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裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ企画進行中】  作者: 葉月二三
裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

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殺す気満々の作戦




6人でかるく話し合った結果、スミノフとクレハが2人でセリナもしくはヴェルを攻撃し、俺とデュセスとモヒートは少し距離をおいて、セリナなら逃げれないように、ヴェルなら前衛2人のフォローをするために周囲を囲み、アドニスが高火力の魔法でトドメを刺す作戦だ。

殺す気満々の作戦だが、セリナとヴェルなら大丈夫だろう。


実際、初めてパーティーを組むうえに、セリナとヴェルの戦い方を全員が知っているわけではないから、細かく戦い方を決められない。一応戦闘方法を決めはしたが、臨機応変に対応ということにしてある。


スミノフは基礎の授業では槍を習っていたのに、今はククリナイフの二刀流だ。ククリナイフなんて漫画やアニメ以外で使ってるやつを初めて見たわ。


最初はスミノフ1人で前衛をするようなことをいっていたが、どう考えても無理だろうから、クレハとの2人にさせた。クレハはレイピアを使うようで、クレハの速度でセリナやヴェルに対応し、スミノフが隙を突くって流れになればいいんだが、厳しいだろうな。


セリナが相手だった場合は槍使いのモヒートと俺が魔導師のアドニスを護りながら、セリナが前衛2人から逃げるのを阻止する役で、デュセスが俺らとは反対側の広範囲をフォローって感じだ。


ヴェルの場合はアドニスの護りはなしで3人とも積極的に前衛のフォローに入る予定だ。


「そろそろ始めるよ〜。それじゃあ、そこのパーティーが私とで、そっちのパーティーがヴェルちゃんとね。」


どうやら俺らはセリナとらしい。


絶対セリナは俺だとわかってて選びやがったな。まぁ早くこのパーティーメンバーの動きとかを知りたかったからありがたいけど。


というか、スミノフがめっちゃ殺る気満々といった目をセリナに向けているんだが…たしかにさっきのセリナの煽りは、自信があるやつからしたらムカつくだろうけどな。まぁずっと手を抜いて本気を見せなかったスミノフの本気が見れそうだから、ちょうどいいか。


サラに見合う男かを見定めてやるよ。


…間違ってスミノフを切らないように気をつけねぇとな。


「いつでもいいよ〜。」


俺らが空いているスペースまで移動したところで、セリナが間の抜けたような声をかけてきた。

それに最初に反応したのはクレハだ。クレハが高速でセリナに迫るのに一拍遅れてスミノフとデュセスが攻めていった。

アドニスは詠唱を始め、俺とモヒートはアドニスから離れ過ぎず、セリナに対応出来るくらいの位置までゆっくりと動いた。


クレハが高速移動の流れのままセリナに突きを放つが、金属の棒すら使わずにヒラリと躱された。そのままセリナの後ろに回ったクレハが連続で切りかかるが、棒に受け流されたり、かるく体を捻って躱されたりで全く当てられていない。クレハは限界速度を出すために呼吸すらせずに連撃をしているにもかかわらず、ニコニコしているセリナに簡単に躱されているように見える。実際セリナがどう思っているかはわからないが、本気で攻めてるのにニコニコされたら半端なくイラつくだろうな。


そろそろクレハの無呼吸の限界だろうというところでスミノフが参戦した。やっぱりスミノフはかなりの技能があるようだ。クレハの攻撃に合わせてかなりいやらしい攻め方というか、避けづらいところを攻めてやがる。しかも動きもけっこう速い。ただ、セリナはそれ以上の速度で動けるようで、クレハの斬撃を体をズラして避けながら、スミノフのククリナイフを棒で綺麗に受け流してやがる。受け流しが綺麗すぎるせいか、ほとんど音が聞こえねぇ。


というか、セリナはまた速度が上がってねぇか?もしかして前に俺とやったときは加減してたとかか?いや、たぶん俺が遊んでいる間に努力してたんだろうな。…べつに俺はただ遊んでるわけじゃねぇけど。


クレハが限界を迎えたようで退がろうとしたところにセリナが攻めた。それにクレハが無理に対応しようとしたが、その前にデュセスが間に入って交代した。

臨機応変にって話だったが、今の入れ替わりは上手いな。


デュセスはクレハよりわずかに速度が落ちるようだが、短剣の二刀流が上手いから、手数自体は多い。それなのにセリナは笑顔を絶やさないせいで、スミノフとデュセスの殺気のような威圧感がここまで伝わってくる。

一撃も与えられないから相当イラついてんだろうな。


「俺らも攻めるか?」


俺が戦闘風景を他人事のように眺めていたら、モヒートが声をかけてきた。


「いや、俺たちはここから動かない方がいいと思うよ。たぶん俺たちが参戦しに行った瞬間にセリナ先生はアドニスを狙いに来ると思うからね。」


「マジかよ…。俺には速すぎてあいつらの動きがよく見えねぇんだけど、あんな攻撃を受けながらまだ後衛を狙えるほどの余力があるとか、『歩く災厄』の戦闘奴隷が化け物だってのは本当なんだな。子どもだと侮って痛い目を見るところだった。」


モヒートが苦笑いをしているが、否定は出来ねぇな。モヒートくらいの実力のやつからしたら、アリアたちの半分以上が化け物に見えるだろう。


クレハが再参戦して3対1になろうとしたところで、セリナの目つきが変わった気がした。

攻勢に出る気っぽいな。


「ごめん。俺は前に出るから、アドニスの護りは頼んだ。アドニスは詠唱終わり次第、俺ごと撃ってくれ。」


俺がさっきは動かない方がいいとかいったくせに攻めに転じたからか、モヒートが何かをいおうとしてきたが、無視してセリナに向かった。


俺の予想は的中したようで、クレハが近づききる前にスミノフのククリナイフを受け流したセリナがスミノフの足をすくい上げてバランスを崩させ、その流れのままデュセスの短剣を体をのけぞらせるように躱しながら、いつのまにか棒を手放していた左手でデュセスの手首を掴んで引きつつ、右手の棒をデュセスの鳩尾に突き入れた。

デュセスは全身タイプの革鎧を着てはいたが、それでも棒がわずかにめり込んだのが見えた。

セリナはデュセスの手首を掴んだまま体をひねり、デュセスの鳩尾にめり込ませた棒を突き上げるようにしてデュセスを持ち上げ、足を払われて宙に浮いているスミノフに向かって一本背負いのようにデュセスを叩きつけた。


デュセスを叩きつけた姿勢のセリナの背中にレイピアを突き刺そうと、クレハが高速で近づいたが、セリナは投げ終わった姿勢から地を這うような動きで振り返りつつクレハに迫った。そのため、距離が一瞬で縮まり、突きの間合いから外されたクレハが斬撃へと変えようとしたところで、それよりも速かったセリナの棒がクレハの脇腹にめり込み、クレハも戦闘不能になった。


思ったよりも3人がやられるのが早かったせいで、まだセリナとの距離があったから、セリナはやろうと思えば俺を避けてアドニスを狙いに行けたはずだ。それなのにセリナは落とした棒を拾い上げ、俺にまっすぐ向かってきやがった。


セリナが突き出した棒を体を捻って躱しつつ、剣で胴切りをするが、急停止からのサイドステップで避けられた。あの速度で急停止出来る意味がわからねぇ。

セリナの予想外の動きのせいで剣が流れそうになったのを力ずくで止め、攻めてきたセリナの棒を避け、2本目を剣から離した右手のガントレットで受け流し、左手1本で剣を振る。

それをセリナが棒で流れを誘導するかのように受け流しやがったせいで、体が持っていかれそうになった。しかもセリナのもう1つの棒が迫ってきてやがる。

仕方ねぇから剣を手放し、体勢を整えつつ棒を左手のガントレットで受け流し、その流れのまま右フックをセリナの脇腹に当てようとしたら紙一重で躱された。


『エクスプロージョン』


どうやら魔法の詠唱がやっと終わったようだ。


「イーラ、俺を護れ。」


「は〜い。」


念のため息を止めて目を瞑って防御体勢を取りつつ、吹っ飛ばされないために『壁』スキルを使った。

吹っ飛ばされない分衝撃をもろに受けるが、俺はイーラを信じてる。だからマジで頼む。


目の前で大爆発が起きるが、強風をもろに受ける程度の衝撃しか感じず、痛くも熱くもない。被害らしい被害といえば、目を閉じててもけっこう眩しいと思ったくらいだな。


光がおさまったからと目を開けると、セリナがデュセスとクレハとスミノフを回収したうえで、かなり遠くまで逃げていた。


3人のことをすっかり忘れていた。というより、魔法の威力がここまでとは思ってなかったから気にしてなかったという方が正しいか。


セリナが3人を持ったまま歩いて近づいて戻ってきてるってことはこれで俺らの番は終わりってことだろうな。

なら吹っ飛ばした剣を回収しに行こう。


「イーラ、ありがとな。」


「う〜…体がだいぶ減った……。」


剣を拾いに歩きながらイーラにお礼をいうと、予想と違う返事がきた。


体が減る?

今ので蒸発したってことか?

龍の鱗を使えるイーラがダメージを受けるってことはそれほどの威力の魔法だったってことか?…もしかして、俺が『壁』のスキルを使って無駄にその場で耐えようとしたからか?だとしたらすまん。


「悪い。大丈夫なのか?」


「また魔物とか人間を食べれば大丈夫!だから、いっぱい敵がいるところに連れてって!」


今回は俺が無理をさせたせいもあるから仕方ねぇな。それにセリナがあんな強くなってんのに俺も負けてらんねぇから、レベル上げやら強い敵との戦闘訓練やらをしなきゃだし、ちょうどいい。


「あぁ、学校の冒険者課程が全部終わったらな。」


「やった!約束だよ!」


念話を終えて剣を拾い、鞘に収めたところでセリナが戻ってきた。そんで持ってた3人をぺいって投げてきたが、俺のところまで届きそうになかったからキャッチしなかった。


「その防具ずるいよ!革じゃにゃいじゃん!」


地面に投げ捨てられた3人を避けながら近づいてきたセリナが文句をいってきた。


「いや、そんな決まりはね…かったと思うんですが。」


セリナが普通に話しかけてくるから、普通に返しそうになっちまった。


というか、この防具の見た目はたしかに革だが、実際はイーラだ。セリナなら最初からわかってるのかと思ったけど、気づいてなかったみたいだな。もしくはイーラだとはわかっていたけど、普通の革にしてると思っていたとか?

どっちにしろ防具の決まりなんてないはずだ。


「そうだけど…剣の練習をするっていってたのに殴ろうとしたじゃん!」


「剣がすっぽ抜けちゃったんで仕方なくですよ。それより、まだ授業中ですよ。」


「うっ…。」


一応近づいてきてそこまで大きな声での文句ではなかったが、それでも聞こえるやつには聞こえるというのに、周りの状況を把握できてないなんてセリナにしては珍しいな。


「…じゃあまた少し時間をとるから、今の戦闘を見たうえでパーティー同士で話し合ってね。」


セリナは誤魔化すためか、俺から目をそらして笑顔を作りながら、何事もなかったのように全員に声をかけ、俺から離れていった。

倒れている3人は俺に任せたようだな。


スミノフは自力で回復したみたいで立ち上がったが、あと2人はどうすりゃいいんだ?俺は『ハイヒール』を使っていいのか?


いや、イーラに頼めば詠唱も何もないから誰が魔法を使ったかわからんだろうし、セリナがやったことにすればいいか。


「イーラ、あの2人に『ハイヒール』をかけてやってくれ。」


「は〜い。」


イーラが返事をしたあと、デュセスとクレハが淡い光に包まれた。


「今、イーラに『ハイヒール』を使わせたが、もしなんか聞かれたらセリナがやったことにしといてくれ。」


念話でセリナに伝えると、振り向いたセリナがコクリと頷いた。


べつに俺は元魔導師といっちまってるから、『ハイヒール』を使えるのがバレるのは構わないんだが、授業中に『ヒール』の詠唱省略ですら手こずっていたのを見られているのに無詠唱で使うわけにはいかないだろうからな。


まぁバレたらバレたでいいけど、とりあえずは隠す方向でいくつもりだ。


イーラの回復魔法のおかげで全員立ち上がって俺らのところに歩いて戻ってくるが、3人とも微妙な表情をしている。そりゃ3人がかりで傷1つつけられなかったんだからな。悔しいというか虚しいというか悲しいというか、微妙な気持ちになるのはわからなくない。


とりあえず反省会だな。


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