表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/281

139 追い払われた話


 夜半まで待って襲撃はなかったので寝てしまったんだが、朝になったらツイナがインプとかいう魔物を口にくわえてた。


 小人に羽根と尻尾が生えた真っ黒な魔物である。

 しばらくツイナがキーキーもがくインプをくわえていたのだが、俺に見せて満足したのか噛み砕いてしまった。

 ドロップ品は魔石だけである。

 こんな小さかったから当然かねえ。


 そしてシラヒメから渡される20個近い魔石。

「は!? もしかして夜のうちにこんなに来たのか?」

「ハイ」

 ニコニコ顔で胸を張るシラヒメ。

 グリースもなんとなくふんぞり返っている。

 この様子から察するに、シラヒメの網にかかってグリースの腐蝕毒で仕留めたってことか?


 野営地はこのままにして移動を開始することにした。

 インベントリの中のストックで朝食を済ませ、木から降りる。

 今日中につけばマシな方かもしれんなー。


 時折現れるオークとレドルフを倒しながら、森の中を道があったであろう痕跡を確認しながらのんべんだらりと進んでいく。


 レドルフは3~5匹であればアレキサンダーたちだけで問題ない。

 俺はオーク相手の戦闘で全力を行使した場合の威力確認だ。


 首をへし折り、腕を引き抜き、膝関節を横から曲げる。

 コメカミを陥没させ、眼窩に短剣をぶっ刺し、股間を破壊する。

 途中から拷問の様相を呈したが、オークも人間と同じ破壊方法で問題ないようだ。


 そして肉がガッポガッポと出るのがありがたい。

 肉のためにオークを狩り尽くすのもいいかもな。


 そしてこの道中でついにグリースが雄鳥(おんどり)へと成長を果たした。

 頭から尾羽まで灰色一色だがな。

 コカトリス(雛)Lv.30で雛部分が取っ払われるのか。


 それでも俺より成長が早いっていうね……。凹むわー、マジ凹むわー。

 こっちもようやっと28だからな。

 前も思ったがビギナーって進化したりするのかねえ。

 初心者(ビギナー)の進化だと思うと、頭がこんがらがってくるが。


 そしてグリースは鶏冠(トサカ)が俺の肩の高さにくるくらいまでにデカくなった。

 そして新たに生えたスキルは【格闘】である。闘鶏か!

 確かにヒヨコの時よりクチバシが比べ物にならないほど鋭く伸びたもんな。

 脚部も太くがっしりとしたものに変わり、爪や蹴爪も食い込んだら痛そうな見た目をしている。


【腐蝕の視線】も表示は変わらないが強化されたみたいだ。

 オークの持っていた斧が瞬時に腐蝕したからな。

 尻尾蛇もマムシだった見た目から、パイソンくらいには変わっている。

 レドルフの首に噛み付いて、振り回すくらい強くなっていた。

 成鳥のコカトリスこえー。


 そうして討伐、採取を繰り返すうちに森を抜けた。

 抜けたところに東西に続いてるキチンとした街道があったし、今そこを馬が藁を積んだ荷車を曳いてるからな。

 さてどっちが街だろうか。


 荷車に乗ってるおじいさんに「すみませーん」と声をかけて道を聞こうとしてみた。

 しかし、こっちを向いたおじいさんの顔は目を見開いて引きつったものになり、馬に鞭をくれて脱兎の如く逃げて行った。

「……おや~?」

 後ろを振り向いてみたが何もいない。

 もしかしたら俺たちの背後から、オークが「やあ」などと、挨拶をしたのかと思ったが違うみたいだ。


 おそらくは、おじいさんの逃げていった方向に街があるんじゃないかね。

 そっちに向かって歩いていくと、会う人会う人回れ右をして逃げていく。

 もしかしてツイナたちがこわいのか?


 確かに、今やツイナも俺の肩くらいのところにライオン頭があるしな。

 シラヒメも俺と背丈が並んでいるしな。

 そこにきてグリースの巨大な雄鳥である。

 人として俺の存在感が埋もれているのは間違いない。

 アレキサンダーに代わって俺が先頭を歩けば問題ないだろう。

「……?」

「どウシマシタ、おトウサマ?」

「いや、いま誰かに何かを大音量で否定された気がしてな」

 なんか貴広がよく言ってるような「そこじゃねえええっ!」って聞こえた気がするが、気のせいか。


 街が見えてきたのだが門が固く閉まっているようだ。

 そして壁の上に完全武装した兵士さんたちがズラリと並んでいた。

 なんだありゃ?


 何かを思うよりも早くヒュヒュヒュッと飛んでくる無数の矢。

 俺たちの前にぶわっと体を広げたアレキサンダーによって、全て遮られる。

 壁の上から騎士っぽい人が「ここに何をしに来た魔族よ!」と怒鳴ってきたんだけど、もしかして魔族って俺のことか?


「違います! 魔族じゃありません! れっきとした人間です!」

「後ろに魔物を引き連れてる奴が人間な訳ないだろう! 馬鹿にしてるのか!」

「あー」

 めんどくせえ。

 山のこっちはペット文化がないみたいだなあ。

 石頭に何言っても無駄そうだし、兵士さんたちも厳つい顔でこっち睨んでるし、どうすべえ。

 どうするか思案していると、あちら側が業を煮やしたのかファイヤーボールを撃ち込んできた。

「げっ!?」

「があっ!」「メェッ!」

 ツイナが落とした雷がこっちに届く前にファイヤーボールを迎撃した。

 どよめく壁の上。

 よし、この隙に逃げ出そう。

 あちらが何かアクションをおこすより前に街に背を向けて逃げ出すことにした。

 すたこらさっさだぜー。

 後ろで何かいってるが知ったことか!


 ううーん。

 こちらの国で俺の安住の地はなさそうだ。


 書籍編集作業につき次回の更新は未定です。

 申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ