145 飯の話
ベアーガに入って、プレイヤーの屋台で売っていた串焼きをペットたちと食べていると、店の人に話しかけられた。
「あのー。ビギナーさんですよね?」
「ああ。称号の情報か」
「あ、いえ。そちらはこんなことをやっていたら取れたんですけど。何か食用になる肉とか持っていたら売ってくれませんか? あ、僕はササキと申します」
「ナナシだ。にしても食用?」
インベントリを開くとリンルフ・レドルフ・レッドカウ・サンドリザード・スコピオ・オークがある。
量で言うならオークだが、面白そうなのでスコピオも付けるか。
さっきの行き来で結構倒したしな。
「んじゃこのカニカマみたいなスコピオの肉と、オークの肉一塊でいいか?」
「はい、ありがとうござ……。スコピオッ!? オークッ!?」
ササキが目を丸くして驚く。
あ、スコピオの肉ってレアだっけか。倒せばでるからそんな気がしないな。
「オークは山の向こうでよく出るから」
「だからって5kgをポンと渡されるとは思いませんよ……」
「塊ででしか出ないからなあ。いっぱいあるから普通に受け取ってくれればいいだけだろ」
「普通とはいったい……」
ササキが遠い目をしてるんだが、俺が悪いわけじゃないよな。
塊で落とすオークが悪いんだ。
「とりあえず代金は払いますよ。スコピオは……、5万ですかね」
「ちょっと待て! ひと切れでそんなになるのか!?」
「レアですからね。オークはちょっと出回ってないので、幾らになるか分からないです」
「じゃあそっちも5万でいいや」
「投げ売りじゃないですか!」
「今は金に困ってないからタダでも構わないが」
「分かりました。5万で買い取らせて頂きます!」
諦めたような顔のササキと商談が成立する。
スコピオのカニカマも手元に物品化すると、人の腕の太さで長さ50cmくらいのものが3本でてくるからな。
俺は塩胡椒振ってあぶり焼きにする、という話題をササキに振ってみる。
「カニカマだと思えば、サラダにしてもよさそうですね」
「サラダかあ。腹一杯になる気がしないな。あぶり焼きで満腹度40%くらいいくんだし。大抵はツイナかアレキサンダーが食ってるが」
「餌用っ!?」
ぶっと吹き出したササキ、頭を抱えてしまう。
餌差別はいけない。
調理したらプレイヤーでもペットでも食えるのに変わりないだろ。
「いえ、ペット用の餌団子というレシピも出回っているんですが、ナナシさんは知らないんですか?」
「聞いたことはないなあ」
後ろを振り向いてペットたちを見ると、アレキサンダーが自分のインベントリから出したオーク肉のジャーキーを、シラヒメが配っていた。
物が食えないベウンだけが手持無沙汰のように、シラヒメの背中でくるくると踊っている。
燻製にしようとしたら、なぜか加工途中でジャーキーになったんだよな。
木材をチップに加工しないとダメなのかねえ。
「お父サマモ、タべマスカ?」
「ああ、2つくれ」
「ハイ」
シラヒメから受け取ったジャーキーを1つくわえて、1つはササキに渡す。
こういうのは称号の効果もあって、1つで満腹度を20%あげるんで重宝してる。
ササキはジャーキーを半眼で見つめた後に、諦めたように口に運んでいた。
「何かマズイものでもあったか?」
「いえ、満腹度がおかしいだけです」
「元が10%で称号で倍。何もおかしいところはないと思うんだが」
「元が10%ってところが既に……」
「は?」
なんでもこういった酒の肴的な食い物は、満腹度5%前後なんだそうな。
作り方を説明して、加工行程に変なところがないとササキが頷くも眉間のシワは消えない。
俺のステータスも確認してみるが、【マルクトの祝福】は関係ないよな?
オークが獣の範囲に入っていれば別だろうが。
もしかしてベウンと一緒に作ったからだろうか?
【料理】スキル持ちが2人で同じもの作ると、5%上がるのかもしれん。
一応、その可能性だけササキに伝えてから俺たちはベアーガを離れた。
700万PV突破!
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