01 プロローグは企画会議から
色々とやり残しが多いですが、新連載です。
のんびり更新していきますので、よろしくお願い致します。
「それではー! 企画会議をー! 始めたいとー! 思いまーす!」
そう声を張り上げるも、100人は入れる会議室に人はほんの僅かしかいない。
上座に座る小学生くらいの少女の他に、20代くらいな女性4人、男性1人とおっさん1人の計7人である。
「椿うるさい」
「しょっ、しょーがないじゃない! 一介の付き人に司会進行役なんて役割を割り振るさくっ……ネッツアー、……さんがいけないんでしょー!!」
「総帥の秘書なんて誰もが羨ましがるポジションだと思うんだけどなあ」
「つ・き・び・と! なんだからね! 秘書なんて柄じゃないし……」
少女の斜め後ろに控える椿と呼ばれた女性が涙目で項垂れた。
しかし少女の抗議がこもったジト目が、会議テーブルの左側に立つネッツアーと呼ばれた女性に向かう。
「うっ……」
「…………」
「わっかりました! ごめんなさい椿!」
「えっ? う、うん!」
2人のちょっとしたいさかいは何時ものことだ。
片方が謝ってあっさり和解した様子に少女は深く頷いた。
「のっけからぐだぐだじゃのう……」
「まったく、乳繰りあうのでしたらホテルかなんかでやってくれ」
向かって右側に並ぶおっさんと男性が、溜め息まじりに愚痴をこぼす。ネッツアーとカップル扱いを受けた椿は、顔を真っ赤にしてうつ向いている。
いい加減進まない会議に手を叩いて皆の話を打ち切り、ロングヘアーの女性が呆れ顔で腰に手を当てた。
「それで!」
「お、おう」
「企画自体は役員会を通っている。予算に関しては充分な量を確保済み。今はスタッフを海外支部まで回してかき集めている最中だな」
「そりゃ表向きだろ。あたしたちが集められたのは裏側の事情。違うんかいティー?」
「ゲヴラー、紅茶みたいな呼び方は止めてちょうだい。言っても聞かないんでしょうけど」
「解ってるよティー」
「…………ハァ」
「対抗してゲ、って呼んだら良いんじゃないかな」
「やめてくれよネッツアー。なんかあたしが毛虫みたいじゃん」
「「…………ハァ」」
「3人共、御前だってのを忘れがちだねえ」
「総帥が何も仰らないからのう」
呼び方に付いてぎゃいぎゃい姦しい側を見ながら、男性は肩をすくめる。
「ホド、お主の嫁じゃろ。なんとかせい」
「ホクマー。女性たちの歓談の中に割り込むっていうのはね、冥府に落とされるような罪なんだよ」
「冥府にお主のような者が落ちてきたら迷惑千万じゃろうなあ」
「お互い様じゃあないかい?」
男性陣側も脱線してしまった時だった。コンコンという小さくない音が少女側から響いたのは。
慌てて5人の男女が起立して姿勢を正す。
少女の無言無表情はそのままだが、瞳には非難の色が見てとれる。男女5人が示し会わせたように頭を下げる中、少女は椿を促して会議室を後にした。
椿だけはすまなさそうな表情で皆に一礼してから少女の後を追う。
「怒られちゃったねえ」
「無言なだけまだましじゃな」
緊張から解放されたホドとホクマーが頷けば、女性たちも苦虫を噛み潰した顔で肩を落とした。
「さっさと話を進めましょう」
「「サンセー」」
「んじゃ、ゲーム名は?」
「だから、企画が通っただけじゃと言ったろうが!」
「まあ、VR系の溢れかえった世界って今更感あるのよねえ」
「ノウハウが他の企業より遅れてる分もあるのでしょう。テストプレイを多めに取らなければならないわね」
「βテスター多くすればいーじゃん」
「その辺どーなってんの、ホクマー?」
「まずフィールド設定からじゃな」
ホクマーの後にティーが手を上げ、皆の視線が集中する。
「一応電脳内に総帥が星を1つ丸ごと生成することになっているわ」
「待って、ホスコンどんだけ必要なのそれ?」
「大きさや広さなんて私たちには考える必要はないでしょう」
「そりゃそうだがよー」
「それより此処に居るあなたたちにはその星のそれぞれの神役を担当してもらいたいの」
「はぁっ?!」
すっとんきょうな声を上げたのはネッツアーだけで、他の者は平然としていた。
「あたしゃーホドやネッツアーと被らないかい?」
「貴女に思慮深い役は端から期待してないわ。戦神かなんかでいいでしょ」
「「……」」
「2人共なんだいその目はァー!」
「横道に逸れるのはその辺にしとくがよい。これ以上はお叱りを喰らうじゃろ」
「「はいよー」」
「ぐぅぅ、後で覚えておきなよ2人共」
「それじゃあ自分は鍛冶の神とかにしとくか」
「んじゃ、私は旅の神とか自由の神とか」
「我は法の神であるか」
「そしたら私が美の神とかになるじゃないの……。面倒ねえ」
「旅と法と鍛冶と戦と美かい? えらい片寄ったねえ。ここに居るだけじゃ足りないんじゃないかい?」
「後で他の面々にも声を掛けるわよ。総帥が星を造ったらNPCたちを圧縮生成させるわ。あなたたちの出番はそれからよ」
「はいよー」
「おう!」
「了解した」
「へーい」
それぞれの性格がでるおざなりな返事に、ティーはやれやれと溜め息をもらす。
「ところでこの中二病みたいな呼称は何時まで続くのかね?」
「これに関しての会議には全部よ!」
「で、あるか」
「あいよー」
「「ええええぇ━━━っ?!?!」」
2名の抗議は多数決で封殺されたようである。