった。


「ホースロドの木とか使ったりするのか?」

「「「硬くて扱えねーよ」」」

「あれ?」


 2時間くらいかかって全員が集合できた。

 待ってる間に後ろから轟音とか聞こえてきたんだけど、【調合】が【調薬】スキルになると火薬が扱えたりするんだそうな。

 それで壁を爆破して抜けてきたらしい。よく天井が崩れなかったもんだ。


 坑道を集団で進むに当たり最初は戦える人たちが前衛に出て、続々とやって来るゾンビに対抗していた。

 途中からそれに混じっているレドルフのせいで怪我人が続出し、俺らが前に出ることになったのである。

 事前の取り決めで、倒したモノのドロップは倒した人の物ということに。ただ別けなくて済むのはいいが、魔石が鬼のように溜まっていくな。

 しかし坑道でこれだけ敵が出てくるとなると、廃村でいったいどんな化け物が待っているんだろうか。


「これはマズイかもしれん」

「何っ!? ビギナーさんでも捌けないの?」

「うえっ!?」

「最後までオレら生き残れるのかなあ~?」

「だだだ、大丈夫か! 前変わるか!」


「コケケ!」

 レドルフのゾンビを蹴りで真っ二つにしたグリースが、ぴょんと後ろに下がってくる。

 思わず通訳を求めてシラヒメを見ると「おナカガスキマシタ」と悲しそうに訴えてきた。

 確かに、戦いが続きすぎて飯食ってる暇ないもんな。


「アレキサンダー。後ろに下がって、みんなに食い物を供給してやってくれ」

「ナナシ、オレらが前を代わろうか?」

「頼みたいが、出口が近いからオークが来る可能性がある。こっちでデカイのを振り回すから、ちょっと気を付けろ」


 後ろで怪我を治したプレイヤーたちが前に出て、アレキサンダーたちが引っ込む。

 アレキサンダーのインベントリに充分な食糧を詰めたから、皆の飯分は足りるだろう。

 俺はこの前手に入れた獄卒の棍棒を取り出して振るう。手前に詰め寄ってきていたゾンビを纏めて凪ぎ払う。

 4体がいっぺんに粉砕されて、他のプレイヤーから歓声が上がった。


「なにそのデッカイ武器!?」

「ダンジョン地下7Fのオーガのドロップ品だ」

「7Fまであるダンジョンって何処よ?」

「ビギナーさんは皆が知りえないダンジョンにツテがおありで?」

「食いつくのそこかよ!?」


 しかしこの棍棒で殴るとダメージの通りが良くないかな?

【アイテム知識】で説明を引っ張り出せば、獄卒と付く分は対死者用のようだ。これなら実体なくても殴れるようだな。

 坑道の出口の外で待っていたオークをぶん殴ったところで、ゾンビたちの進攻が止んだ。

 この隙に唐揚げを口に放り込んで腹を少し満たしておく。


「ぐはー、やっと終わったああ」

「いや話を聞くからに本番はこの先じゃね?」

「3時間も戦い続けるって、普通はねーから!」

「ここ少し進んで廃村なのに敵が止むって前と違うなあ。人が多いからか?」


 一旦15分間休憩ということにして飯を食ったり、武器を研いだりして各々過ごす。


「んじゃ、行くかー」

「待て待てビギナーさんばっかりに前に立たせる訳にはいかん。ここはオレらが」

「とりあえず1発目は防ぐから、あとは頼まあ」

「玉砕前提!?」

「違う違う。一撃で死ぬようなダメージも、瀕死で耐えるってスキルがあるだけさ」


 両手武器を持った人たちが何人か前に揃い、坑道より外に出る。


『『『………………』』』

「……ぅわぁ」


 ちょっと行ったところで皆の足が止まり、廃村(・・)だった場所を占拠してそびえ立つ物体に誰もがあんぐり口を開けた。

 まさかこんなでっかい怪物にお出迎え頂けるとは思わなかったぜ……。

 高さだけなら前回の食中植物と変わらないが、随分と横に広がっている。

 頭の花弁みたいな顎が9個もあったり、蝿取草(ハエトリソウ)のような口形をした触手が無数にウネウネしてたりと、実に多彩な攻撃が来そうだ。

 触手だけで人がパクっとされそうな大きさである。


「……なん、だろう、これ?」

「ビオで、ランテな、物体で、いいんじゃ、ねえの?」

「ヒドランテって、言うべき、じゃね」

「じゃあ、それで、いこう」

「さし、あたって、どう、するべき、だと、思う?」

「そう、だね、とりあえず……」

「散れえええええええええええっ!!」


 目から光を失った皆が感情のない声でポツリポツリと言葉を繋ぐ。

 ウネウネと動く触手が何本かこちらに移動して来たことで、誰かがかけた号令で一斉に散り始める。

 あー、逃げる選択肢はないんだ。

「わーっ!」と散ったプレイヤーのいた場所に触手が3つほど突き刺さる。

 残りは散ったプレイヤーに狙いを定めたので、試しに横から蝿取顎の根元に棍棒を思いっきり叩きつけてみた。

 あっさり切り飛ばされるんで、触手状の茎の部分は弱そうだ。

 ツイナの頭に乗ったアレキサンダーとのダブル火炎放射で、触手が1本焼け落ちる。


「おー!」

「すげー!」

「さすがビギナーさんチーム!」


 だが焼け落ちた1本は根元から新しいのが伸びてくるし、俺が切り飛ばした触手はみるみるうちに枯れ落ちて、根元からまた新しいのが飛び出してきた。


「ぎゃああああああ!?」

「再生しやがった!」

「こんなんどうしろっちゅーねん!」


「ぎゃー」とか「わー」とか逃げ惑うプレイヤーたちだが、未だに食われたり捕まったりした者はいない。この辺りはさすがというべきだろう。

 だいたいが俺よりレベルが高いしなあ。


 根元は全く動かないんで、距離を取れば攻撃は届かない。

 だが誰もが決定打が入れられない罠。アースアローやウォーターアローも撃ち込んでみるが、効果が出た様子がないなあ。

 というか生産プレイヤー連合で戦う相手じゃないだろう、これ。


 これはあれか。あれの出番か。

 ここらでいっちょ範囲拡大で落としてみるか。

 MP回復薬をぐいっといって、こっちに伸びてきた触手を棍棒で殴って枯れさせる。

「全員下がれ! デカイの行くぞ」と叫べば、散り散りに逃げていた皆が怪物から一斉に距離をとりはじめた。


「【城落とし】!」


 声にしてみたところで周囲がいきなり暗くなった。

 見上げてみれば、明らかに城だけじゃ済まないような敷地が浮かんでいる。

 選択肢をよく見ないで、一覧の一番上にあるやつをやったんだがこのスキル使った俺は動けない。

 で、確実に範囲内に入ってるよなあ。さてどうしようか。

 考えるより先に頭から網が被せられ、ツイナが肩口に齧り付いて引きずるように運ばれていく。

 噛み付かれた肩が無茶苦茶痛くて、引きずられる足腰が痛いっ!

 緊急時につきしょうがないっちゃーしょうがないんだが、神の称号で痛覚が倍加されてんの忘れてたっ!

 なんとか落下地点より逃げ切ったがその時にはもう着地寸前だった。

 ぬるりとした何かに包まれたら、轟音爆風が砂嵐とともに襲い掛かってきて視界が赤く濁った色一色になる。


 うん? 赤?


 疑問に思うより先に凄まじい勢いで上下も判らなくなる回転で視界がシェイクされる。

 脳裏の何処かで何かが鳴る音を聞きながら、俺は暗闇に飲み込まれた。

 厚生労働省からラインアンケートが飛んできましたが、うちのガラフォでアクセスするとエラーとしか出ません。機種不適応ですか、そーですか……。

 身内に不幸がありましたので、暫く感想返しもできないかも。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アレクサンダー君、衝撃吸収機能もあるのかな? [一言] みんなで進んでこの先の街にも入れるようになるといいですね。
[一言] 自分まで巻き込む城落としはあかんよー
[一言] あのラインアンケート住所調べようとしてるんで偽ライン判定してました
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