181 イビスダンジョン7Fの話(1
サブタイトルだけ見ると、なんじゃこりゃって感じですね。
つーかB7Fって、しばらく見ないうちにずいぶんと階数増えたなあ。
この上B6Fは熱帯雨林で、人の神経を逆撫でする仕掛けがふんだんに散りばめられているとかなんとか。
降り立ったところで最初に遭遇したのはオークだった。
ツィーの矢が両目に突き刺さり、影から現れたアルヘナが足を切り裂き、アレキサンダーとツイナの火炎放射が対象を火柱に変える。
「俺が手を出すまでもなかった……」
「そう言えば取り分を決めないといけないね」
「それより先にPTリンクしましょう、兄さん」
「いいのか? そっちの経験値が激減するんじゃないのか?」
こっちは1人と4体、あちらは2人だ。
PTリンクなんかしたら1人当たりの経験値が7分の1になってしまう。
「それも見越してだからね。こっちは前衛が足りてないから、ナナシ頼みになってしまうけど」
「いくら2次職になってるとは言っても、暗殺者じゃあダメージディーラーにはなれません。弱点を狙うにしても、オークじゃ面の皮が厚いんですもん」
「へし折れば即死するんだが。まあ、そっちがいいならやってくれ」
『エトワールよりPTリンクの申請が来ました。許可しますか? Y/N』
という通知が来たのでYを押す。つーか2人でもエトワール扱いなのか。
ソロだとクランは作れないんだよなあ。どっかに入れてもらうにしても、何処に?
いっそのことオールオールやレンブン誘ってレアスキルクランを作るか?
常にバラバラだけど……。
「兄さん?」
「ああ、いや、何でもない」
脱線した思考を振り払ってアレキサンダーたちに指示を出す。
「アレキサンダーとツイナは2人の防御と援護をやってくれ。グリースは敵の武器狙いで、シラヒメは敵の妨害だ。分かったな?」
ぽよんぽよん。
「がう」「メェ~」
「コケケッ」
「わカリマシタ」
ダンジョンの通路はオークが横並びで現れるほど広い。
移動するなら4人、戦闘なら3人は大丈夫か。
大剣振り回すのもいないからツイナが前に出ても平気だけど、大柄だから射線遮るしなあ。
それを伝えたら、ツィーは「適当にうまくやるさ」と笑っていた。狙いどころはあるらしい。
アルヘナは自分の影から相手の影に移動して、足元から強襲ができるようだ。ただ移動距離は6mくらいしかないとのこと。
通路は光源が何かは分からんが全体的に薄暗い。
どれが影なのやら。光源を作っておくべきか?
「俺は【暗視】あるけど、2人は大丈夫か?」
「私も持ってますよ」
「ボクはないけど、代用できるものはあるさ。大丈夫」
「なら松明は要らねえな」
グリースは夜の戦闘でも普通にしてるから、コカトリスに鳥目関係ないようだ。
皆もステータスにはないから標準装備みたいなもんなのかね。
「あとナナシには悪いんだけど、魔石が欲しいんだけど」
「じゃあ肉を貰おう」
「……即答!?」
「なんだなんだ、問題あるのか?」
「言ってからなんだけど、魔石は要らないのかい?」
「ベアーガの向こうで散々出たからなあ。ああ、あとこれを渡しておこう」
魔石も今は手元に飽和状態だしな。ついでに紙袋で小分けにした食料を渡しておく。
中身は人参と牛蒡のオーク肉巻き揚げである。さっき礼に渡したのと同じものだ。
「えーと、なんですかこれ?」
「見てわかるだろう。腹が減ったら喰え」
「ボクの鑑定では満腹度45%と出ているんだが……」
「私が同じもの作っても15%しかいかないのに。兄さんはなにをどうしたら、こんな……」
うん、俺も不思議に思ったんだが、まさか【闇を歩む者】の効果が料理にまで及ぶとは思わなかったんだ。
【料理人】で+10%、【闇を歩む者】で+30%。料理自体は5%。
夜に作るとどんな料理でも40%上乗せされる上に、気分次第ではさらに20%加算されるという……。
理不尽だけど、そうなっちゃったんだよ。仕方がない。
しかしアルヘナは【料理人】持ってるのか。教える手間は省けたな。
次にエンカウントしたのはオークとオークソルジャーというのだった。
オークはすっ裸に腰巻きで古びた斧という武装だが、オークソルジャーは上半身のみの革鎧に剣なんか持ってやがる。
当たらないからどうということもないんだけど。
懐に飛び込んで剣を持つ指を砕き、肘と膝で挟み込んで手首を折る。
【闘気】で強化した砕撃を腹に打ち込めば、血ヘドを吐いて絶命した。浸透撃を織り込んでるから、皮下脂肪なんか関係ねえ。
オークの方はさっきのツィーとアルヘナのコンボに、ツイナの縦に切り裂く爪でトドメをさされた。
ドロップ品に魔石とオーク肉と、ファルシオンという剣が出たんだけど。
これもしかして上の階のコボルトみたいに、オークソルジャー倒すたびに全部落とすんかい。
PV1200万突破!
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