13 死亡した話
ひどいサブタイトルである。
リンルフはやや固い豚肉のような味だった。ちょっとレバーに近いかもしれん。
腹も膨れたようだし、張り切って狩りをしようと思う。
片付けようとしたら、フライパンと菜箸の油汚れをアレキサンダーがペロッと食べてくれた。
なんて有能なんだお前さんは。
「しかし妙なところで細かいよなあ」
この分だと後片付けのために、食事の時は水辺に行かなくてはならないだろう。それか水を大量に持ち運ぶかだ。
「樽かタライかだな」
インベントリ内も納められる数に限りはある。
ドロップ品一種類につき最大99個までだし。調理器具と食器類で2枠は埋まっている。ひと纏めにして袋に入れると一種類となるようだ。
最大数は15枠までしかないので、拡大も検討するべきだろう。
課金なところが悩みの種なんだがなあ。
タマラビを掴んで近場のメンドゥリにぶつける。怒って飛び掛かってきたものは迎撃。
アレキサンダーはリンクして数匹になったオンドゥリなどを倒して貰う。メンドゥリに蹴飛ばされても、微動だにしないから安心だ。
やはりさっきの飯テロの影響か、平原にいた人数が減っている。
サクサク狩れるのがいいな。
兎の毛玉が20個くらいになったところで、スキルが生えたんじゃないかなーと。ステータスを確認したら【投擲Lv.1】と【格闘Lv.1】と【急所攻撃Lv.1】が生えていて、ビギナーもLv.5に上がっていた。
SPはまだ保留かな。ついでに【料理Lv.4】も増えている。
「さっき鶏肉何個焼いたっけな? なぁアレキサンダー」
視線で訴えるとアレキサンダーは「知りません」とばかりにぷるぷると震えるだけだ。
20個以上はアレキサンダーが食っていたと思うんだが。
あとインベントリの中にオンドゥリの尾羽という、別格のアイテムが紛れ込んでいた。
取り出してみると、付加効果が2点ある腕輪だった。鑑定がないから名前しか解らないがね!
腕輪に大きな赤い尾羽が3枚付いていて、装備したらインディアンの装飾品のようだった。
「解体の効果かな?」
総防御力が4に増えてたので防御力1はあるんだろう。
称号【後先考えぬ者】の効果込みで5だ。リンルフから2回攻撃されれば死ぬだろうけれども。
翠によると、死んだらペナルティとしてリアルで1時間の経験値取得無しなのだとか。
たぶん、ゲームから少し離れて脳を休めろという運営からの配慮なのだろう。
「なんか独り言が増えたような気がするなあ」
ソロは意外に寂しいものである。
アレキサンダーが居なかったら、翠や貴広にメッセージを延々と送っていたかもな。
リンルフの1匹くらいなら同等の戦いが出来そうかと思い、森との境をうろうろしてみる。
まあ見つからないんだけどな。森の中まで分け入らないと敵は出てこないようだ。
注意深く見回していると他とは違う感じの草を何種類か見付けた。薬草なのだろうか?
1度平原に戻り、メンドゥリの攻撃をわざと受けてみる。
HPがわずかに減ったのを確認してから、その草を摘んで食べてみた。
動かずにじっとしていれば、HPはじわじわと回復するものらしい。薬草(?)ひとつでは変化がなかったので、目につくものをむしっては口に運ぶ。
周辺の警戒に気をとられて、草の形を良く確認しなかったのがマズかったのだろう。
突然、舌にビリッとくる感覚と共に、くらりとした眩暈に襲われた。
「なんっだ!?」
慌ててステータスを開いてみたところ、赤文字で毒状態という1文が増えていた。
「げっ! ええと毒消しってどれだ?」
じわじわと回復していたHPが今度はゴリゴリと削られていく。
薬草だと思っていたものとは違う草をむしって口に入れてみるも、それも毒草だったようだ。視界の縁に赤いフィルターが表示されHPが半分を切っていた。
インベントリからポーションを取り出して飲むが、HPが全快するだけで、また徐々に減っていくのは変わらない。
「マジか。毒消しも買っておくべきだったか?」
走って戻る距離と時間、残り4本のポーションでもつかな? と思ったが所持金がゼロなのを思い出した。
アレキサンダーがぐりぐりと、心配そうに体を俺に押し付けてくるのを感じながら、打つ手無しだと気付く。
「リアルだったらどーにかなったものを……」
とにかくこの世界の植物をもっと学ばなければっ!
とか、思い立ったところでブッツリと、不意にテレビの電源を切ったように目の前が真っ暗になった。




