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110 ダンジョンアタックの話


 やっておきたいことを思い付いたのがリアルの時だったんで、またヘーロンからイビスまで逆戻りだ。仕方がない。


 ツイナはライオン頭の上にアレキサンダーを乗せ、羽根をぱたぱたさせて浮遊。それを俺がロープで引っ張っている。一昔前のタイヤひき鍛練のようだ。

 スキルに飛行がないせいで、浮くのが精一杯らしい。レベルをあげてやらねば。


 グリースはシラヒメの背に糸で固定されている。振り落とされないためだ。グリースが走るよりシラヒメの方が速いからなあ。

 そして俺とカーボが走っている。スキルの恩恵か、カーボの方が少し速い。


「なんっで、スキルの、ない、ナナシ、にいちゃん、が、こんなに、速い、っす、か!」

「肉体能力がそのまま反映されてるみたいでな。ステータスだけなら、たぶん誇れるだろーよ」

「むきーっ! 息切れ、起こしてない、のが、ムカツクっす!」

「無駄な動作が多いんだよ。いらない部分を少しずつ削れ」

「走りながら、っすかあ!?」

「走りながらじゃないと悪いところが分からないだろーが」

「鬼っすー!」

「ログアウトしたら、そっちでも確認するようだなあ」

「スパルタっすー!」


 泣きごとを並べたてるカーボを追い立てて、街道を爆走する。

 すれ違うプレイヤーが目を丸くしていたけど、掲示板が賑わったりしないだろうな。

 ただ走ってるだけだし、ないよな?


 ほぼそのままの勢いでダンジョン前の列にたどり着いた。

 ものすごく注目をあびてしまったがもう気にならないな。

 感覚が麻痺したというのはこういうことなんだろう。


 ダンジョン1階のコボルトはシラヒメが網で絡めとり、カーボにトドメを任せる。

 カーボが装備していたのが店売りの青銅の短剣だったので、俺がさくっとコボルトを1匹倒してドロップした鉄の短剣を渡しておいた。

 ロッククロウラーはグリースの視線で防御力を下げ、アレキサンダーの体当たりかツイナのライオンパンチで倒させる。


「ナナシにいちゃん」

「なんだ?」

「これ作業みたいで酷くないっすか?」

「カーボのレベル上げが目的だからな」


 まごうことなくただの流れ作業である。

 地下1階のゾンビはその見た目でカーボが真っ青になったので、確認してみたら残酷描写30%解放にしているそうだ。

 お前それここ(ゲーム)で爬虫類に出会ったら、アレルギーでるんじゃね?

 面倒だったのでアレキサンダーの火炎放射とツイナの火魔法で火ダルマ。

 俺の土魔法で串刺しの上、金属バットで吹き飛ばしていく。


 そして地下2階はほぼ素通りである。

 相変わらずグリーンスライムは大量になついてくるし、途中に現れたカエルは勝手に倒してくれる。

 目が点になったカーボを連れて、ノー戦闘、ドロップ品がっぽりという有り様だ。


「俺、ナナシにいちゃんのビギナーさん伝説ってただの誇張かと思ってたっすけど」

 なんだよその伝説って……。

「これは非常識っていわないっすか?」

「キニシタラマケデス」

「ぴいっ!」


 シラヒメとグリースがそれに答えるのが、納得いかんのだが。

 ペットにも非常識だと思われてんのかねえ。


 地下3階に着いてからカーボを解放する。


「よしここなら走りまわっても大丈夫だぞ」

「牛ぃっすっ!?」


 階段を降りたところで待ち構えていたレッドカウ2匹に追いたてられ、カーボは一目散に逃げていく。

 ぶもー!

 角を震わせてカーボを追おうとしたレッドカウは、俺とツイナが使ったアースポットの穴に前足をハマらせ、勢い余って転がっていった。


「逃げなくても……」

 大丈夫だぞと振り返ったら、逃げてった先で別のレッドカウに追いたてられるカーボがいた。

 慌てすぎだろう。


 あいつ、後ろにいるものが何なのか確認してないんだろうな。

 ちょっとよく観察すれば、一直線に突進してくるだけなのが分かるだろうに。

 しかし、これだけ離れてもPTとしてくくられているのか。面白いな。


「し、死ぬかと思ったっす……」

「逃げ回るのいいけど、他のPTに迷惑かけんなよ」

「ハハハ、面目ないっす」


 最初に遭ったレッドカウを始末してから、姿の見えなくなったカーボを探していたら10頭くらいを引き連れていた。

 それだけならまだしも、危うくトレイン状態で他のPTがいるところに突っ込むところだったぞ。

 あぶねーあぶねー。


 ついマジになってソイツらの前でレッドカウの首を飛ばしちまったぜ。

 震えあがっていたけど、PVPみたいに残酷描写が表面化してないよな?


「いや、ナナシにいちゃんが蹴りで首切りをやったからだと思うっすよ」

「そうか? 破撃使えばあんなもん簡単に真っ二つになるだろう」

「そんなん使えるのナナシにいちゃんだけっすから!」

「みど……アルヘナも使えるんだがなあ」

「その情報知りたくなかったっす」


 赤牛の相手もそこそこに地下4階へ移動する。

 ここで出現する相手は剣とか弓とかを使うスケルトンだ。

 アンデッドのスケルトンではなく、魔法生物なのだという。

 端的にいうと殴れば通じるというので俺的には問題ないな。


「さて骨のある相手だといいんだが」

「スケルトンだけにっすね!」

「……」


「ごめんなさいっす」 


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