表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/281

186 掘削の話

 翌日は早朝からプレイヤーを50人くらい引き連れて、坑道へ向かう。

 ほとんどが何かしらの生産職のプレイヤーで、新たな坑道を掘るには人手がいるだろうと着いてきた人たちばかりだ。

 半数が昨夜酒場にいた人たちである。


 アレキサンダーたちは昨夜は何処にも行かず、酒場の前で俺を待っていた。

 ただ誰かが設けた祭壇があって、貢ぎ物と紙が貼ってある食料が山積みされてたんだけど。

 これが信者の仕業ってやつか……。

 ただ俺が「いいよ」って言うまで食べなかったので、次は最初に許可を出しておこう。


「んで、ここだ」

「枯れ道じゃねえか。本当にここか!?」


 山の向こうに続く坑道は枯れ道と呼ばれているようだ。

 何人かはちょっと猜疑心を抱いているみたいだが、それに構わず俺は【大地魔術】スキルを発動させる。

 前回視た時にはそんな深いところになかった気がするんだが、とりあえず直径50mに深さ50mで大丈夫だろう。


「今、何かしらのスキルを使ったのか?」

「地面の中が見えるスキルかな」

「「「はあっ!?」」」


 一応概要だけ伝えたんだけど、後ろからはすっとんきょうな叫び声が聞こえてきた。

「なにそれっ!?」

「そんなスキルあんの!?」

「え、魔法じゃなくて!?」

「どっからみっけてくんだよそんなん?」

「なんというか。ビギナーさんが規格外とか言われるのが分かるねえ」

「なんちゅー予想外なスキルか」

「なんてスキルなのかねえ。透視? それとも解析?」

 ワイワイガヤガヤとスキル1つで実に騒がしい。

 何人かは「五月蝿い連中で悪いな」という断りを入れてくるけど、別に静かに行動しろって訳じゃないからいいんじゃないかね。


「おっとここだここ」

 最初に見付けた採掘ポイントは、壁があったところよりちょっと手前だ。

 左側の壁側の斜め下に向けた方向である。深さは5mほど奥になるか。

 人力で掘るには重労働の部類だ。

 ただ鉱脈ってのは分かるんだが、何金属の鉱脈なのかは掘ってみるまで分からない。

 今は頭の中で簡単地図みたいな概略図が表示されている状態だ。

 地面の中を透過して見ることもできるけど、あれMP食い過ぎるからなあ。


 着いてきた連中がそれぞれツルハシやスコップを用意する中、1人が「俺に任せろ」と進み出た。

 ツルハシも持っていないのでどうするのかと思って見ていたら、「ランダアアアーーーッ!!」と叫びながら指をパチリと鳴らした。

 すると列の後方からトテテテテーと走ってきた獣が、そのプレイヤーの前で急停止する。


「……は?」


 見た目は硬そうな蛇腹状の甲羅を背負った、ネズミみたいな獣だ。

 ただその甲羅から硬質的なトゲがたくさん突き出ている。

 図鑑で見たことはある。アルマジロってヤツだろう。図体がポイくらいあるけれど。

 つーか今叫ぶ意味あったのか?


「あ、ビギナーさんが固まってるぞ」

「まあ、初めてあれを見た奴は唖然とするわな」

「ナナシ、ちょっと落ち着こうか。あれは生産プレイヤーでは有名な奴でな」


 ゲンドウが肩を叩いて声をかけてくる。

 気を取り直してアルマジロぽいペットをみる。


「お前にはアレがなんに見える?」

「アルマジロってやつじゃないのか? 細かい種族までは知らんけど」

「まあ誰が見てもそう思うよな……、うん」

 腕を組んだゲンドウは、さもありなんと頷いてとんでもない事実を伝えてきた。

「あれは実はモグラでな……」

「はあっ!?」

「信じられない気持ちも分かる。だが鑑定するとモグラとでるんだ。疑いようがないだろう」

「……マジで?」


 なんだかよく分からんがモグラジロくんは体を折り曲げ、手足を格納して丸いトゲトゲボールと化す。

「ランダー! ドリルクラッシャーだ!」という飼い主の指示にゴロゴロと転がって、俺がここだと指し示した場所まで移動した。

 そこでどういう力が加わっているのか解らないが、高速で回転し始めたのである。

 俺はどこかの幻獣使役ゲームにでも紛れ込んだのかなあ……。


 坑道全体に響き渡る金属をかきむしる音に、半数くらいのプレイヤーが目を瞑って耳を押さえている。

 耐えるにはやや厳しい異音だろう。

 俺は軍の訓練で、バッドコンディション時での活動訓練を受けているから、耳障り程度で済む。


 ツイナが嫌そうに耳を伏せ、「がうぅ」「メェェ」と鳴いて何らかの魔法を行使した。

 途端に坑道全体が振動するような音が止む。


「あれ、聞こえなくなった?」

「【風魔法】のサイレンスか! さすがビギナーさんのキマイラちゃんはひと味違う!」

「……キマイラって幾つ魔法を使えんのかな?」

「これがツーマンアーミーたる所以か」


 なんか俺の知らないところで妙な2つ名が増えているー!?

 その前におかしいなと思ってツイナのステータスを見たら【風魔法】が生えていた。いつの間にかレベルアップで覚えていたようだ。

 同様にシラヒメに【空間機動】スキルと、グリースにも【貫通攻撃】スキルというのが増えている。アレキサンダーもだけど、ペットたちのスキルは全然チェックしてなかったなあ。ごめんよ。


 モグラジロがいたところを見ると、直径150cmくらいの穴が開いていた。

 今も中からは細かく砕かれた岩の欠片が噴出しているから、まだまだ浅いんだろう。

 何人かはツルハシを使って、入り口を広げるべく穴の周囲を削っている。


 とりあえずモグラジロくんが穴を開ききるまで、休憩を入れつつ3時間くらいかかった。

 その後で入り口を広げて補強を入れるのに更に3時間。

【大工】スキルが使えたのでよかったなあ。

 ちなみに鉱脈は銅鉱脈だったので、皆が肩を落としていた。うん、鉄鉱脈じゃなくて済まん。


「いや、銅鉱脈もあればあったで助かる」

「そーだ! ビギナーさんに責任転嫁するほどオレたちもアホじゃねえよ」

「関係ないのに手を貸してくれて助かってるぜ!」

「鉱脈が見つかったら、みんなでビギナーさんの武器を作るからよっ!」


 じゃあ次に見つけたところ、と移動したら3人しか着いてこなくて他の人たちは壁があったところで「「「ぎゃーっ!? このクエストクリアしてねええっ!?」」」と頭を掻き毟って悔しがっていた。

 え? 壁越えられるのこれだけ?

 唖然としていたら、レドルフゾンビとゾンビの団体さんが通路の先からぞろぞろと現れる。

 ゾンビが来るってことは、他の3人は壁抜けだけして廃村クエストをクリアしてないのか。

 たしかハイローがこういうクエストでクリアしてない人がPTにいる場合、そっちが優先されるって言ってたもんな。


 ゾンビ系統は楽勝なんだけど、壁が越えられた3人は「ひえええ」と逃げ回っていたので、アレキサンダーたちに救援を頼んだ。

 アレキサンダーとツイナは燃やし、シラヒメは糸で壁や床に張り付け、それをグリースが蹴って四肢をバラバラにしていく。

 俺も先日手に入れた棍棒で殴ったら、一撃で木っ端微塵になった。

 さすが獄卒の棍棒。死者にはダメージ増加という効果がついているだけあるなあ。


 結局この日は見つけた鉱脈の場所に印を入れて、また明日に廃村クエストをクリアしに行くことになった。

 ログイン時間がギリギリなんだけど、この人数で明日終わるのかねえ?


 コロナ慣れなんてのが聞こえてきますが、皆様充分にお気を付けください。

 慣れや疲れはともかく、警戒心は捨ててはいけません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] アルマジロ(モグラ)って、ひょっとして表記が土竜になってませんかね?
[気になる点] >その前におかしいなと思ってツイナのステータスを見たら【風魔法】が生えていた。いつの間にかレベルアップで覚えていたようだ。  同様にツイナやグリースにも1つずつスキルが増えている。アレ…
[良い点] 目を離したすきに祭壇作られていること あれかなどこか山奥の村の祭壇みたいな感じかな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ