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123 組合に入会するの話

 「リアデイルの大地にて」好評らしいです。

 お買い上げいただいた方ありがとうございます!


 イビスに入るときにベウンはどうなのかと思ったが、使い魔は何も言われなかった。

 特に動いてなかったので、シラヒメの持っているぬいぐるみという扱いだったのかな。


 街の中に入ればさすがに俺のペットたちは人の目を引く。

 俺自身の認識がペットを連れているってことだしなあ。


 ただ、ベウンがシラヒメの背から降りて歩きだせば、プレイヤーの驚愕の視線が集中するのが分かる。

 ざわざわどよどよと彼らの驚きが波となって伝わってきた。


 ベウン自体が頭の大きい2.5頭身なので、動きがいちいちコミカルだ。

 両手を振って歩いている姿に、プレイヤーの女性たちから熱い視線がそそがれている。


 そのうち意を決して近寄ってきた騎士と魔術士の女性に声をかけられた。


「あ、あのう?」

「なにかな?」


 ツイナがぐるると喉を鳴らせば、こちらに近寄ってきた2人はびっくりして足を止める。

 シラヒメが「ツイナ、ダメ」と言ってライオン頭をぽんぽんと叩き、後ろへ下げさせた。

 代わりにぽよんぽよんと前に出てきたアレキサンダーが、ベウンに向けられた視線を遮る。


「その、クマのぬいぐるみは、何で動いているのですか?」


 なんかすごい言葉を選んでないか?

 発言内容によっては怒らせるとか思われてんのかね?


「これは使い魔だからだよ」

「「つ、使い魔ぁっ!?」」


 2人揃って目を丸くして驚いていた。まあ、珍しいだろうなあ。

 現在のプレイヤー状況がどーなってるか分からんので、どの程度のレアなのかも知らないが。


「それはもらえるクエストがあるんですか?」


 周囲でこっちを窺っているプレイヤーを見回していると、魔術士の女性が尋ねてきた。


「クエストかどうかは分からないな。こいつはある人から教えてもらい、俺が1から作ったものだ。ただその工程は口外していいものか俺では判断できない。これでいいか?」

「は、はい。ありがとうございました」


 ペコリと頭を下げた2人は足早に離れていく。

 その先には数人の女性の集団がいた。なんかのクランぽいなあ。

 俺から聞いたことを伝えたのか「キャー!」と騒いでいる。


 ベウンは目を離した隙に、よじよじとアレキサンダーの頭の上に登っていた。

 その姿を見て、周囲のギャラリーからは「ぐふぅ」とか「ぶはあ」とか言いながら、胸を押さえて崩れ落ちている奴らがいる。


 しかし街中を歩いてて分かるんだが、結構あちこちから【魔力感知】に反応するものがあるようだ。

 何かの結界ぽいのとか品物とか、とにかく色々と。


 プレイヤーで賑わう界隈を離れて住宅地に足を向ける。

 改めておばあさんの道具屋の前に立つと、びりびりとした強い魔力がよく分かる。

 【魔力視】に切り替えると魔力の流れは正面の入り口ではなく、家屋の側面に向かっている。

 あっちが魔女関係の出入り口のようだ。


 なんか人が1人通れる程度の隙間しかなさそうなので、アレキサンダーたちは店の前で待っててもらう。

 ベウンだけ連れてそちらを進むと、数m先の突き当たりに扉があった。

 扉にはノッカーがついていたので、2回叩く。すると「お入り」と声がして自動で扉が内側に開いた。


 室内は道具屋側よりも狭い店になっていた。

 壁際には乾燥させた植物が幾つかぶら下がり、俺が手を伸ばしてなんとか届く棚には瓶詰めの何かがずらりとならんでいる。

 正面のカウンターには紫色のローブを着たおばあさんが眉をひそめてこちらを凝視していた。


「こんにちは」

「やれやれ、アレが見習いを取ったと聞いた時は何かと思ったが、まさか異方人で最初のがアンタだったとはねえ」


 最初の挨拶には眉間を揉みながらの、愚痴のような返答だった。なんか酷くねえ?


「何はともあれ新しい魔女は100年ぶりさ。歓迎はするよ。ただ組合には所属しておくれよ」

「組合? 魔女の組合ですか?」

「それ以外に何があるのさ。安心しな、無茶ぶりなことは強要することはないよ。ただ魔女の間でレシピを共有したり、会合を開いたりする程度さ」

「はあ、それくらいなら」

「聞いているかもしれないが、私はイグサさ。この先も長い付き合いになりそうだから、よろしく頼むよ」

「ナナシです。よろしくお願いします。こっちは使い魔のベウン」


 足元にいたベウンをひょいと持ち上げる。

 俺の腕の中で両手を振り、深々と頭を下げるベウンにイグサさんの頬が緩む。


「またずいぶんと似合わない使い魔になったじゃないか?」

「アナイスさんに命じられるままに作ったらこうなったんですよ。俺のせいじゃありません」

「相変わらずあの子は可愛いものを人に押しつけるんだねえ。変わらないことさね」


 ふふふと笑うイグサさん。

 押しつけられたんかい。クマ趣味を……。まあいいけど。


 棚に並べられている瓶に目を向けていると「なにか買うかい?」と聞かれた。

 

「塗料はありますか?」

「なんだいその辺は聞いてなかったのかい。魔石を染料と砕いて溶かせば幾らでも作れるよ」

「なるほど、今度やってみます。でも今日は買います」


 1瓶2万もした。確かに自分で作った方が安いわな。

 金色と赤と青を買った。あと幾つかの簡単なレシピを教えてもらえた。


 後で時間があったらやってみよう。

 【魔力感知】はパッシブ。【魔力視】はアクティブです。

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