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短編集 冬花火

ぬいぐるみ

作者: 春風 月葉

 独りぼっちの夜、決まって眠れなくなる僕のために、父さんと母さんが君を連れてきた。

 それからというもの、僕はいつも君といた。

 兄弟のいない僕にとって、君は弟のような存在だった。

 しかし、幸せな時間は終わりを迎えた。

 二人が離婚し、僕は母さんの方についていくことになった時、父さんが一人で寂しくないようにと、君を手渡した。


 あれから十年が経ち、私も社会人になる頃。

 母が亡くなった。

 原因は過労、離婚後に再婚をせず女手ひとつで私を育て、限界だったのだと思う。


 母の葬儀で父を見かけたが、彼はあからさまに周りから浮いていて、あちらも私を見つけたのか、何かを言おうとしかけ、その口を閉じてその場を去った。

 また両親が離れてしまうようで胸が痛かったが、あの頃と何も変わらず、私は無力だった。


 その年の盆、母の墓を訪れた。

 墓は綺麗に手入れされていて、その横には見覚えのあるボロボロのクマのぬいぐるみがちょこんと置いてあった。

 私は花の水を変え、母に手を合わせて祈った。


 一人で寂しくないように…。

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― 新着の感想 ―
[良い点] Twitterからきました! 短い中で伝わる想いがあって、 すごいなぁと思いました! [一言] これからも頑張ってください! 応援しています!
2017/09/24 22:31 退会済み
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