こおりそら2
サックサックと、雪の上を移動する。やはり、すれ違い様に挨拶をするが、皆、何処か投げやりで言い捨てるようだった。アスカも似たようなものだ。しかし、お互いに諫めもしないし、やめるわけでもない。それは仕方がないことなのだ。
一面の白い世界は、そうしているうちに、わずかな濃い緑を見せ始めた。背の低い、垣根のような、小さな木の群生地帯に入ったのだ。アスカは足を止めた。目の前には、見上げても頂上が見えない、鈍色の塔があった。
--間に合った
アスカは呟くと、立ったままだらりと力を抜いた。その直後に、目をつむったような暗闇になった。これが始まりの合図だ。
どこからともなく、踊りだしたくなるような音楽が鳴り始める。すると、アスカが動こうと思ったわけでもないのに、体が勝手に動きだした。確かめるように、こっちへ3歩、あっちへ3歩。そうして、納得したようにうんうん、と頷く。
そして、さぁっと、視界が明るくなった。
甲高いファンファーレ。歌うような大きな音。いつの間にか、音楽は変わり、何かを彩るような控えめなものになっている。何よりも目立つのは、歪んでいてよく見えないが、アスカを見つめる、大きな「何か達」だ。何かはわからないが、こちらをじぃっと、興味深げに見ていることは、よく伝わってくる。