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161 魔の森の話(2

 とりあえずエニフさんには、実際にその値段で売る気はないと弁明しておく。


  エニフ:そうですか。ナナシさんがそうおっしゃるなら。

  ナナシ:ああ、俺としても値段は決めかねているんでな。

      実際に見てもらわないと判断ができん。


 で、次はデネボラの相談事なんだが。魔女が見付からないということらしい。


 デネボラ:もう、無理。見付からない。泣きたい。

  ナナシ:自力で見付けないとクエストにならねえだろ。

 デネボラ:ヒント欲しい。

  ナナシ:ヒントなあ……。

 アニエラ:ちょっと! ヒントくらいいいじゃないのよ!

 アルヘナ:私からもお願いします兄さん。

  ツィー:ボクからも頼むよナナシ。エトワール全体で何か返すから。


 ぬー。後で魔女の方々に怒られそうな気がするんだが……。

 アナイスさんあたりなら、奉仕3日とかで勘弁してくれるかもしれんが。


  ナナシ:分かった。ヒントだけな。

 デネボラ:……ほんと?

  ツィー:わあ、ありがとうナナシ!

  エニフ:お礼申し上げますわ、ナナシさん。

  ナナシ:ただし、他に同じようなことで苦しんでる人がいたら、その人にも伝えておいてくれよ。

 アニエラ:依怙贔屓はなしということね! 分かったわ! 

  ナナシ:ヒントはうさぎだ。

 アルヘナ:……ウサギ?

 デネボラ:……うさぎ?

  ツィー:うさぎかあ。うーん?

  エニフ:ナナシさんにしては、可愛いヒントですわね。

  ナナシ:考えるのはデネボラだけだからな! 全員で知恵を出しあうんじゃねーぞ!

 デネボラ:分かった。ありがとう。


 露見する前に自己申告に行ってこよう。事後だと怖すぎる。

 ホースロドで魔女を探すか。


 アニエラ:それで! 魔法の武器だけど!

  ナナシ:どうみても暗殺者用。とても騎士様が持つもんじゃねーよ。

 アニエラ:ぶー! なによそれ!

 アルヘナ:ええっ!? 私向けなんですか?

  ナナシ:血塗られた暗殺者にぴったり。

 アルヘナ:血塗られてませんから!

  ナナシ:こっちはしばらくホースロドにいる。金ができたら取りに来い。

 アルヘナ:はーい。

  ナナシ:じゃあな。通信終わり。


 通信を切ると、シロノオタケを大量に抱えたシラヒメが待っていた。 

「よくもまあ、そんなに見つけるもんだなあ」

「きノウエノホウニ、いッパイハエテマシタ、から」

 ざっと見た感じ、クロノオタケはないみたいだ。

 どこに生えてんだろうな、アレ。そこまでの生態は書いてない。


 そうこうしている間にもグリースは、そこかしこからてのひら草を集めてくる。

 アレキサンダーは夜光草やら薬草やらを集めている。

 ツイナだけは何も集められていないので、悔しそうだ。

「ぐるがあっ!」「メエッ!」

 なんかうろうろしてたと思ったら、いきなり森の奥目掛けて走って行っちゃったんだが。

「こら! ツイナ!」

 うろうろしてたのは獲物の臭いでも探していたのか?

 仕方がないなあ、という感じでアレキサンダーがその後を追っていく。

「おトウサマ。おニイサマに、まカセテオケバ、だイジョウブかト」

「何がいるんだか分からんのだから、単独行動するなって話だよ。追うぞ!」

「はイ」

「クケッ」


 追おうとしたんだが、逆にツイナたちが行った方向から凄い勢いで接近してくるものがある。

 急制動をかけたところで間に合わず、茂みから突き出された角付きの頭に右フックを一閃。

 ついでに自分の挙動に左回転を加えて、そいつの胴体部に回し蹴りも足しておく。

 最初のフックで骨を砕いた感触がしたが、絶命はしてないか?

 構えてしばらく待ってみるが追撃はない。

 茂みをかき分け覗いてみれば、鼻っ面をくの字に歪め、左の横腹を陥没させた山羊が痙攣してた。

「なんだこれは?」

 確かにコメカミに一撃を入れたと思っていたんだが、鼻先に当てるとは動体視力がボケたか?


 頭から伸びる角は左右でぐるぐると巻かれている。伸ばしたら胴体より長くなりそうな。

 しばらく見ていたらその姿がフッと消えた。

 死亡したようで、ドロップ品だけがその場に残される。

 ドロップ品は【幻魔法】のスクロールとマント大の毛皮。

 毛皮の方は【アイテム知識】に該当あり。幻羊の毛皮という。どっちもレアっぽいな。

 

「がるぅ~」「ベェ~」

 ぽよん。

 今度はしょんぼりとしたツイナと、誇らしげなアレキサンダーが戻ってきた。

「え、なに? 今の山羊はお前たちが追い込んだって?」

 ぽよよん。

「あー、分かった分かった。ツイナもごくろうさん。怒らないから機嫌直せ」

「ぐるるる」「メエ」

「こラ! おトウサマカラ、はナレタラ、だメデスカラネ!」

 シラヒメが俺の代わりに、ツイナの双頭をぺしぺしと叩いて反省を促していた。


 幻羊の毛皮は毛布などに加工すると、欲しい物の在処を夢にみることがあるそうだ。

 だが的中率は20%ぐらいになるらしい。


【幻魔法】は相手を幻惑する類いの魔法が使えるようになるという。

 人には習得不可能となっているが、稀人となった俺は問題なく使用できた。

 最初に使える魔法は幻灯という。ロウソクのような灯火を周囲にバラ撒き、相手を惑わすのだそうな。

 習得した途端にポーンという久しぶりの音が脳内で鳴る。


━━━ナナシは称号【ティーフェレースの興味】を手に入れました。


 アナウンスにちょっとだけ丁寧さが加わっているような気がする。

 ティーフェレースって確か美の女神兼、魔法の神だったような?

 称号の効果は魔法の威力が5%増し、消費MP3%減だった。

 それと美容液のレシピ集……。


 作れと?


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