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11 絡まれた話


 意固地になった感じでぽよんぽよんと先へ進むアレキサンダーを捕まえて頭に乗せる。


 今日は習熟度が途中になってるスキルを得るまでを目標にするべー。と思いつつ、ふと気付いた。


「そういやーまだ貴広とは会ってないな」


 初日は戦闘中で断られたしなあ。

 人をゲームに誘っといて会いに来ないとはなんて奴だ。不馴れな初心者を何だと思ってるんだ、アイツはまったく。


 「おい!」


 次にリアルで会ったら文句言ってやろう。鍛練に付き合わせるのもいいかもしれんな。


 「ちょっと待ってくれ!」


 ああ、そうだ。

 【解体】の効果を確認しなけりゃならないんだったな。タマラビとオンドゥリを倒したら、何かドロップ品は変わるんだろうかなあ。


 「そこのビギナーのニイさんよ!」


 誰か追い掛けて来てると思ったんだが、やっぱり俺を呼んでいたのか。

 振り返ると金属鎧に身を固めたおっさんが、膝に両手を当てて息を切らしていた。


「運動不足か?」

「ニイさんが歩くのがはえーんだよ!」


 赤毛でアゴヒゲまで生やし、鉢金を装備した鎧姿のおっさんだった。

 はて、こんなおっさんに呼び止められる心当たりは無いんだがなあ。


「ちょっと聞きたいことがあるんだが、時間いいか?」

「聞きたいこと? 初心者の俺にはおっさんのプレイを手助けするようなことは出来んぞ」


「おっさんに設定したのは自分なんだが、ニイさんに言われるとなんか傷付くなあ……」


 頭をかきつつたそがれるおっさん。何か聞きたいんじゃなかったのか?


「俺が聞きたいのはニイさんの頭に乗ってる奴のことだ」

「アレキサンダーのことか? 俺でも話せることは多くないぞ」


「分かる範囲で構わんよ。情報料も払う。俺たち(プレイヤー)は情報に飢えてんだ」

「それならば構わないが。情報料がこんなので取れるのか。呆れた世界だな」

「あっはっはっは! その呆れた世界で遊んでる奴がなに言ってんだ」


 ばっしばっしと背中を叩きながらおっさんは大笑い。まあ、こういうノリの人間は嫌いじゃないが。




 おっさんは俺を冒険者ギルド併設の酒場へ案内し、無料で借りられる個室を取った。


「よし、ここはプライベートスペースだからどんなヤバい話をしても大丈夫だぞ!」

「なんだよヤバい話って……」


 酒と飲み物とつまみがテーブルの上に並ぶ。

 どっかりと椅子に座ったおっさんがビールジョッキを向けてくるので、ジュースの入ったグラスをカチンと触れさせる。

 ちなみに20歳未満がゲーム内でアルコール類を飲むと、味は水としか感じられないそうだ。


「まずは自己紹介からだな。俺はアサギリだ。クラン、インフィニティ・ハートで前衛をやってる」

「ナナシだ。このゲーム滞在7時間程度のぺーぺーだな」


「たったそれだけでそんなもん引き当てたのか」

「そんなもんだなんて知らなかったんだからしょうがないだろう。クランってことはβからの古株か?」


 翠から聞いた話だが、βからクランを引き継ぎ出来るそうだ。しかし、登録料はもう一度払わなければならないとか。 


「よく知ってるなー」

「身内が聞いてもいないのに色々教えてくれるんでな」


 アサギリが頼んでくれたツマミやらオードブルやらを口に入れる。美味いなー。


「アレキサンダーも食うか?」


 テーブルの上に乗り移ったアレキサンダーに鳥肉っぽい唐揚げを近付けると、パクッと食い付いた。

 体内に取り込まれた唐揚げが徐々に小さくなっていく。


「そいつの名前ってナナシが付けたのか?」

「いや。住民によって付けられてたから、そのまま使ってるな」 

「ほー」


 アサギリが感心したようにアレキサンダーをまじまじと見詰める。


「スライムだよな?」

「種族はレッドスライムというらしいぞ」


「ほほう。βでも聞いたことの無いモンスターだな……。どうやって手に入れたか聞いてもいいか?」


 うーん。話すのはいいがどこまで話したものか。

 アランのことまでは言わなくていいな。アイツにプレイヤーが突撃したりしたら迷惑だろう。


「詳しくは言えないから大まかに言うが、住民がアレキサンダーを匿っていた。育ち過ぎて困っていたからこちらで世話を引き受けた。そしたらワールドアナウンスが鳴り響いたという訳だ」

「そりゃ災難だったな」

「笑い事じゃねえよ。超ビックリしたんだかんな」


 はははーと笑いながら言われても。当事者にしてみれば大慌てだよ。今なら笑い事で済むけどなあ……。

 あ、さっきのおばあさんの情報も言っといた方がいいな。


「ああ、さっき別の住民から聞いたんだが、俺が接触しなかったら討伐依頼が出ていた可能性があったらしい」

「何だって?」

「たぶん他に同じようなテイム待ちモンスターがいたとして、放置しておくと冒険者ギルドに討伐依頼が並ぶんじゃないか?」


 アサギリの顔色がサーッと青くなる。

 うん、欲しい奴からすると非常に緊急事態な話だよな。


「ちょっ、ちょっと待ってくれ! こりゃプレイヤーで大掛かりな街探しをしねえとならなくなるぞ!」

「するのはいいが、住民に迷惑掛けるなって書いといてくれ」


 手元にウィンドウを出して大急ぎで書き込み始めたアサギリに忠告はしておく。


「何人かと話をしてみたが、ちゃんと礼節をもって接すれば色々教えてくれる。そうしなければ討伐云々(うんぬん)の情報は得られなかったからな。逆に失礼な態度をみせればあっさり嫌われるぞ」


 「何で?」って顔で不思議そうな顔のアサギリだったが、俺の言い分にニカッと笑ってサムズアップを返してきた。


「リアルと同じようにしろってことだろ。百も承知だ。まあ、中にはマナーの悪い奴はいるからなあ。VRには命題だよな、それ」


 書き込みを終えると、アサギリは額を拭う仕草で晴れやかな表情だ。

 おっさんだが。間に合ったことになるのかね、それは。


「ふう。それでそいつのステータスとかは聞けるか?」

「話せるが分からん事が多すぎる」

「なんだそりゃ?」


 首を傾げるアサギリにレベルもスキルも見えないことは伝えておく。

 ほんとこの先、別にクエストが必要なのかレベルが足りないだけなのか。前例がないらしいから参考に出来なくて困ってんだよな。


「ふーむ。その辺も検証板行きかもしれんな」

「掲示板はほとんど見ないんだが。ああ、アサギリさんよ」

「呼び捨てでいいぞ。ついでにフレンド登録しておこうぜ」


「おや、ありがたい」

 これでフレンド3人目だな。すくねー。内1人は身内だしな。


「それで聞きたいことってなんだ?」

「肉が売れる所を知りたいんだが」


「そんなの冒険者ギルドでいいんじゃないか。肉収集の依頼もあったはずだぞ」


 そうねー。冒険者であればねー。それで解決しないから聞いてるんだよ。


「俺、希望職がなかったからギルド登録してないんだよな。だからさっきアサギリが呼び止めた通りビギナーのまま」


 正直に答えてやったら吹き出しやがった。

 はいはい奇人変人視線には慣れてますよ。


「たぶんプレイヤー露店に肉は売れないと思うぞ。ただでさえ供給過多だしな今。昨日に空腹度の実施について発表があったが、まともに料理持ってる奴も今は少ないしなあ」


 料理屋はいないのか。


 出来ればやったかもしれんが料理には詳しくないからなあ、俺は。

 後々になってリアルでの料理経験有る無しなんぞ関係ないと知りました。


「ギルドの隣にある道具屋も色々売れた筈だが、行ってみたらどうだ?」

「んー。そうしてみるわ。最悪は焼いて食ってみればいいか」


 残飯処理みたいで悪いがアレキサンダーも食ってくれるよ。きっと。

 視線を向けたらこくこくと頷いてくれたので、料理をする時は試食に付き合って貰おう。



 進行が遅い……。ちょっと各職業についての比較設定をば。


☆戦士

 物理攻撃系戦闘スキル取得に必要なSP:少なめ

 魔法系スキル取得に必要なSP:3倍

 その他(技巧、生産系等)のスキル取得に必要なSP:2倍


☆盗賊

 片手剣系統+技巧系スキル取得に必要なSP:少なめ

 魔法系スキル取得に必要なSP:3倍

 その他のスキル取得に必要なSP:2倍


☆魔術士

 魔法系スキル取得に必要なSP:少なめ

 近接戦闘系スキル取得に必要なSP:3倍

 その他のスキル取得に必要なSP:2倍


☆神官

 魔法系スキル取得に必要なSP:少なめ

 打撃系武器と生産系スキル取得に必要なSP:2倍

 その他のスキル取得に必要なSP:3倍


☆ビギナー

 全てのスキル取得に必要なSP:3倍

 反復行動による習熟訓練でスキルを得やすい


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