アスカのゆめ こおりそら 幕間
「アスカさん、アスカさん」
ゆっくりと静かに声をかけられて、アスカはぼんやりと目をあけた。頭が鈍く痛む。寝起きが悪い原因に気持ちだけ、ため息をついた。
「良かった。今日は目が覚めましたね」
視線を声の主に合わせる。優しそうな、柔らかな色がイメージの女性だ。彼女は、ずっと前からアスカを世話してくれている、姉のような存在だ。それなのに彼女は敬語は抜けなくて、アスカとしては少し寂しい。
「体を拭いたら、御飯ですよ。少しでいいですから、口に入れましょう」
そういって布団をゆっくりどける彼女に、されるがままに身を任せる。慣れたものだ。体を拭き、ついでに服も変えて、心なしかすっきりした。重たい腕を動かして、ベッドのリモコンを探る。よし、見つけた。機械がゆっくりとアスカの体を押し上げる。彼女は、うれしそうな悲しそうな、複雑な表情でアスカを見守っていた。アスカはもう慣れて、この状態に何も思わないのに、彼女はいつも心を動かしてくれる。だから、彼女が好きなのだ。
「今日のご飯は――」
彼女が用意してくれるご飯を、今日は少しでも多く食べられたらいいな。アスカはここ数年無い、前向きな自分の心の動きに、自分自身でも明るい感動を覚えた。