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裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ企画進行中】  作者: 葉月二三
裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

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逃げてるだけなのです




合計6体のキャタックラーの虐殺を終え、今日の探索は終わりとなった。


まだ夕日が顔を出している時間ではあったが、昨日と同じくダンジョン前で解散になる流れみたいだな。


「今日1日で予定以上に点数を稼げた。これなら明日の昼には終わるかもしれない。」


「みんな凄いよね。私はあんまり役に立ててないのにこんなに早く終わるなんて。」


「私も解体のお手伝いしか出来ませんでした。」


リスミナとローウィンスが申し訳なさそうな顔をしているが、役に立ててないってことはないだろ。

そんなんいったら解体を一切してない俺も申し訳ない気がしてくるじゃねぇか。パーティーなんだから役割分担があるのはおかしいことじゃねぇはずだ。


「そんなことないよ。解体だって大変な仕事なんだし、そんなに悲観する必要はないよ。」


スミノフのいう通り、適材適所ってだけだろ。

リスミナたちが何もしてないっていったら、スミノフだってフォローのために気を使うという面倒な役割をやらされていたのに、結果だけ見たらほとんど何もしてないことになっちまうしな。


「テキーラが敵を見つけるのが早いというのが一番の理由ではあるけど、全員が解体を出来るから、そこで無駄に時間を取られなかったというのも早く終わった理由の1つ。だから、スミノフのいう通り、悲観する必要はない。そのためのパーティーなのだから。」


「うん、そうだね。明日も解体頑張るよ!」


「明日もよろしくお願いします。」


話に区切りがついたところで解散となった。


素材に関しては明日まとめて提出することになり、デュセスとスミノフはまた最寄りの村に向かっていった。


リスミナとはラフィリアの近くで別れ、カンノ村まで一緒だったローウィンスとは屋敷の前で別れた。


飯の前にシャワーでも浴びようかと思ってサラとも玄関で別れようかと思ったら、サラが何かをいいたそうな顔をした。

サラはさっきまで静かだったから、話し足りないのか?


「どうした?」


「……リキ様の気持ちはわかるのです!みんなは何も思わないかもしれないけど、自分も苦手だからわかるのです。でも…。」


いきなりどうした!?


「何の話をしてるんだ?」


「魔物相手でも、抵抗できない相手を必要以上に痛めつけなければならないのは嫌な気分になるのです。でも、キャタックラーの分泌液は薬になるのです。だから…必要なことなのです……。」


俺がさっきキャタックラーの虐殺を不快に思ってたことに対しての話か。

いいたいことはイマイチわからないが、慰めようとしてくれてんだろうな。


この世界で生きるなら邪魔な感情かもしれないが、サラにはそのまま育ってほしいもんだな。まぁ、この村の環境じゃ難しいかもしれねぇけど。


サラに近づき、頭に手を置いて軽く撫でた。


「ありがとな。サラは優しいな。」


「そんなこと…ないのです……。」


俺の言葉選びが悪かったのか、俯いて否定されちまった。慰めようとしてくれたことに対する素直な気持ちをそのまま伝えたつもりだったんだがな。


違う言葉を考えながら、とりあえずサラの頭を撫でていたが、こういうときにかけるべき言葉が全く思い浮かばなかったから諦めようとしたところで、サラが顔を上げた。


「本当は出来るようにならなければいけないのはわかっているのです。でも、リキ様も同じ気持ちだと知って安心してしまったのです。だから優しさなんかじゃないのです。逃げてるだけなのです。…ごめんなさいなのです。」


そんなこといわなきゃわからないのに、真面目というか、素直だよな。それがサラのいいところなんだろうけど。


「べつにいいんだよ、嫌なものは嫌と思ったままで。もちろん嫌だろうとやらなきゃならねぇこともあるけど、子どもが無理に感情を押し殺す必要はねぇよ。つっても、戦闘を強制してる俺がいえたことじゃねぇけどな。」


自分でいってて矛盾具合に失笑しそうになったが、一応本心でもある。

嫌でもやらなきゃならないことはあるが、嫌いなものを好きになれってわけじゃねぇからな。

まぁ、大人になれば感情を押し殺して演じる必要があるときもあるとは思うが、さすがにサラにはまだ早いだろ。


「でも、アリアさんは出来ているのです。」


あぁ…そりゃあアリアを基準に考えたら、劣等感が半端ないことになるだろ。アリアははっきりいって普通じゃない。もちろん悪い意味じゃねぇ。


俺も子どもの頃はわりと出来のいい部類だったと思っているが、アリアと比べたら鼻で笑われるレベルだろう。

昔の俺もサラも子どもにしてはかなり優秀というだけだが、アリアは本当に子どもなのかと疑問に思うほどに優秀だからな。ライバル視して努力するのはいいけど、比べて自分が劣ってると思うのはちょっと違うだろ。


はっきりいって今のサラもアリア程ではないにしても異常なまでに優秀なんだから、1つ2つ苦手なことがあっても問題ないと思うけどな。


「アリアを目標にするのはいいことだが、サラがアリアになる必要はねぇよ。苦手なことを克服するのも立派だと思うが、子どものうちは好きなことをより伸ばす努力をした方がいいぞ。」


あれも嫌これも嫌とかいいだしたら、ふざけんなって思うだろうけど、サラは他のことを頑張っているんだし、まだ6歳なのに感情まで殺す必要はねぇだろと思ったんだが、サラはあまり納得いかないのか返事に迷ってるみたいだ。


「サラは魔物を殺せないわけじゃねぇだろ。ただ嫌な気持ちになるだけなら、誰にも迷惑をかけねぇんだから、気にする必要はねぇよ。感情ってのは一度殺すと取り戻せなくなっちまうかもしれないから、大事にしといた方がいいぞ。それでも変わりたいって思うなら、自分の思うように頑張ってみるのもいいと思うけどな。」


俺はサラにはいい子のまま育ってほしいと思っているが、それを無理強いするつもりはないからな。本人の好きなように頑張ればいい。


「…ありがとうなのです。」


最後にサラの頭をくしゃくしゃっとしてシャワーに向かおうかと思ったら、サラに腕を掴まれた。

さすがに頭の撫で方が雑すぎたか?


「リキ様。4日後、空けといてもらいたいのです。」


「4日後?最後の授業が終わった次の日ってことか?」


「そうなのです。リキ様は明日で授業が終わってしまうかもしれないので少し待ってもらうことになってしまいますが、テキーラさんとして参加してほしいのです。」


これが前にローウィンスがいってたやつか?

てっきりアリアから誘われるのかと思ったんだが、サラから誘われるのは予想外だったな。それとも別の件か?

まぁ予定なんて早いもん勝ちだから、ローウィンスやアリアに確認を取るつもりはないけどな。


「わかった。なんか手伝うことはあるか?」


「大丈夫なのです。準備は全て終わったのです。リキ様は見ていてくれるだけでいいのです。自分を信じて最後まで見ていてくれたら嬉しいのです。」


ん?これはむしろ手を出すなって念押しされてるのか?


「何をやるつもりだ?」


「釘をさすのです。」


サラは意味がわからないことをいいながら、1枚の紙を差し出してきた。


紙には名前だと思う文字などが書いてあった。何かのリストか?


上から順に見ていくとスミノフの名前があった。

スミノフの名前の横にはアラフミナ・ヤイザウ侯爵と書かれ、その横に×印がつけてある。


教会マークにクロスさせたガントレットを使ってるから、てっきり×印はこの世界には存在しないのかと思っていたが、普通に使われてんだな。それとも意味が違うのか?

いや、この世界には昔から日本人勇者がいるんだし、勘違いするような記号が使われ続ける可能性は低いだろうから、多少の意味の違いはあってもそこまで変わらないだろう。


ってことは、サラはスミノフのことが実は嫌いなのか?


そうかそうか。

サラがスミノフに本気で惚れてるなら邪魔しないようにしなきゃななんて思っていたが、そもそもサラにその気はなかったのか。

スミノフどんまい。


口もとがにやけちまったところで、サラが俺を見ていることに気づいた。


いや、リストを見ながらニヤついてるとかヤバいやつだろ。


誤魔化すようにリストの先を目で追ったが、他に知ってる名前はデュセスくらいだな。

デュセスの横にはカテヒムロと書いてあって、○印が書かれているから、名前の横のが所属で、その横の印が友好度みたいなもので間違いなさそうだな。1人所属のところに道化師連合って書かれてるやつにも○がついてるしな。

たぶんこれは4日後に集める予定のリストってところか。というか、道化師連合のやつも学校に来てやがんのかよ。まぁ、サラが把握してるならいいか。


他にも所属が冒険者ギルドやアラフミナの貴族や他国になってるやつがいるが、マークがついてるのは2人だけで、他はなんのマークもついていない。


冒険者ギルドとクルムナが△か。


他が全員△ならどっちつかず的な意味かと思えるんだが、マークなしがあるのに△ってのはどういう意味なんだろうな。


まぁ、ほとんどが知らないやつらだから、敵じゃないならどうでもいいんだけどな。

俺がなんかやらなきゃならないなら知っておかなきゃだが、サラがやることを見ているだけなら覚える必要もないだろ。

ヘタに聞いて覚えてほしいとかいわれたら面倒だしな。


「サラの好きにすればいい。」


「ありがとうなのです!」


俺がリストを返したら、なぜか元気よくお礼をいわれた。

もしかして俺に何かをチェックしてほしくて見せたとかなのか?

やべぇな、そこまでちゃんと見てなかった。


「それはアリアにも見せたのか?」


「アリアさんには見せてないのです。でも、4日後の集まりには来てもらうのです。そのときに失敗するのが少し怖かったから、ズルしてリキ様に見てもらおうとしてしまったのです。でも、自分に自信をもってやってみようと思うのです。何もいわないでくれてありがとうなのです。」


そういう意味のお礼だったのか。それなら良かった。


子どものうちは失敗して覚えていけばいいんだから、好きにやればいい。アリアがその場にいるなら、失敗してもどうにかしてくれんだろ。最悪俺が拳で解決してやるしな。


「楽しみにしとくよ。」


最後に一言かけてからサラと別れ、ついでにイーラとテンコも離れるように命令してからシャワー室に向かった。




そういやけっきょく何をするのかちゃんと聞かなかったな。


たしか「釘をさす」っていってたよな?だが、何に対してだ?


もしかして、スミノフに対して「興味がないから色目を使うな」とハッキリいう的なことか?それはそれで面白そうではあるが、その場合はスミノフ以外を集める意味がわからない。

全員ロリコンか?


いや、あのリストの中にはデュセスもいたから違うだろう。


…まぁ考えてもわかりそうにねぇし、今さら聞きに戻るのも面倒だからいいか。どうせ当日わかるんだし。

もしかしたら知らない方が楽しめるかも知れないしな。


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― 新着の感想 ―
[一言] ◯:釘を刺す(やんわり) △:釘を刺す(しっかり) ×:釘を刺す(物理) 無印:信者 かな?
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