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182 イビスダンジョン7Fの話(2

 暫くオークが7割、オークソルジャー3割という出現率のところでバッタバッタと薙ぎ倒していたら、途中でもう1種類増えた。

 1本が人間の身長くらいある矢が飛んできたんだ。


「オークアーチャーみたいなのが混じってるぞ」

「いやあ、正直なところボクとのキャラ被りは勘弁願いたいね」

「兄さん、平然と矢を掴んで止めないでください! ツィーもふざけないで」

「いや、銃弾より遅いから大丈夫だろ」

「いや、そうなん、ですけど……」


 これがレーザー並なら対処に困るけどな。

 オークたちの隙間を縫って飛ばしてくる技量は流石だと言いたいが、天井を歩いてったシラヒメに網を投げつけられれば呆気なく行動を封じられた。

「おー、シラヒメえらいえらい」と誉めてやれば、グリースやツイナがいきり立った。


 グリースはバサッと羽根を広げて飛びかかり、蹴爪でオークの顔面を切り裂いて尾蛇で噛みついて倒し始める。

 おいおい、援護はどーした。

 ツイナの方は雷が(ほとばし)り、火炎渦巻いて石槍と水槍が飛んでった。

 出てきたオークたちがあっという間にボッコボコにされていく。


 ツィーとアルヘナが唖然として観客に徹することになるじゃねーか。

 俺が何か言うより早く前に出ていったアレキサンダーが、俺の身長を越えるくらいの高さでぼよんぼよんと跳ねる。

 激おこぷんぷんのようだ。グリースとツイナがしゅーんと項垂れて、すごすごと戻ってきた。

 俺がよしよしと撫でてやったら、しゃきーんと復活したけど。


 アレキサンダーが体をぷるぷると震わせて抗議してきたが。


「え? 対応が甘すぎるって。いいじゃねーか。その分、アレキサンダーやシラヒメが押さえるんだろ?」

「いエ、おトウサマモおコッテクダサイ」


 腰に手を当てたシラヒメも呆れた表情で文句を言ってくる。

 兄姉なんだから弟たちの面倒くらい見ろよ。って言ったら、俺の世話が大変だとか言われてしまった。

 俺はアレキサンダーたちに負担かけてるかね?


 首を傾げながらもオークの処理は手を抜かないが。

 斧の側面に手を当てて反らし、肘が伸びきったタイミングを計って肘を逆方向にへし折る。攻撃を当てたという慢心を狙って、弛緩した部分を破壊するのが手っ取り早い。


 一旦動きが止まるところで懐に入り込んで顎に突き上げを食らわし、浸透撃込みの破撃か砕撃を脇腹に叩き込む。

 肋骨辺りだと尚いいねえ。

 動きが鈍ったところにアルヘナの切り裂きが当たるか、ツィーの矢が飛んでくるかだ。


 気配を探ったところ、他のプレイヤーがいるとは思えない。

 シラヒメにも確認してもらったが、他にこの階に降りているプレイヤーの残滓はないようだ。

 という訳で【死霊術】のグール召喚を使う。いささかMPを消費したが、三体のオークのグールが出現した。


「えーと、兄さんなんですかこれ?」

「グールだ。オークの姿で出るとは思わなかったけど」

「話には聞いていたけど、これが【死霊術】ってやつかい。ナナシは多才なんだね」


 三体は前の方を先行させている。ダンジョン内で使った弊害があって、グール自体がやたらと臭かった。

 肉壁にはいいかもしれなかったが、ツイナなんかが近くにいることを嫌がったのだ。

 お陰で視認できるギリギリ先を歩かせている。

 それで俺たちの前を行くアレキサンダーの頭の上では香を焚いている。

 薬草の搾り滓を、蝋と魔石の粉とを固めてできたものだ。魔女のレシピなので【調薬】だけでは作れない。


「アルヘナのお兄さんは、正真正銘の人間なのかね」

「私もちょっと疑問に思っています……」


 おいいっ、義妹!?

 そこは否定してくれるところではないのかねえええっ!!

 ああ、でもゲームの俺は人間という種族ではなかったね。


「おトウサマ、マエ!」

「なんだ?」


 シラヒメが何かに気付いたようで注意を促してくる。

 グールたちはとりあえず真っ直ぐ進ませていたのだが、途中に右折路があったようだ。

 グールが通りすぎたそこから、オークを上回る図体の敵が姿を現した。


「「オーガ!?」」


 ツィーとアルヘナが驚愕で顔を歪める。

 オールオールめ、俺たちの歩みが止まらないからって格上を投入してきたな。


 前のボスの時とは違って、身の丈くらいあるトゲ付き棍棒を持っている。

 俺との視線が絡み合うと「グオオオオオッ!」と雄叫びをあげて突撃してきた。


「足止めはこっちでする。アルヘナたちは適当に援護してくれ!」

「オーガ相手に1対1でっ!?」

「ちょっとっ! 大丈夫なんですか兄さん!」


 俺も負けじと突撃をし、オーガが棍棒を振り上げたところで【幻魔法】を発動。幻灯でオーガには俺が倍いるように見えているはずだ。

 戸惑って立ち止まったところで俺は進行方向を右に変更。

 壁を蹴って天井を蹴って、頭上から強襲をしかける。【幻魔法】のMP供給はすぐに停止させる。オトリの意味は果たしたし。

 一拍遅れてオーガの口に矢が突き刺さる。ツィーもいい腕してるなあ。

 俺はオーガの頭の上に着地すると、コメカミに短剣を当てて膝蹴りで頭蓋骨の中に刃を叩き込む。ついでに鎖骨辺りに強打を打ち込んでその場を離れた。

 間髪入れずに空気を切り裂いて突き進んできた雷蛇が、短刀を経由してオーガの体内に雷撃を流し込む。ツイナの【雷魔法】は視認できていれば距離関係ないからな。

 両腕を広げた状態で痙攣するオーガの喉を、影から飛び出したアルヘナが切り裂く。

 終わったかと思ったけど、喉から血を迸らせながらまだ生きてやがる。棍棒を取り落としたけど、幽鬼の様な足取りでふらふらとこちらに近付いてきた。

 と、思ったら途中でぱったり倒れて動きを止めた。なんか緑色っぽい体色が紫色へと変色している。


「なんだこれ?」

「猛毒よ」


 止めを刺したのは、アルヘナが刃に塗っていた猛毒だったようだ。



 この兄妹はヒドイ(笑


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字報告 お陰で視認『できる』できるギリギリ先を歩かせている。 ↓ お陰で視認『』できるギリギリ先を歩かせている。 『一泊』遅れてオーガの口に矢が突き刺さる。ツィーもいい腕してるなあ…
[一言] 誤字 誤:一泊/宿泊 正:一拍/一拍子 お疲れ様ですm(_斑_)m
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