表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/281

132 検証する話

 リアル回続きです。


 使えるというかマグレだったというか。

 はたまた何かの間違いだったと思わせる事柄としても、なんなのか分からんと迂闊に日常生活が送れん。

 浜かどこかで実際にぶっぱなしてみるしかないだろうな。

 もしかして、最近バイトでやたら体が軽いのは軽業のスキルが原因とかか?


 家に帰ると、母親どころか牙兄貴やプチ姉までいて無事を喜んでくれた。

 何気に軍の仕事って死傷率高いからな。


 だったらなんでそんなところに所属してるのか? とか聞かれたら「なりゆきで」としか言えん。

 まさに典型的な「どうしてこうなった?」ってやつだな。


 理由をいうならば、母親にくっついて統制機構の総合本部まで行った。

 トイレに行ったら帰り道が分からなくなってさ迷った。

 外に出られたところにアスレチックみたいなものがあったので、迷子になったのを忘れて遊んでいた。

 運悪く軍の適性試験をやっていて、そうとは知らなかった俺は巻き込まれた挙げ句合格した。

 母親の知るところになったのは登録してしまった後だったんで、軍の責任者が更迭されるだの処刑されるだのといった騒ぎに発展していたらしい。

 その辺りはもっとずっと後になって龍樹姉さんから聞いた話である。

 迷子になった時点で端末を使わなかった俺にも責任はあるけどな。


 軍は所属したら10年は退役できないという決まりがあったので、さすがにトップがそれを堂々と破るわけにもいかなかったようだ。

 母親や砂花(さはな)姉さんがあちこちに色々手を回し、なんとか龍樹姉さんの配下に収まったと聞いている。


 ただ実働部隊の場合には、出動命令がかからない限り何をしていてもいいということになっている。

 そのため、隊員たちは大抵何かの副業を持っている者が多い。


 聞いた話では、バーテンダーだったりソムリエだったりゲーマーだったりパテシエだったりだ。

 とても荒くれ者たちの職業とは思えないが、事実だ。


 ちなみに俺の場合、授業と出動では授業が優先される。

 それも第3種までだが、昨日のように第2種だと駆りだされる。


 国外には出されないまでも、国内のゴタゴタには出動しないといけない。

 今回みたいな何かが暴れまわる事件や何かが暴走しただとかが、今の俺の所属している部署の仕事だ。

 たまに手が足りないからといって、爆発事故や崩落事故の救難現場に派遣されたりする。


 翌日に学業が終わってすぐに近くの海岸まで出かけた。


「なんですか兄さん。ゲームより優先するなんて酷いですよ」

「何故に翠が着いてきてんだ?」


 同行者は翠とポイである。

 ポイはプチ姉からの命令で来たんだが、翠はあるブイやってなくていいのか?


「兄さんが使い魔なんて情報を宙ぶらりんにさせておくからじゃないですか。プレイヤーの皆さんは詳細な情報を今か今かと待っているんですよ。情報元である兄さんがあるブイにログインしないなんて、皆さんに悪いとは思わないんですか!」


 うわあ、ゲーマーこえー。

 そこまで緊急性のあるものだなんて普通思わないからな。

 俺を重度のゲーマー仲間に入れるのは止めて頂きたい。


「だいたい住民と積極的に交流すれば得られるのばっかりだからな。俺のスキルは」

「未だにNPCを下に見る人たちが多いですからね。中にはスキルはくれるのが当たり前だとか思ってる人とか」

「見つけたら積極的にPVPふっかけるか」

「ただのテロにしかなりませんからやめてあげてください!」


 他人のことなのに真っ青な表情ですがりついてくる翠に免じて、とりあえず保留にしよう。

 まずはジョンさんあたりに情報を聞いてからだな。


 あるブイは置いておいて、翠を下がらせておく。

 ゲームの時のように闘気をまとってから、力を込めつつ「グランドクラッシュ」を真下に放つ。

 何かの力が背中から腕を伝って、放出した力に上乗せされたのを感じた。


 砂浜はというと盛大に下から上に吹き上がって、四方八方に降り積もる。

 何をするのかと見物していた翠は逃げ遅れたようで、砂のカーテンの向こうから悲鳴がきこえた。


 全力を込めてはいないが、俺を中心とした直径10m範囲の砂はすり鉢状に抉れている。深さは3mくらいか。


「闘気だけだとこうはいかないな」

「もうっ! 何するか言ってよ!」

「下がってろって言ったのに、前に出てきたお前が悪い」

「にゅぅ……」


 翠を閉口させてから砂浜をジグザグに走ってみる。

 前より反応速度が上がったような、変わらないような?

 比較対象になるタイムがないから、計測の意味がない。


 それから2時間ほどクレーターを幾つか作ってみたが、武技スキルの威力が出たのは最初の1発だけだった。


「1日1回までということか?」

「ちょっと兄さん。砂浜をこんな穴だらけにしてどうするんですか!」

「埋めるけど」

「……」


 別に埋めるのを手伝えとは言わないから、そんな絶望的な顔すんなよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] なんか、翠うっぜ… 押しつけがましいというか…(-"-) 相手には君の気持に応えなきゃいけない筋合いはないのだよ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ