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肆 遭遇

飯食ってニーナを手伝い飯食ってニーナを手伝い飯食って寝る生活をしていたら数日経っていた。

被害を受けた場所もそれなりに復興してきたようで、ジョセフから職業斡旋所...いわゆるハローワークが再開したと知らされた。

まあ住む場所もあるし食事も出てくるし服も必要数は支給されていたので働きかけ必要は無いっちゃ無いが、何かやることを見つけないとあまりにも暇なのだ。

既に昇りきった太陽に照らされながら以前貰った地図を見ながら目的地を目指す。

その途中、鈴のような音がした。





やっと着いた。

俺の目指す場所は住宅地の中に存在していた。

向かいには人家、左右にも人家、ポツンとこれだけが取り残されているようだ。

まあ大方住人の居なくなった家でも買い取ったのだろう。

さて、就活頑張りますか。





「あんた確か露出してて捕まった人でしょ?他のとこ行ってくれるかな」


異世界の就職事情は余りに厳しかった。

事情を説明しようにも聞く耳持たずで放り出されてしまった。

しかもその場面を人に見られてしまった。

俺が放り出されるのを待っていたかのように一人斡旋所の前に立っていた。

まあ他に人がいなさそうなのでこいつに見られただけでまだ良かった------



「おや、若いの苦労しとる様子じゃのう」

「はい?」


なんだこいつ。

老人のような言葉を使っているが明らかに若い男だ。からかわれてるのだろうか。まあ格好は日本の修行僧みたいな感じで、そこだけなら老人と言えなくもない。

------いや待て待て、ここは異世界だ。俺の常識で考えてはいけない。



「あー、何の用でしょうか?」


何とか納得してみたもののやはり不審なものは不審だ。

無理矢理不自然な笑顔を作って対応してみる。



「フォッフォッ、そう警戒するな若いの」

「はぁ...」

「お主転生者じゃろ?」

「...」

「見る人が見ればわかるもんじゃよ、さて用の方じゃが...」

「お主に仕事を与えてやろう、暇しとるようじゃしええじゃろ?」


なんだこの爺さん...いやお兄さん?

とにかく変人と言わざるをえない。

頭が痛い。人間本当に困ると本当に頭痛がするんだな。


「だからそう警戒するでないわ」

「ほれ、着いてくるが良い」

「それはいいんだが、老人の真似なんてして何の真似だ?こっちではそういうのが有るのか?」



まあ仕事が貰えるなら今のところはなんだって良い。

内容を見てから断ったりしたっていいだろう。

こいつはまあ信用出来ないって訳じゃ------

いや、何を考えている。

100%信用出来ないじゃないか。



「ふむ、中途半端にきいていたか」

「ならふざけるのここまでだ」

「?一体何を---」


その瞬間、男のに手に錫杖が現れた。

鈴のような音を出しながら振りかぶられたそれは俺の体に深く沈みこむ。

俺は数m吹き飛ばされ、窓から向かいの家に派手に突っ込んだ。


「---っ!何を...」


文句を言う前に突っ込んだ家が妙なことに気づく。

窓を突き破りいきなり客人が現れたというのに反応一つ無い。

妙と言えば表も妙だ。

---なぜ昼なのに人が一人もいないんだ?



いや、それはいい。

体はそれほど痛まなかった。幸いにもガラスは余り刺さらなかったようだ。

とにかく表の奴に反撃だ。

勢い良く窓から飛び出し奴と対峙する。



「おや、中々丈夫じゃないか」

「テメェ...」


殺す。殺してやる。

右手が熱い。

全身に力がみなぎる。

目は空気中の塵すら見極め、耳は周りの音を余さず拾う。

拾った音は一切無かったが大して気にならない。



「まだまだか、言うならフェイズ1ってとこだな」

「何訳わからないことを---」



体を深く沈める。


「言ってやがる----!!!!!!」


全力で奴に走りよる。

そのまま奴に蹴りを放つ。


「まだまだ甘いな」

「...」


蹴りは錫杖に阻まれ届かない。

なら次だ。

顔目掛けて左の拳を振り下ろす。

また阻まれる。なら次は右に---

その時、また音がした。



瞬時に視界が回転した。

投げられたのか?いや、オレは立って---


「グッ---------!?」


奴の拳は瞬時に俺の鳩尾を殴り抜いていた。

とてつもない激痛が走る。呼吸が出来ない。

駄目だ、意識が------




「...少々こちらが急いてしまったようだな」

「こちらはこれ以上する気はないのでな------ガハッ!?」

「馬鹿が、油断したな」


オレの右腕が奴の心臓を貫き消し飛ばしていた。

気絶するまでの間に奴を殺せばいい。

単純な話だ。

が---


「中々やるが---」

「生憎その程度では死なんのでな、ではさらばだ」


奴は胸に空いた穴を気にすることもなく去っていった。

一体奴は何者なのか。

その疑問を抱きながら俺の意識は薄くなっていった。

周りがにわかに騒がしくなり始めた気がした。

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