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17 食われた話


 さて今回で無料の宿屋は終了だ。素泊まりの宿だと普通どれくらいの値段なんだろ?


 中央広場に向かい、噴水周辺の宿で聞き込みを行った結果、1泊で150Gなんだそうな。食事代は別。

 200Gあれば泊まれて、夕飯が食えるということですね。


 では毛玉と尾羽をとって、おばあさんの所で軍資金稼ぎじゃオラー!


「あ、毒消しも買わなきゃならんのだった」


 だが今の所持金はほぼゼロに近い。道具屋の毒消しって幾らすんのかねえ?

 道具屋を覗いてみたところ、宿代とどっこいどっこいだった。昨日、貴広や翠に聞いたプレイヤーの露店が並んでる所も見てみる。

 ポーションが並んでいる露店をみると、プレイヤーメイドの毒消しは300Gとかいうお値段が……。


「たかっ!」


 露店のプレイヤーは俺の呟きに頭上のアレキサンダーを見て、そして俺を見てからポンと手を叩いた。


「ああ、ニイサンあれか! ビギナーの人!」

「噂が浸透してやがる!」


 翠が言ってたような固有名詞の広がりに、つい悪態をついてしまう。

 露店のプレイヤーはケラケラ笑いながら「有名税だと思ってた方が気が楽だぜー」と言ってくる。


「それで割りきれたら、こんなところで愚痴ってない」

「違いないねえ」


「とりあえずビギナーの人は止めてくれ。ナナシって名があるんだ」

「初めましてだねえ、オロシだ。薬屋兼神官をやっている」


 それは普通逆じゃないのか? 疑問を抱きつつも、俺はオロシとフレンド登録を交わした。


「何か買っていくかい?」

「いや、申し訳ないが今は持ち合わせがない。プレイヤー製って道具屋で売っているのと何か違うのか?」


「調合のレベル次第だけど、今のところは効果が5%くらい高いってだけかな」

「へー」


 調合のことは良くわからんが、レベル次第だということは値段がどんどん高くなるんだろうな。


「あと、材料が中々見付からないのも高額の理由だな」

「は?」


「スキル検証スレとか見ればわかるんだが。見てないのか?」

「掲示板は苦手なんでな」

「まあ、見てたらビギナーの人なんて言われなさそうだしね」


 そこでケラケラ笑うんじゃねえ。納得するしかないが。


 どうやら鑑定スキル自体の難易度がβの時より上がっていて、薬草を判別するのに10レベルも要るらしい。それ以外を見分けるには更に上のレベルも必要のようだ。


 ということは、図書館で見た図鑑の細分化のように、それぞれの知識が必要だということなのか? 

 鑑定はレベルがあるようだが、俺の持つ植物知識にはレベルがないようだし。実際にはまだ薬草すらも確認はしてないしなあ。


 ここでそれを話すのは止めにしておくか。

 翠たちにもスキル構成はあまりぺらぺら喋るもんじゃないって言われたしな。


「薬草持ちこみなら安くするよ」

「持ちこみなら毒消しも作ってくれるのか?」


「おや、ナナシは鑑定高レベルなのか? だったらお願いするよ。作成には薬草も必要なんでそっちも頼むわ」

「分かった。探してみる」


 手を振ってオロシと別れて、東の平原へ出た。


 まずは毛玉と尾羽の確保かね。

 あまり大量に持ち込んでも買い取ることが出来ないと言われたので、それぞれ20個ずつが目標である。


 戦っている最中に【急所攻撃】の影響なのか、鶏の体の一部が赤く表示される箇所があることが分かった。雄雌共に急所は首らしい。

 そこへ入れると一瞬硬直するので、昨日よりは倒すのが楽になる。ついつい尾羽だけ50個にもなってしまった。



 ノルマは達したので薬草を取りにいこう。

 先日の死地まで移動して周囲を見渡すと、薬草の宝庫じゃないかね。


 【植物知識】万歳!

 やはり鑑定とは分けてあるんだな。今後は図書館をどんどん利用しよう。お金があるときだけど。


 薬草、薬草、薬草、毒草、薬草、薬草、薬草、毒草、毒草、しびれ草、薬草……。


 しびれ草とな!?


 改めて周囲を再度捜索してみると、しびれ草が3本だけ見付かった。

 薬草が40本以上で毒草が10本だ。この5分の1という確率の中、2本食った俺の運は良い方なのか悪い方なのか……。


「アレキサンダー、ちょっと周囲の警戒を頼むな」


 インベントリの中に収穫した草を押し込み、俺の手には3本のしびれ草。

 アレキサンダーのジト目が俺に突き刺さる。


「まあ待てアレキサンダー、これは必要な道なんだ。自分を実験台にして【麻痺耐性】が得られるかの瀬戸際なんだ」


 では実食、もぐもぐ……。


 麻痺ったら次、という訳にはいかないと気付き、3本まとめて咀嚼(そしゃく)する。

 苦い青汁の方がマシかと思うくらい青臭い味だなあ。


 効果はすぐに現れた。


「ほ、あっ!?」


 動けるけど動けない。喋れるけど喋れない。動作を開始したら即リセットされるような感じか。

 もっとこう、どこかに肘をぶつけて痺れるようなもんだと思ってたんだけど。


 このまま耐えていれば、と思っていた時、アレキサンダーがぽよんぽよん跳ねながら俺の前に移動した。


「……?」


 なんだ、と思う間もなく、茂みをガサガサと割って現れたのは3匹の狼……。


 いやちょっと待て! 確かにんな所で麻痺ってるなんぞただの吊るされた獲物以外のなにものでもないけど! 麻痺ったすぐそこに出るか普通!?


 やばーい! 1匹はアレキサンダーが防いでくれても2匹は確実にフリー! オマケに俺は2撃食らえば簡単に死ぬ!

 これ確実にハプニング映像じゃん! 2匹の狼が口を開いて襲ってくる直前にスローモーションになってエンダー、とかBGMが付く奴じゃね!? とか考えてるうちにぎゃああああああ襲ってきたあああああっ!?



 ……で、真っ暗になるんですね、はい……。






 久しぶりに風邪をひきました。

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