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155 メンテナンス中の話

 リアル多忙で遅れました。



 ログアウトした後。

 なにやらあるブイ運営からメッセージが届いた。


 フルメンテナンスとサービス追加のアップデートを行うので、1週間ほどログインが不可能になったとか。

 その1週間で第3次募集も行われるらしい。


「やっと3陣ですか。伸びきった戦端もこれで間が埋まりますかね」

「その言い方だと、ヘーロンとか誰もいないみたいに聞こえるが」

「あそこ今、クラン漁業組合しかいねーんじゃね。イビスはダンジョンがあるから人は多いけどな」


 うちの客間で翠と貴広と純義が集まった。

 端末をつつきながら情報交換をしている最中だ。


「今回のフルメンテだってアホがアホやったって、もっぱらの噂っす」

「アホ?」

「接続行為違反したってやつだろ。掲示板で自爆したとか」

「ああ、時間オーバーか。翠たちも毎回ギリギリだろ。大丈夫か?」

「あ、アハハ。私はホラ、母さんに口を酸っぱくして言われてますから、そこまで酷くはないですよ」


 翠を睨むと、乾いた笑いを浮かべながら目を反らした。

 ぜってえ母さんの言い付けなんか頭になかったろ。

 俺は端末に母親宛のメッセージを放り込んだ。すぐさま翠の端末が震える。


 運営に携わっている母親と牙兄貴は普通に仕事である。プチ姉も朝食作ったら、とっとと出勤していったしな。

 俺はVR授業を早々に終わらせ、鍛練に行こうと思っていたら翠に引き留められた。


「あー! 兄さん酷い! 即チクるとかないですよ!」

「母さんの言い付けを守っていたら、その文句は出ないよなあ?」


 ガックリと俯く翠の姿に、ドン引きの貴広。純義はさっとその場から距離を取っている。


 俺がギロリと睨んだだけで、貴広はテーブルに平伏した。

 その態度は自分で何をやっているか、分かっている反応じゃねえか。


「まことに申し訳ありませんでしたああああっ!?」

「謝罪で済んだら軍はいらないだろ」


 俺は自分の端末に軍の認識証を通して、俺の使える権限を呼び出す。

 近所や友人知人の範疇内であれば、広域監視プログラムを走らせることも可能だ。

 1人固定すれば周囲の人々、家族から交遊関係までも網羅するので、一般人からはネズミ算式ストーカー扱いで恐れられている。


「ちょっ!? マジかよ!」


 フリだったんだがテーブルを飛び越えた貴広が、端末に手をかざした俺の腕を掴んで止めた。

 焦った翠も貴広を擁護するようにすがってくる。


「ちょっと兄さん! それをやったら、ゲーム内の強豪クランが1つ瓦解してしまいます!?」

「やらんやらん。自覚を促せれば充分だ」


 手を振って画面を閉じれば、翠と貴広が揃って崩れ落ちた。


「さすが大気にいちゃん……。人が恐れることをあっさり行おうとするなんて、そこに痺れないし憧れないっす」

「何の評価だよ?」


 壁に張り付いて警戒する純義には何もしないって。時々夕方一緒に走ったりしてるからな。無理のない程度で遊んでいるのが分かるし。


「純義の方はどうだ?」

「え、うん。真っ直ぐな道なら時速60キロくらいだせるようになったっす」

「ずいぶん速くなったじゃねえか。なんだそれ」

「でも5秒だけっすけど……」


 なんでもスキルの重ね合わせで、全力を出さなくても40キロは維持できるという。

 でも秒でガリガリHPが削られるので、1分くらいが精々なのだとか。


「意味あるのかそれ? ツイナに乗ってみるか」

「ひえっ!?」


 あれも速く飛ぶしな。

 でも純義にはダメか。顔が青くなっているし。


「ペットもアレルギーの対象になるのか?」

「それ以上に大気にいちゃんのペットは、デカくて怖いっすよ」

「デカいぬいぐるみだと思えば……。ああ、そっちの方がポイみたいに見えるから、余計にダメなのか」


 呼んだ? みたいな顔をしたポイ(サーベルタイガー型の守護者(ガードドッグ))が居間に続く扉から顔を覗かせる。

 純義(造毛アレルギー)がいるために部屋には入ってこない。命令は問題なく実行されているようだ。

 手を振って呼んでないサインを返せば、ポイは離れていった。


「エトワールの面々は最近見ないけど、何してるんだ?」


 いつの間にか復活していた翠と貴広は、連携がどーとかスキルがどーとか話していた。


「私たちは山向こうまで行ったんですが、森がなかなか抜けられなくて……」

「ああー、分かる分かる。オークとか、レドルフとか厳しいよな」

「堅くて痛いっすからね」


 3人で体験に共有できるところがあるようだ。

 たちまちオークがどーとかレドルフがなんだとかで、盛り上がっていく。


 少し待っていると俺の視線に気付いた翠が、ばつが悪そうな顔をして黙ってしまった。

 それを見た貴広と純義も「やべっ」とか呟いて挙動不審になる。別にこっちから話題振って、そっちだけで盛り上がってても怒らないって。


「まあ、山向こうの街には、俺は入れないからな。前回は退散したが、次は嫌がらせするけど」

「げっ!?」

「兄さん、実は矢を射掛けられたのを根にもっていますね!」

「具体的には何をする予定っすか?」

「え、街の正門スレスレに城を落とす予定だが」

「「「それはテロだから!!」」っす」


 一斉に突っ込まれた。

 まあただの思い付きで、今のところは実行に移そうとは思わないけどな。

 もう1度矢が飛んできたら考えよう。


 翠は貴広と相談して「山の向こうに行ったら、あっちの街に注意喚起してきます」という結論に至ったようだ。


 夜になったらスケルトンぞろぞろ向かわせて、街を囲んで大合唱という手もあるな。

 たぶん声が出せないから「カタカタカタ!」とか、歯を鳴らす音しかでないと思うが。


「大気にいちゃんが悪い笑みを浮かべてるっすぅぅ~!?」

「待て! 大気落ち着け! 軍人がテロに加担したら本末転倒だろっ!」

「兄さん! スキルの悪用は止めましょう! ビギナー教が一緒になって暴走しますから!」


 ……酷い言われようだ。


 リアデイルの編集もひと段落です。

 前回もでしたが、ここから掲載する時間変えます。

 そして次の話も掲示板です。

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