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131 現実でも使えた話

 リアル回です。


「ぐはー、疲れたー」

「おう! おつかれー」

「先行ごくろー!」

「あいかわらずスゲー威力だったな!」

「もう常在員でいいんじゃねーの」

「学生に頼らないでくださいよー!」

「なんで学生なんかやってんのお前?」

「学生だからですよ」

「YOU卒業しちゃえYO」

「無理に決まってんでしょー!」

「コラー! お前ら、基地に帰りつくまでが任務だぞー!」

「「「サー! 了解でサー!」」」


 任務終了後の輸送車両の中で、俺は他の隊員たちから労いを受けていた。

 労いというか弄りというか。

 学生だからって見下す人もいないし。みんな気のいい人たちだ。

 完全な実力主義のため、俺の他は20代、30代の大人ばっかりだけどな。


 今はウェットスーツに似た全身を覆うインナーと、各部に薄いプロテクター。

 任務内容によってこの上に纏う特殊兵装が変わる。

 今回は重装甲の機動兵器(トルーパー)を使っての出動だったけど。目標がえらいもんだった。


 2足歩行して試作の特殊兵装と融合した象の生物兵器である。

 目標の秘匿コードがガネーシャ。

 非合法の研究所で作られたって話だったけど、ありゃ絶対身内の(うみ)だろう。

 横流しか資金のちょろまかしと思われる。


 やらかした奴は統制機構のお偉いさんの鶴の一声により、処刑が確実だという。

「むしろ俺らにくびり殺させろ」と隊長さんがエライお冠だった。

 統制機構が噛んでるからか、下っぱの方に詳細な事柄が回ってこないでやんの。


 おかげで目標のデータがないから完全な力押しオンリー。

 撃破じゃなくて捕獲なんて命令が出てたら、メンバーに死人がいたかもしれん。

 哀れガネーシャくんは木端微塵となりましたとさ。ただの証拠隠滅ともいう。

 まあ、たまーにある任務だから、今さらその辺に突っ込む気も失せるけどな。


 似たような事件の起きる頻度としては1年に1~2回。

 高名な科学者や生物学者などを統制機構が受け入れたりすると、何人かに1人がそのふんだんな研究資金に目が眩み暴走するようだ。

 むしろそうやって異常者をふるいにかけているんじゃないか、というのが(ウチ)の見解である。


 出動に関しては途中で拾われてからの合流だったが、帰りは基地まで行って報告書提出までやらないと、家に帰れない。

 呼び出しは午後だったが、討伐に時間がかかって翌日の昼過ぎである。

 

「さて、どうやって報告すべー?」

「いつもの技じゃねーのかよ」

「色々な要因が重なりあった結果ですね」

「はあ?」


 同僚を困惑させてしまった。

 ガネーシャが跳ぶわ跳ねるわで散々手こずらせてくれたからな。


 追い込んで足を止めさせて撃破する作戦を、失敗すること3回。

 全部包囲網の頭上を越えて離脱されたので、4回目に俺が上から強襲して叩き落とした。

 その時につい「グランドクラッシュ」って呟きながらやったんだが、どうもそれが威力に乗ってしまったらしい。


 普通なら恥ずい奴か黒歴史に分類されるんだろうが、これはちょっと違う。

 ゲームの技が現実で通用するとかなんぞこれ!? という話だ。どちらかというと発現したというべきか。

 現に特殊装甲のガネーシャの頭部は俺の一撃で陥没したからなあ。


 幾つかある共用のPCの画面を見ながらうんうん唸ってたら、頭をゴツンと叩かれた。

「いたっ!?」


「さっさと終わらせて帰りなさい。母さん心配してるわよ」

「って、龍樹姉さん?」


 いつの間にか隣に憮然とした表情の龍樹姉さんが立っていた。

 相変わらず気配が全く掴めねえ。接近されるまで全然気づかんかった。

 母親のことを持ち出すってことは、あっちからの苦情が龍樹姉さん(上司)のところに入ったんだろう。


「いつものコンボを決めただけでしょう。何をもたついてるのよ」

「姉さんにはあれが破撃の威力に見えたのか?」

「いつも通りでしょ。タイミングによって威力の強弱はでるだろうけど」


 師匠が違和感を感じてないならそれでいいか。  

 ちゃっちゃっと報告書を作り上げて、上司の端末に転送する。


 龍樹姉さんは軍内でも対外の部署をまとめる役職なので、うちの部隊の上の上くらいの上司だ。

 実働部隊の総隊長という地位にいるが、書類仕事は専用のAIがいるため場合によっては前に出てくる。

 今日のガネーシャなんかは龍樹姉さんだけでも、素手で沈めるだろう。たぶん。


 ただ遺伝子操作猫耳獣人(バイオロイド)完全自律機械化車輌(サイバーノイド)で構成された直属の部隊で動くために、出動のコストがバカ高いという欠点がある。

 なので現場から届くリアルタイム映像で時間を潰してるとかなんとか。

 軍内で偉くなるのも考えものだなあ。


 しかし翌日に軍の整備部から連絡があり、俺の重装甲の機動兵器(トルーパー)の上半身のフレームが歪んでいたらしい。

 総交換になって、整備の班長がぷりぷり怒っていたそうな。

 あの後で一度も発動はしなかったが、ガネーシャにぶっぱなした武技スキル1回だけでそうなったならば、次は考えなくてはならんなあ……。

 安定して発動すればだけれど。





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