表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ企画進行中】  作者: 葉月二三
裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/377

ムカデ


カマキリがいた場所の後ろの壁に観察眼が反応した。

隠し通路もしくは隠し部屋かと思って触ってみるが通り抜けられそうになかった。


どういうことだ?



鑑定を使ってみる。



『結界』



またか。

嫌な記憶がフラッシュバックしたが、気にするのはやめよう。


どうしようか考えているとアリアとセリナがきた。


「ここに結界があるらしいんだが、何かわかるか?」


「…そういった話は聞いたことがないです。」


「壁の向こうは危険な気配があります。それもとても歪です。」


気配ときたか。

やっぱり獣人は野生の勘でも持ってるのかもな。

でもアリアが知らないとなると誰にも知られてないのか、最近誰かが作ったのか…考えてても仕方がないか。


鑑定の力を強める。


『一部の空間を切り取るために作られた結界』


さらに強めると頭痛の予兆的なものを感じた。まだいける。


『魔法による結界。蠱毒の実験場。結界を設置され60日経過。』


さらに強めると頭痛が始まった。

これでわからなければ諦めないとヤバい。


『解除方法:一定以上の衝撃を与える。もしくは壁に埋められた3ヶ所の魔法陣の破壊。』



周りを見ると魔法陣の位置を鑑定が見つけてくれた。

鑑定を解除すると頭痛が治まった。

鑑定は便利だが、あまり使いたくねぇな。



「結界の解除方法がわかった。俺は入ろうと思ってるが、セリナは危険という。アリアはどう思う?」


「…このダンジョンの地下7階レベルであれば、仮にフロアボスだったとしてもリキ様なら勝てます。問題ありません。」


「フロアボス?」


「…新しいダンジョンの場合、稀に下り階段の近くの部屋の中にフロアボスがいるそうです。フロアボスはその階の魔物より倍近く強い場合があり、そのボスを倒すと次の階に行けるそうです。」


確かに下り階段の近くではあるな。


「でもここって既に地下30階までは攻略されてんだろ?だったらフロアボスがいるのはおかしくないか?一度倒しても復活するのか?」


「…はい。稀に普通の魔物のように元フロアボスとしていた魔物が生まれる場合があるらしいです。ですが、一度開けた部屋や結界が自然に再度閉まることはありません。」


まぁ魔法による結界となっていたから自然発生したわけじゃないだろう。

おそらく人為的なものだ。


それにアリアがいいたいのはこのフロアの魔物の倍くらいの強さなら問題ないってことだろ。


ってか蠱毒って何かで聞いたことがある気がするんだが、思い出せないな。


まぁいいか。

さっきのカマキリの倍くらいの強さならなんとかなるだろ。


念のため剣はアイテムボックスにしまい、毒消し丸と抗麻痺丸をアリアとセリナに10個ずつ渡す。


「中がどうなっているかがわからないから、念のため抗麻痺丸は飲んでおけ。毒消し丸はすぐに噛めるように口に含んでおけ。わかったか?」


「はい。」


「…はい。」


2人が抗麻痺丸を飲んで毒消し丸を口に含んだことを確認して、俺も抗麻痺丸を飲み、毒消し丸を口に含む。


そして、短剣を腰から引き抜き3ヶ所の魔法陣を全て破壊した。


壁が薄くなっていき、なくなった先にはけっこう広い空洞があった。


中は他と同じくぼんやりと明るいから普通に見える。



全長10メートルくらいありそうなムカデのような魔物がケツだけで直径5メートルくらいありそうな蜘蛛っぽい魔物の頭を食べていた。


気持ち悪すぎて回れ右をしたかったが、それ以上にムカデの強さに目が離せなかった。


こいつはこの前のミノタウルスより強い。

俺もけっこうレベルが上がったが、ステータスアップの支援魔法を使っていない今の俺と互角かそれ以上だろう。


逃げようとしたら俺以外は殺されるかもな。


やるしかなさそうだ。


短剣を腰に戻して、ムカデに近づく。


俺らに気づいたムカデは食事をやめた。


「にげ…我はなぜ……ここは………だ。」


喋った?


アリアをチラッと見ると顔が青くなっていた。

この反応はやっぱりヤバいってことか?

すぐに魔物に視線を戻して、魔物の動きに注意をはらう。


「こいつは喋ってるが、魔物じゃなくて魔族か?」


「…魔族になりかけです。早く倒さなければ危険です。」


「この国の法律や暗黙のルールがわからないが、魔族を殺してもいいのか?」


「…はい。魔族は人間の敵なので問題ないです。でも、魔族は普通の冒険者では勝てないと本に書いてありました。なりかけの魔族についてはわかりませんが、完全な魔族に昇格してしまうとわたしとセリナさんは足手まといにしかならないと思います。」


「魔族ってそんなに強いのか?」


「…はい。種族として見るなら、人族では魔法・物理ともに劣るそうです。さらに人族と変わらない知能もあるため、普通の冒険者では一対一で勝つことはまず無理だといわれています。奴隷屋で話に上がった200年前の悪魔も魔族です。」


「ケモーナ王国の8割もの民を虐殺したっていう悪魔がか!?」


「…違います。ケモーナ王国の8割の土地を破壊したのに1人も殺さずに2割の土地に押し込めた悪魔です。」


「人を殺してないのに虐殺以上の悪魔的な行いだな…。」


それじゃあ食料も足りなくなるだろうし、寝るところもない。


日本なら野宿も可能だろうが、あんな魔物が出るところに一般人が野宿なんてできるわけがない。


そのうち自殺か餓死か無謀な魔物狩りか人間同士での奪い合いになるのだろう。


考えたくもねぇな。


でもただの破壊なら凄い魔法が使えればできなくなさそうだが、破壊はするが人を1人も殺さないなんて芸当ができるレベルっていったら、人族が束になったって勝てるのか?ってくらいじゃねぇか。それが1人の魔族の行いみたいだからな。


まさに化け物だ。


「…その悪魔の強さは例外ですが、魔物が魔族に昇格すると大幅に強くなるそうです。なので、その前に倒すべきです。」


説明しながらも、どんどん恐怖が増しているのか顔が真っ青で体も小刻みに震えている。

セリナも似たような感じだな。

イーラは意外と冷静だ。いや、気絶してる。


イーラを掴んでセリナに放る。


「2人はイーラを連れて入り口まで下がれ。アリアはできる限りの支援魔法と状況を見ての回復魔法だけ頼む。セリナは俺の戦闘を見ておけ。参考になるかはわからないが、多少は勉強になるだろう。だから下手に横槍はいれるなよ?わかったか?」


「…リキ様。」


「わかったか?」


「「…はい。」」


無駄にダズルアトラクトでMPを消費しないですみそうだ。

アリアの魔法頼みになりそうだからな。


アリアがありったけの支援魔法をかけてきた。


聞いたことない気がするのまで唱えてるから、また新しいスキルを得たのだろう。


2人が入り口まで下がったのを確認して、さらにムカデに近づく。

近づくと余計にデカく感じるな。


「待っててくれてありがとよ。」


なぜかはわからないが、こちらが準備を終えるまで待っていてくれた。

強者の余裕ってやつか?でも俺の観察眼が正しければ、魔法がかかってる今の俺の方が強いはずだ。

冷静に対処すれば勝てるはずだ。


「アクマ…ケモーナ…レイガイ…ギャクサツ…ショウカク…マゾク…アリガトヨ…。」


俺らの話を聞いて言葉の勉強でもしてたのか?

なら、油断している今のうちに倒す。


一歩踏み込むと、駿足の加護はないはずなのに思った以上のスピードがでた。


支援魔法もりもりなおかげで一歩で接近した。


ガントレットの間合いだと、ムカデっていうより壁だな。


先制攻撃として、本気の一撃を叩き込んだ。


「なっ!?」


メチャクチャ硬いぞこの体。

ヒビどころか凹みすらしねぇ。


まだブツブツと言葉を発していて、俺の攻撃を気にしてすらいないようだ。


短剣を引き抜き斬りつける。


ガキッと金属同士がぶつかる鈍い音がした。

嘘だろ?拳も刃物もダメとか一気に攻撃手段がなくなった。



魔法か?でも攻撃に使えそうな魔法はなくはないが…試してみるか。



『フレアバウンド』


火力だけをマックスで放つ。

虫なんだから火に弱いだろうという浅はかな考えはまずかった。


「ギシャーーーーーーーッ!」


体が硬くても熱は通じるみたいで、暴れだした。


10メートルの巨体が暴れたせいで、食いかけのデカ蜘蛛が吹っ飛ばされて壁にぶつかる。

俺はなんとか避けているが、支援魔法がなけりゃ避けれるサイズじゃねぇぞこれ。


だが、支援魔法のおかげで冷静でいられる。

巨体が近くを通るときに上級魔法の熱をできる限り高温にしてぶつけると硬い皮膚が少し溶けた。


これは続ければいけると思ったが、マジックシェアをしていてもMPがもたなそうだ…


どうする。

この硬い皮膚が邪魔だ。

熱で一部だけでも溶かせれば…。



いや、硬い皮膚だろうがもしかしたら。


ムカデの巨体を避けながら、アイテムボックスからダメージ貫通の剣を取り出し、背中に背負って固定する。


剣の練習はカマキリとしかしていないから、今回は加護だけもらうことにする。


尻尾?が俺に向かってきたため、避けずに殴る。


「ギャーーーーッ!」


威力負けし、壁まで吹っ飛ばされた。


でもダメージは通ってるみたいだ。


体が緑色の光に包まれて、傷が治っていく。


ここならムカデの体は届かないから、一度鑑定をつかう。



蠱毒の覇者 レベル89

種族:キングピード



レベル高いな。

それよりも今見たいのはPPだ。

確認すると少し減っている。

この硬いのを倒すには俺にはこの方法しか思いつかなかった。

PPを0まで削って殺す。


根気勝負だな。


とにかくヒットアンドアウェイを繰り返す。

ただ、一撃一撃を本気で殴ってるから疲れるし、せっかく整備したガントレットが見るからに歪んでいく。


どんだけ硬いんだよ。


暴れるだけだったムカデが意図的な攻撃を仕掛け始めてきた。主に噛みつきや口から出す液体かたくさんある爪での引っ掻きだけだから、なんとか避けきれている。


魔物相手にずっと回避の練習をしていてマジでよかった。


ただ、たまに使われる魔法は避けられず、麻痺状態になりかける。

抗麻痺丸を飲んでるから動けなくはならないが、動きが鈍ってしまうからすぐに新しい抗麻痺丸を噛み砕いて飲む。

だから抗麻痺丸の減りが早い。

でもさっきアリアからのスキル取得許可申請が来ていたから、抗麻痺丸がなくなってもなんとかなるだろう。



ガントレットだけで攻撃していると先にガントレットが壊れてしまいそうだから、マジックドレイン効果でMPが回復したら上級魔法の熱を使って、MPが減ってきたらまた殴るを繰り返した。


どのくらい経っただろう?

体感時間では10時間くらいだといいたいくらいに疲れたが、実際はもしかしたら15分も経ってない可能性もある。


まぁそんなことはどうでもいいか。

それよりもやっとムカデのPPが残りわずかになった。


おかげでムカデの動きも鈍い。


だからといって油断をしたら危険だろう。

残りPPが少しでもヒットアンドアウェイ戦法を変えるつもりはない。



地味だろうが勝つしか生きる道がないんだからな。






その瞬間は唐突だった。




変わらず近づいて殴っては距離を取りを繰り返していたら、急にムカデが動かなくなり、持ち上げてた頭側の胴体が倒れてきた。


避けてから鑑定を使うと『蠱毒の覇者』という名前と種族以外が表示されなくなっていた。


死んだのか?



ぱっと見は表面だけ溶けてるとこが数ヶ所ある以外は無傷だ。


ここはあえて解説を使ってみるか。



『キングピードの死骸』



どうやら終わったみたいだ。



その場で仰向けに倒れる。



背中を打って苦しくなるが、ひんやりした地面が気持ちいい。



さすがに疲れた。



それにまた死ぬかと思った。



でも…。




…楽しかったな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ