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105 4匹目の誕生の話


 ゲーム内で一泊し、その翌日である。


 だいたいリアル1日がゲーム内日数5日ぶんくらいに相当する。

 日常と学業に時間を取られるぶん、俺がゲーム内に居られるのは最大で2日と半日くらいだろう。

 貴広や翠は3~4日いるみたいだけど。あいつらホントにゲーム脳死しないだろうな?


 昨日のダンジョン地下3階は赤牛相手に、エトワールと暴れまわった。

 しかし聞いてた通り本当にレッドカウという赤牛しかいやしねえ。

 鼻息荒く角を振りかざして突撃して来るんだけど、アースポットで手前に穴を開けてやれば、どいつもこいつも簡単に引っかかること引っかかること。

 つんのめって顔面で着地。勢い余って半回転しながらすっ飛ぶという。

 ひっくり返ってもがいているから、トドメを刺すのが楽だったな。

 おかげで大量の牛肉を手に入れられて満足だ。今度ローストビーフとか作ろう。


 ビギナーのレベルも上がったし、戦闘スキルもそれなりに上昇した。


 あと赤牛からセキシャの棍というヌンチャクが出た。

 ダメージ的にはリングベアの籠手より低いが、多段ヒットで稼ぐものらしいのでなかなか面白そうだ。


 これはエトワールから買い取る形で俺が手に入れることとなった。

 値段はあちらの言い値にしたんだけど、お金より食料がいいと言う要望だった。


 ダンジョン後に商業ギルドの生産部屋で各自が手に入れた肉を焼いて焼いて焼きまくったな。

 そのせいもあって【料理】スキルがランクアップして【料理長】になった。

 材料が倍以上に必要になるが、工程が1回で済む大量生産という技を修得したので、途中から格段に効率化されたのがよかった。

 ただし、1つ1つ作らないとHQ(ハイクオリティ)品は出来上がらないようだ。


 そして昨日もやったが卵に魔力注入をする最終回である。

 1回目は【死霊術】で入れて8分の1。

 アナイスさんが【雷魔法】ぽくて8分の4。

 道具屋のおばあさんがどうも【火魔法】っぽくて8分の1。

 昨日は【土魔法】を込めたので総合計が8分の7である。

 

 インベントリから卵を取り出すと、アレキサンダー並みに膨れ上がった卵が出現する。

 これは昨日MPを譲渡したら、みるみる大きくなってしまったものだ。


 そして最後のMP譲渡は【水魔法】で実行する。

 グリースの時と同じく縦方向にヒビが入り、殻が左右に割れて中身が誕生する。


「ってなんじゃこりゃ?」

「ぴいっ!」

「コレハ……」

 ぽよん。


 宿屋のベッドの上で孵していたので、アレキサンダーたちもその回りで見守っていたんだ。

 現れた生き物に全員の目が点になる。


「がう」「メエ」


 そいつは胴体と顔がライオンで、肩口くらいの背中にあるのが山羊の頭。

 そんでもってその山羊の首辺りから生えているのは、コウモリみたいな皮膜の羽根だ。皮膜部分はやや赤いが。


 ステータスを表示させると、種族がキマイラLv.5とある。

 スキルに並んでいるのが【雷魔法】【死霊術】【火魔法】【土魔法】【水魔法】【かみつき】と、とんでもない。

 最初から持っている魔法系のスキル多すぎだろう。うちの中で主力みたいなのに魔法使いとかよく分からんなあ。

 これからしてこのキマイラって、アレキサンダーのエルダーレッドスライムと同じく最初からランクアップした状態のモンスターか?


 名前を設定してくださいというウィンドウがキマイラの頭上でくるくるまわっているので、まずはこれか。ええと……。


「キマイラにキマイラって付けたらダメだよなあ……」


 ぼそっと呟いたらアレキサンダーに体当たりをくらい、グリースからはガスガスと突かれた。

 シラヒメからは「オトウサマ。ソレハカワイソウデス」と懇願された。

 悪いと思ってるからグリースはもう突くのやめてー!?


 ライオンの顔をよく見ると動物図鑑のビューで見るような、キリッとした顔付きじゃないな。

 限り無く似せて作ったぬいぐるみのような愛嬌がある。

 山羊の方も同様で、なんとなく眠そうなトロンとした目つきだ。


 両方の頭を撫でてやると「ぐるる」「メエェ」と気持ち良さそうにしている。

 えーと頭2つ、鳴く、動物……。うーむむむむ。


「よし。お前の名前はツイナだ!」

「がう!」「メエッ!」


 名前を設定するところが1ヶ所しかねえから、頭2つまとめてでいいんだよな?

 名付けと同時に体格が少し膨らんで、大型犬並みにでかくなった。

 うちにいる守護者(ガードドッグ)のポイポイよりは小さい感じか。


 早速アレキサンダーたちがツイナに群がる。ベッドから下りて床におすわりをしたツイナを囲んで、左右から体を擦り付けるアレキサンダーとグリース。

 シラヒメは正面からライオンと山羊の頭を撫でていた。

 ツイナも嫌がったりしてないので、兄弟として受け入れられたみたいだな。


 そしてたぶん、この群れを率いる俺が悪目立ちするパターン。もう諦めたがな。


 まずは自由に門を出入りするために、冒険者ギルドで従魔証の発行をしてもらう。

 ギルドに辿り着くまでの道中がザワザワドヨドヨだ。


 パカッと口を開けて固まるプレイヤーがいれば、なんかガクッと膝をついて項垂れるプレイヤーもいる。

 数人かたまってこちらをチラチラ見ながらヒソヒソと会話をするPTの一団とか。

 俺の方に1歩足を踏み出したとたんに、謎の同じ制服を着込んだ集団にさらわれるプレイヤーもいる。

 

 冒険者ギルドの受付で従魔証の申請をして、発行を待つために一旦離れた所で受付嬢の人から声をかけられた。


「あのー。職種の変更なしでギルドに登録ができるようになったんですけれど。登録しませんか?」

「なん、だと……」


 受付嬢の顔が「そうでしょう、お得になったんですよ、さあさあ」というような感じでニヤリと得意気になったんだけどね。


「だが断る!」

「えっ!?」

「冒険者ギルドに登録しなくてもお金は稼げますから。これでも商業ギルドDランクなんですよ」


 外野で「おーすげえ」と感嘆する人とか「マジで!? 昇進早すぎじゃね」という人たちの声が聞こえて来る。野次馬うるせえ。


「ギルド併設の酒場でしたら割り引きが利きますけど。ペットの食費とか大変じゃないですか?」

「【料理】のスキルを使えばいいし、この子たちも自分の食いぶちくらい狩れます」


「や、薬草採取の依頼を受けてくださればポーションを格安で……」

「ポーションくらい自分で作れます」


「ぎ、ギルドのランクを上げれば武器や防具を買うときに割り引き」

「モンスター倒せば落とすんで間に合ってます」


「…………」

 受付嬢さんがうちひしがれてるのと、同時にギルド内もしーんとしちゃったんだが。

 プレイヤーらしき人たちよ。俺に「こいつ信じらんねえ」みたいな絶望した表情を向けないでくれないかな。


 そのあとは無事に従魔証が発行されたので、ギルドから去りましたよ。

 ええ、ほかに用事ないんで。

 キマイラの容姿が違うとかのツッコミはなしでお願いします。

 しっぽ蛇はグリースとかぶりそうなのでオミットしました。

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― 新着の感想 ―
冒険者ギルドの受付はシークレットエリアなのでは? 小さい事を気にしてすみません。
[良い点] ラストのだが断る~の流れ好きだなぁ
[気になる点] ① >うちにいる守護者のポイポイよりは小さい感じか。 ポイのフルネームは今話と初出(#42)時の2回ですが、初出時は「ポイボイ」となってます。 正しいのはどちら? 普通は初出が基準だ…
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