12 焼き肉の話
アサギリとはその後すぐ別れた。
情報料を払うと言ってきたが、どうせなら貴広の代わりに情報を掲示板に上げて貰うことにした。
「そんなんでいいのか?」
「掲示板は苦手なんで頼むわ。俺は道具屋の情報だけで充分だ」
冒険者ギルドの隣には軒先にまで品物が積み上げられていた。
これぞ解りやすい道具屋の姿と言えるだろう。
おばあさんのお店が悪いとは言わないが、あそこは軒先に並べても監視出来る店員は居ないだろうしな。
ざっと見るだけでポーション、ロープ、毛布、マント、肩掛け袋など。
何より目を引いたのは野営セットだ。
フライパンやら魔導コンロなるものが1セットになっていた。勿論即買いしましたとも。
あと肩掛け袋とロープとマント、包丁や容器を大小セットで買っておいた。
ちょっと実践してみようと思って市場で香辛料や油も買ってきたら、所持金がほぼゼロになってしまう。
「後で宿代分くらいは稼いでおくべきか」
まずは東の平原に出て、外壁沿いに移動する。
火を使うから門より離れないと門番の兵士に何を言われるか分からんしな。
周囲にタマラビやメンドゥリが歩き回る牧歌的な風景の中、料理道具を広げた。
鶏肉に関しては山鳥の肉とそう変わらんだろう。
昔は乾いた小枝や落ち葉に石とナイフをかち合わせて火をつけてたし。
岩塩探し出すまでただ単に焼いた肉や魚だけ食ってたし。
あれを思えば道具があるだけ遥かにマシな方だよな。
ほんと、何処行ったんだろうなあの山。
鶏肉はむね肉の固まりのようだった。包丁の背で叩いて柔らかくしてから、ひと口サイズに切る。
胡椒と塩を振ってよく揉み込み、フライパンに少量の油を敷いてから焼いてみた。
魔導コンロという代物は、燃料の代わりにMPを使うみたいだな。
今のところ俺にはMPを使うスキルもないし問題はないだろう。
焼いてるとそれなりに良い匂いが漂ってきた。アレキサンダーに至っては、早く食べさせろとばかりにぽよんぽよん跳ねている。
まんべんなく火が通ったのを確認し、ひとつを菜箸で摘まんでアレキサンダーの口の中へ放り込む。縦跳ねのぽよんぽよんが横揺れのぷるぷるになった。
「うまいか?」
と聞くと高速で頷いたので自分も食べてみたが、これはこれでイケるかもしれん。
「焼き鳥とはいかないが、初めて作ったにしてはこんなもんかなあ」
ほとんどはアレキサンダーが食べてしまったが、この先グルメになって調理したものしか受け付けないとかないだろうな?
「もっと食べたい」と主張するアレキサンダーにせがまれる形で次々に焼いていくことに。
途中、胡椒と塩の量を味をみながら変えていく。自分好みの味付けが判ったころになって鶏肉が尽きた。
「次はリンルフでも焼いてみるか?」
ぽよんぽよん跳ねて喜ぶアレキサンダー。だんだん喜怒哀楽が判ってきたような気がするな。
しかしこのサッカーボール大の体のいったい何処に肉は消えて行ったのだろうか? 謎だ。
気が付いたら平原にいたプレイヤー全員から恨めしそうな視線を向けられていた。
次々に姿が消えていったところをみると、飯でも食いに戻ったのだろう。




