133 生産の話
短い。
さて三日ぶりのゲームである。
中の時間は加速されているので、実質1週間ぶりということになるな。
1日ログインしないだけでグダクダいう者もいるからなあ。
マイペースでやっていて何が悪い。
ログインして降り立った場所はベアーガのチェック地点だった。
なるほど。城の中でログアウトは出来るが、その場には留まれないということか。
俺の周囲にアレキサンダーたちが次々に現れ、目覚めて動きだす。
アレキサンダーはぽよんぽよんと跳ねながら周囲を見渡すと、俺の足元の定位置でどっしりと構える。
シラヒメは周囲に関心を持たないみたいで、短い羽根を震わせるグリースを捕まえていた。
グリースはいつもの如く、足早にあちこち走り回ろうとしてシラヒメに捕獲され、ジタバタもがいている。
ツイナはのんびりと大あくびをしたライオン頭と、こっくりこっくりと舟を漕ぐヤギ頭。お前が1番マイペースだな。周囲なんかまったく気にしてない。
そして人の姿をみるなりざわざわし始める周りのプレイヤー。
いい加減に慣れろ。
まずはデネボラに礼のメールを飛ばしたら、ツィーから会って話したい旨の返信がきた。
この前の【魔女見習い】の称号の取得方法のことだろうな。
2~3時間後にエトワールがこっちに来るそうだ。
あちらはホースロドで森林探索をしているらしい。
俺がホースロドに行っても良かったのだが、「妙な騒動が起きる可能性もあるから、キミはベアーガで大人しくしていてくれ」と釘を刺されてしまった。
エトワールも俺のことを騒動発生機かなにかと思ってないかね?
でも翠がいるからその辺正確に伝わってるかは怪しいなあ。
中途半端な時間なので宿をとってから、中で生産活動に勤しもうと思う。
街中であれば余程小さいところでなければ、ペットの入室を断られることはない。
うちのように大所帯になれば、毎回大部屋を取るしかないのだが。
金銭に困ってないから、懐に打撃がくるようなことはない。
部屋に入ってベウンを出せば、シラヒメがグリースをほっぽってベウンに構いきりになる。
普通のぬいぐるみを作るべきか?
グリースはというと、ゆったりと寝そべったツイナのたてがみを引っ張ったり、尻尾と戯れたりしているからシラヒメに対して思うところはないようだ。
ハメを外し始めたらアレキサンダーが叱るしな。
アレキサンダーは俺が魔法陣布を広げたテーブルに乗っかり、作業の様子をじっと見つめている。
溜まりに溜まった魔石を3つずつまとめていく。
慎重にゆっくりと。
ちなみに失敗すると爆発する。
これは体験済みだ。ひじょーに痛い。
威力に換算すると、俺のHPが1割くらい減るのだ。
痛覚の方にも多大なダメージが来るから、できれば遠慮したい。
戦闘力が高まる分、それ以外の部分でデメリットを背負えということだろう。
「ポーションも減ってきたからそっちも補給せんとなあ」
「おトウサマ、草ムシリニ行クノデスカ?」
「草むしり……」
間違ってはいないがそこはかとなく違うような気がする。
合成魔石は50個ほどになった。調理にも使うから幾つかは残しておかないと。
ちょっと思いついてポーションに魔石粉を投入して、混ぜてみたとたんに爆発した。
「あたたた……」
「がう!」「メエッ」
ツイナが慌てて水魔法のウォーターヒールで治療してくれる。
2つの頭を撫でて労っておこう。
ポーション自体に魔石の合成は出来なかった。
作業工程の何処かで混ぜ合わせてみるしかないな。
アレキサンダーが薬草を提出してくれたので、工程の途中で色々試してみるか。
結果的にすり潰した後で煮詰める前に投入すれば、妙な変化は起こらなかった。
刻んだ薬草と一緒にすり潰してみたところ、完成品は「混乱薬」というものになった。
飲んだら混乱耐性が得られそうだが、暴れた場合にアレキサンダーたちに俺が止められそうにはないので、今度リングベアにでもぶつけてみよう。
という訳で完成品がこちら。
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⬛MP回復ポーション
対象のMPを20%回復する。
ただし味は壊滅的である。
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なんだこの説明文は……。
たしかに味はポーションの青臭い味と違い、苦味だけが抽出されたような味である。
砂糖かはちみつでも混ぜてみるか。
どっちも手持ちがないからどこかで調達する必要がある。
このMP回復ポーションを3つほどつくったところで、アルヘナからベアーガに着いたと連絡があった。




