壱 開幕逮捕
初投稿です
更新ペースは週2回くらいに頑張ります
俺は龍谷桐也。
とある会社に就職しさあ頑張ろうと意気込んでいた、特に特徴の無い人間だった。
しかし俺は出勤途中、急に現れた穴みたいなものに飲み込まれてしまった。
滝が上に流れていったり、sfに出てくるようなハイテクな町といった変な所を次々と移動させられたり、変な龍に変な問答をされたりして、気がついたら...
異世界に来ていた。
そして、捕縛された。
---アルタイル王国 国護騎士団本部
「名前はリュウタニ・キリヤ、と外見的特徴は男、やや筋肉質、右手に鱗の用な刺青あり、と。おい、戸籍帳調べとけよ」
どうしてこうなった。
異世界に来たと思ったら俺は全裸で町中に放り出されていた。
勿論即警備隊に逮捕され、髭を生やしたいかにもthe・おっさんみたいなおっさんによく判らん取り調べを受けている。
それに---よく判らんと言えば、この鱗だ。
あいつは刺青なんて言ってやがるが、これは間違いなく本物の鱗だ。
大きさは手の甲の半分といったところか。強度は俺の知るそれとは比較にならないほど固い。ほぼ鋼鉄といって良いほどだ。
いったい何がどうなって---
「隊長殿、出ました!該当者無しであります」
「するってぇと俺らの管轄ではないらしいな 至急連絡しろ」
「了解!」
「お前さんはこっちだ」
と、奴さんは既に手錠をされている俺にさらに二重三重に手錠をかけてきやがった。しかも足にも。
「あのー、これは...?」
「何かされては堪らんからな。下手に外そうとするなよ、その瞬間内部から仕込み刃が飛び出て貴様の手足が落ちる」
...怖っ。とりあえず大人しくしておこう。
そういや、なんでこいつの言葉が判るんだろう。明らかに日本語とは違う言語じゃないか。それに違和感無くこの世界に馴染んでるけど空気の味も違うし、空の色もちょっと薄かった。
...何で不思議に思わなかったんだろう。
とかしばらく考えているとおっさんと交替で何人か鎧を身につけた男達、あえて言うなら騎士だろうか、が入ってきた。全員がその指に青い石の指輪を着けているのが印象的であった。
騎士たちの隊長であろう、薄い金髪の若い青年が俺に向かって声をかける。
「リュウタニ・キリヤさんですね。自分が何故ここに来たかはご存じで?」
「......判らない。気がついたらここにいた。」
「以前の世界では何を。」
「しがない会社員」
「...我々を攻撃しようと思いますか」
「...この拘束を解除してくれればそんなことしない。」
何故か男達から安心したような雰囲気が広がる。
男は一呼吸おき、
「あなたが嘘をついておらず、我々に敵対する者では無いと判明しました。あなたの生活は我々が保証しましょう。どうかご安心を。」と矢継ぎ早に話してきた。
突然のことに混乱せざるをえない。
「えっと、ちょっと待ってくれ、えーと、」
「私の名前はジョセフと申します。答えられる範囲でしたら、なんなりとご質問を承りましょう。」
「そうか。じゃあジョセフさん、何故俺がこの世界の出身では無いと?」
「そうですね、あなたの身体的特徴及び名前がこの付近の住民のものと一致しなかったので。あぁ、これは私がやったことではありませんが。」
「俺が嘘をついていないっていうのは?」
「あなたが今はめている手錠の一つ、そうその赤いやつです。それは人の血流の変化や心拍数、その他諸々を関知する鉱石で出来ています。」
「つまり、嘘発見機と。俺があんたを攻撃するって答えたらどうするつもりだったんだ。」
「即座に首を落とすつもりでした。転生者と言えど、所詮は人間ですから。」
今までの嫌になるくらいの丁寧さはそのままだが、随分とおっかないことを言う。答える時の眼には気絶しかねない殺気があり、実際この男ならやりかねない、と思わされた。
おっと、一番大事なことを聞くのを忘れてた。
「俺のこれからはどうなるんだ?生活を保証って?」
「それに完璧に答えるには大分時間が要ります。申し訳ありませんが我々もこれから大事を控えており忙しい身ですので、要点だけお話しましょう。」
ジョセフが話したのは以下のようなことだった。
・この世界では転生者と呼ばれる存在がいきなり、どこからも現れること
・その転生者は人の形をしていることもあればそうでないこともあり、大半が非常に攻撃的な生活をもつこと
・そうでない転生者であっても特殊な力を持つことが多いためトラブルを避けるために各王国の騎士団が保護していること
・少なくとも自由に出歩けるまでは一年弱ほど審査や申請に時間がいること
それを話終わるとジョセフは俺に紙を渡し、「あとは担当の物が来ますのでそちらにお聞きください もし何かあったら此方までお越しください。」と言い残し男達と共に去っていった。
廊下からは男達が「まさかこれが要らないなんてな」「あの男は何か違う」と話す声が聞こえてきた。
何か引っ掛かる言い方だったが、余り気にしないことにした。
紙にはこの町の住所らしきものが書いてあった。
5分もするとまた新しい人がやってきた。
素朴な美人といった感じの人でようやく心が安らいだ気がした。
ニーナと名乗ったその女性は
俺の手錠と足枷を外してくれた。
それから俺は彼女に案内されるままに建物の中を歩き回った。
「すごいな」
意図せずポツリと独り言を漏らしてしまった。
「え?」彼女が反応した。
「あ、いや、俺がいた世界とも全くひけをとらないなぁって、思いまして」
「そうなんですか、リュウタニさんの世界も中々やるんですね」
なんて、悪戯っぽく笑われて返された。
...彼女に言った理由は嘘でもないが、本当に俺が感心したのはそんな理由ではなく「思ったより進歩するのが早いな」というこの地に始めて来た人間には変ともいえる理由だった。
しばらく歩くと俺は自分の部屋だと言われ、10階建ての宿舎の一番上の部屋に通された。
部屋がどんなものか一言で表すなら学生寮のそれだ。
ベッドも二つあるが、先住民はいないらしい。
「それではこちらを。」と言われニーナから何冊か本を渡される。
「これは?」
「この世界のことが書かれた本です。本来ならこちらの中身を口頭で説明させていただくのですが...」
口頭?そんなもん要らないよ。読めるし。【世界の成り立ち】【食生活について】【文化について】【政治について】【転生者のススメ】【アルタイル王国地図】【ゼロから始める異世界生活】か...
いや最後のは不味いだろう。
先に謝ります。ごめんなさい。
「あぁ、自分でも読める。大丈夫だ」
「そうですか、それでは夕食の方は後程お運びいたしますね」
結論として本はあまり役に立たなかった。
どうもこの世界は元の世界と似通っているんだろうか、感覚的にこの世界がどんなもんかは判る。
食生活については大いに度肝を抜かれたが。まさかあいつらカタツムリ生で食うようになってるとは思わなかった。オエ。
夕食に出なかったのは幸いとしよう。
風呂は部屋に備え付けだったが、今日一日で何か奇妙な気分だったこともあり入る気にはなれなかった。
寝ようとして横になると考えるのはこれからどうしようということで元の世界のことは不思議と気にかからなかった。
そういえばジョセフが転生者は特殊な力を持つことが多いと言っていたが、俺には有るのだろうか。有ったとしてどんな能力なのだろうか。
そんなことを考えながら眠りについた。
俺が轟音で叩き起こされるのは、それから1時間もかからない内の出来事だった。




