184 銘の話
最終的に魔石の数は117個だった。オーク肉も116個出た。
でもツィーが言うには、オーク肉が毎回でるのはありえないんだそうだ。
うん、【解体】スキルさんは勤勉なんだよ。
1体はオーガだったからオーク肉の数はあってるな。
ついでにオークの持っていた斧も50個くらい出てたんだけど、こっちはツィーが纏めて冒険者ギルドに売りに行った。
「売れるのか、あれ」
「売れますよ。知らなかったんですか?」
「邪魔だから、前回ほぼ捨ててきたような気がする」
あれ。坑道の先のオークのドロップ斧ってどうしたっけ?
インベントリにないから捨てたと思ったけど。
グリースがコケコケ言いながら体を寄せてきたので、撫でてやる。
そうだそうだ。グリースが腐蝕させたから、途中からドロップしなくなったんだ。
さっきのB7Fのも、グリースが【腐蝕の視線】飛ばしたオークは斧がドロップしなかったもんな。
「うん。廃棄してきたであってる」
「勿体ない」
「今んところ金が必要な場面がなくてなあ」
「いったいどーゆープレイをしているんですか?」
「え、普通に魔物を殴ってドロップ品を売買しているプレイだが?」
アルヘナは俺の発言で顔を引きつらせて「絶対ウソだあ」と呟いていた。
これっぽっちも虚偽は言ってないんだが、いかんせん翠相手だと日常から信用がなさすぎる。
ホースロドだと嵐絶のとこの修理できる人に装備を任せていたからな。いや、実のところはマイスさんに「修理しますから出してください」とせっつかれてたんだ。
あとアサギリから「修理したくなったらインフィニティハートのクランハウスに来てくれ」とも言われてるしな。
ゲンドウにも会う度に「修理するから貸せ!」って言われるし。
みんな優しくて、至れり尽くせりだよな。
それをアルヘナに伝えたら「絶対違いますから! 皆さん兄さんが無茶するから心配なだけです」と怒られた。
「お、おう。分かった」
「そうだよ。ナナシは何時もボロボロに見えるから、装備や身だしなみに気を付けないとダメだよ」
「おかえり、ツィー」
さらにダメ出しを食らってしまった。つかボロボロに見えるの、俺?
別に服が破れたりマントがボロボロだったりはしないんだけどなあ。
ツィーからは小袋に分けた売却金を渡される。
「6万Gになったから、1人2万だね」
「そうなのかー」
「ね、売れるでしょう」
いい笑顔で「どうだ」とばかりな態度でアルヘナは勝ち誇る。
俺は「はいはい」と返して、小袋をアレキサンダーへ放った。
パクッと捕食したアレキサンダーは、小袋を体内に埋没させる。
「「あ!?」兄さん?」
「なんだ?」
「いいのかい? 食べさせちゃって」
「食べたんじゃないって。アレキサンダーは格納できるからな」
ぽよんぽよん。
アレキサンダーたちが出歩く際のお小遣いになればいいや。
跳ねながらアレキサンダーは小袋を頭の上から出したり入れたりしている。
自慢したいらしい。
「兄さんはあれですよ。一度教会か神殿に行ったらいいと思います」
「いきなりだな。教会? 神殿? 何が違うんだ?」
「神殿は本社で、教会は支社だと思えばいいさ」
分かりやすいが、そんなことを聞いているんじゃねえから。そこはかとなく嫌な予感がするな……。
「教会に行って何をするんだ?」
「神様を1柱選んで、その像の前で「助けてください」ってお祈りすればいいんだよ」
「そうするとその神様から興味か関心って称号が貰えますよ」
「ほ、ほほう……」
神様の称号なら5つもあるんだけど、1柱がどうとかというのは初耳だぞ。
「貰えるのって1柱だけなのか?」
「そうでない人もいるみたいですけど、称号のランクをあげるのが大変みたいですよ。その神様の望む行動を延々ととらないといけないらしくて」
「そうそう。戦の神様ならずっと戦わないといけなかったり。狂喜の神様なら感情を表現しないといけなかったり。百面相してる人がいたら、それだね」
「……へえ」
はい、アウトー。
話題に出したらヤベー奴じゃねえか。
取得方法とか根掘り葉掘り聞かれそうな気がするぞ。
それはそれとして疑問なのが、神様の名前が全く出てないんだけど意図して隠されてるのか? それとも知られてないのか?
「な、なあアルヘナ」
「なんですか、兄さん?」
「ゲヴラーって知っているか?」
「げぶらー?」
「なんだいそれは、また人の名前かい? 性懲りもなくまたキミを侮辱したプレイヤーが出たってのかい?」
「なんですってっ!?」
「どーどー。落ち着け2人とも。人名じゃないし、まだ何もされてないから大丈夫だ!」
やはり知らないらしい。
イェソドやティーフェレースも聞いてみたんだが、そっちも首を傾げていた。
この分だと神殿でも知られているか怪しいなあ。
藪をつついて蛇を出すようなことになってもあれだ。神関係の施設には近づかないでおこうと思う。
またマルクトとか、イェソドとか目の前に現れたりすると誤魔化しがきかないもんな。
「じゃ、兄さんまたどこか行きましょうね」
「ナナシもあんまり無茶なことばっかりするんじゃないよー」
「してねーよ」
その後は少し雑談して、食堂で飯を食ってからツィーとアルヘナとは別れたのである。
市内のローソンが三店舗に減ってしまった。おのれ……。




