表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ企画進行中】  作者: 葉月二三
裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

248/377

ユリアとクレハとの最後の訓練




空が赤みがかってきた頃、夜というにはまだ早いが、戦闘を目的とするならそろそろ終わりを考えた方がいい時間だろう。視界が悪くなった状態を意識しての練習なら話は別だが。


「…それでは、リキ様お願いします。」


アリアも同じことを考えていたのか、とうとう俺の番がきたみたいだ。


最初に区切りよく終わったのはクレハだから、最初の相手はクレハなんだろう。


傷やPPはアリアの魔法で回復させているみたいだが、見るからに疲れている。精神的な疲れが表に出ちまってるのか、それともパワーリカバリーで回復できる上限があるのかはわからないが、どう見ても戦える状況ではないだろう。むしろここまで戦い続けたことを褒めてやりたいレベルだ。


それなのに、俺はこれからこんな疲れきってボロボロの子どもを叩きのめさなきゃならねぇのか?どう考えても虐待だろ。


考え直す気はないかという気持ちを込めてアリアを見たら、頷かれた。

さすがに予定変更か?


「…リキ様なら問題ないと思いますが、クレハさんの状態は気にせず、本気でお願いします。出来れば『威圧』も最大で使いながらでお願いしたいです。殺さなければわたしがなんとかします。」


予定に変更はないようだ。

アリアはクレハに恨みでもあるのか?


まぁ気乗りはしないが、一度受けた頼みを断るのも悪いしな。


一応クレハにも確認するべきかと思い、視線を向けたら目が合った。


「お願いします。」


凄えな。

クレハはまだやる気みたいだ。

あの目は嫌々やってるわけでもなさそうだし、よっぽど強くなりたいんだな。マゾではないと信じたい。


「…クレハさんにはこれから超えられない相手を体験してもらいます。今後強くなればなるほど強い相手と戦う機会が増えるかもしれません。ですが、圧倒的強者を前にするとどんなに鍛えていたつもりでも普通の人は動けなくなります。そのときに仲間に迷惑をかけて惨めな思いをしたり、最悪死んでしまうことのないよう、今のうちに体験してもらいたいと思います。今回は死ぬことはないと思いますが、死ぬより辛いかもしれません。死なずに死を体験できるのは貴重ではありますが、そこまでする必要はないかもしれないので、本当に受けるかはクレハさんの意思に任せます。どうしますか?」


アリアがクレハに最終確認を取った。


もしこれにクレハが同意するなら、俺はもうやるしかないんだろうな。


「お願いします。」


まぁクレハは断らないだろうと思ってたよ。


なら仕方ねぇ。やるか。


「後悔すんなよ。」


「はい。」


万全の状態のクレハなら俺もこんな余裕ではいられなかったが、今の状態のクレハには負ける気がしない。


窮鼠猫を噛むとはいうから油断するつもりはないが、マジで気が乗らねぇ。


だが、本人がやりたいっていうんだからな。


「…では、リキ様お願いします。」


「あぁ。テンコ、頼む。」


「はい。」


テンコが俺の体に入ったときにはクレハは既に構えていたから、俺も構えをとり、睨むようにして威圧を放った。


加減どころか、視線で殺すつもりで睨みつけたせいか、クレハが目を見開いて固まった。いや、正確には固まってないな。手足が凄え小刻みに震えている。


…えっと。これを殴るのか?


念のため後ろにいるアリアに確認の視線を送ると、アリアはビクッと肩を跳ねさせてから頷いた。


やべぇ、威圧したままアリアを見ちまった。すまん。


あらためてクレハを見るが、あれだけ隙だらけの俺を前にしても一切動いていない。


まぁいい。とりあえずスキルはなしで一発殴ろう。痛けりゃ意識を取り戻すだろ。


ゆっくり歩いて近づいてみた。

クレハは後ろに下がろうとしているんだろうけど、足に力が入らないのかわずかにしか動けてない。視線も定まってないし、今にも泣き出しそうだ。


前にかるい威圧に耐える練習はしたけど、本気の威圧には対応できてないみたいだし、長くこの状態にさせるのも可哀想かと思い、残りの距離を一息に詰めて下からすくい上げるように腹を殴った。


ガントレット越しのせいか、それともクレハが軽すぎるからか、ほとんど抵抗を感じずクレハが吹っ飛んだ。


人が飛ぶ距離じゃねぇだろと思うほどの距離を飛んだあとに地面を転がり、止まった。


なかなかクレハは起き上がろうとしないのに、なぜか視線だけは俺に向けていた。

クレハが望んで戦闘してるんだから、そんな怯えた目を向けるんじゃねぇよ。


『ハイヒーリング』


『フェルトリカバリー』


『パワーリカバリー』


クレハが吐血したところで、アリアが魔法をかけた。回復まで間をあけたのは痛みを覚えさせるためか?ただ、今のクレハはそれ以前の問題だと思うけどな。


少しクレハの怯え具合が和らいだように見えたが、それでもなかなか立ち上がろうとしないから、かるく走って近づき、その勢いを乗せたまま横たわっているクレハの腹を蹴り上げた。


やっぱりクレハは軽いみたいで、放物線を描くように飛んでいった。

ただでさえ殴り飛ばしたせいでアリアから離れちまったのに、勢いよく蹴り上げたせいで、このままだと元の位置から離れ過ぎるな。


『上級魔法:磁力』


ちょうどいい魔法があることを思い出したから発動し、俺が引っ張られないように踏ん張りながら魔法を強め、クレハを引っ張った。


無理やりに引っ張られたクレハの顔が苦しそうに歪んだが、気にせずに近づいてきたクレハの服を掴んで、アリアの方に投げつけた。


ボールと違ってうまく投げれず、だいぶ手前に落ちたクレハが地面を転がり、砂まみれになって止まった。血と砂が混じってるせいで、泥まみれに近い汚れ具合だな。


『マジパラ』


『エスプロジェ』


『ハイヒーリング』


『フェルトリカバリー』


『パワーリカバリー』


アリアに魔法をかけられたから傷とかは治っただろうに、クレハはまだ立ち上がろうとしない。


やる気がないのに続けても意味はないし、もう終わりでいいんじゃないかと思ったら、クレハがゆっくりとだが、立ち上がろうとし始めた。


俺を睨むように鋭くなった目からは涙が流れ続け、噛みちぎらんばかりに唇を噛み締めた口からは血が滴っていて酷い顔だ。それでも、やる気はなくはないらしい。


やっと威圧に慣れ始めてきたみたいだが、まだ戦闘以前の問題だ。起き上がるだけでそんなに時間がかかっていたら、構えるまでに何十回殺されるか。


だが、あえてクレハが立ち上がりきるまでは攻撃せずに威圧だけをかけて待った。

足に力が入らないのかグラグラと揺れながらも立ち上がり、小刻みに震える体を抑えるためか、ただ力が入りすぎたせいかはわからんが、唇を噛みちぎったみたいだ。

口から流れる血の量が増し、クレハがペッと勢いよく血と一緒に肉片を吐き出した。


『リジェネレイト』


唇を噛みちぎるとか、アリアの仕事を増やしてるだけのように見えなくもないが、クレハの雰囲気が少し変わった気もする。


震えは治りきってはいないが、産まれたての子鹿のような今にも倒れそうな状態ではなくなったようだ。


動かないところを見るにカウンター狙いか?


もしかしたらまだ動けないだけかもしれないが、念のためクレハの間合いのギリギリ外まで一息に距離を詰めて急停止し、クレハの反応を見たんだが、動く様子がない。だから、また一気に加速して俺の間合いに入り、スキルを乗せずに脇腹を殴りつけた。

視線だけはクレハから外さないようにしていたから、腰のひねりが甘かった気がするが、それでもクレハがくの字に体を曲げてまた吹っ飛んだ。


殴られては回復を繰り返すのもクレハがしんどいだろうし、アリアが諦めるくらいに一度で叩きのめしてやる方がいいかもしれないと思い、クレハの着地位置を予想して先回りをして、宙に浮いていたクレハを地面に叩きつけた。


衝撃が強すぎてバウンドしたクレハが一瞬空中で止まったところを狙ってさらに殴ると、クレハの腕がL字に曲がったのが見えた。


あんまりいい気分じゃねぇが、ここでやめたらアリアの回復が入ってエンドレスだ。

なら、徹底的にやって一度で再起不能にしてやるべきだろ。


『上級魔法:磁力』


かなり強めにかけると引っ張られるような感覚がした。それに耐えると、吹っ飛んでいたはずのクレハが少し離れたところで止まり、勢いよく戻ってきた。


重力のせいか若干落ちながら戻ってくるクレハに合わせて、斜め上に向けて殴り飛ばす。殴る瞬間に一瞬だけ磁力を反発するようにし、すぐにまた引っ張った。


これはけっこう頭使うな。


動くよりも魔法の切り替えのタイミングを合わせる方が疲れる。


ただ、クレハが無抵抗だから、多少のタイミングがズレたところでずっと俺のターンだ。


アリアが途中で回復を挟みやがるから、さらに速度を上げて繰り返した。


この作業にも慣れてきて、だいぶ速く殴れるようになったところでMPが半分を切ったから、最後にクレハを地面に叩きつけた。


グチャッと音がしたが、頭と鳩尾は避けて殴っていたから死んではないはずだ。それに途中でクレハは意識を失っていたっぽいし、後半は痛みも感じなかっただろ。

これだけやればアリアも満足だろうし、俺にとっては全く楽しくない戦闘だったが最良の結果なんじゃねぇか。


使いっぱなしにしていた威圧を解除し、体の熱を排出するように長く深い息をついてから、アリアに終わりを告げようかと思ったら、クレハがピクリと動いたのが視界に入った。


見間違いかと思ってよく見てみたら、右手が弱々しく地面をついていた。


マジかよ…意識があったのか。


起き上がろうとしているのかもしれないが、どう見ても正常な形をしていない右手で体を起こすのは無理だろ。むしろその右手を動かせてるだけで凄えよ。


『リジェネレイト』


『ハイヒーリング』


『フェルトリカバリー』


『パワーリカバリー』


アリアの魔法がクレハの歪に曲がった体を治していった。

いつも思うが、正常に戻ろうとしているはずなのに、逆再生のように無理やり戻されてるのって見ていて気持ち悪いな。


まぁクレハの意識が残ってたのは意外だったし、意識が残ったまま痛い思いをさせたのはちょっと悪いと思うが、さすがにもう終わりだろ。夕日もそろそろ沈みそうだし。


「アリア、これでもういいか?」


「…クレハさん、どうしますか?」


俺はアリアに確認を取ったんだが、アリアは無慈悲にもクレハに確認を取りやがった。


どうみても限界だろうけど、聞かれたらもう無理だとはいいづらいだろ。


「もう一度だけお願いしたいです。」


体は既に治っているだろうに、クレハは蹲るように頭を下げた。まぁ、土下座だな。


「もう一度くらいはべつに相手してやるから、土下座なんかする必要ねぇよ。」


「ありがとうございます。」


クレハは立ち上がり、袖で涙のあとを拭いた。汚れた袖で拭いたから余計に顔が汚れたが、気にしていないようで、レイピアを構えた。


「…ユリアさんも参加してください。」


クレハですらこんな状態だというのに、クレハより弱いだろうユリアに対してアリアが無慈悲なことをいい放った。

ユリアの顔が引きつっているが、すぐに拒否はしなかった。

いや、そもそも拒否するつもりがないのか、なんか覚悟を決めた顔になりやがったぞ。


「はい。」


ユリアは返事をしてから歩いてクレハの隣に並んだ。


「クレハちゃん。私は作戦とか決めても、あの重圧の中で予定通りに動ける気がしないから、合わせてくれると助かる。もし私が動けなくなったら放置していいからね。」


「善処はします。ただ、私も思うように動けないので、間違って攻撃してしまったらすみません。」


「訓練だし、アリアさんがいるから、今日は私への攻撃は気にしなくていいよ。」


ユリアは笑って安心させようとしたのかもしれないが、顔が引きつっているせいでうまく笑えてない。


2人が構えるまで待ち、準備が整ったっぽいから、俺は2人を視界に収まるように威圧を発動させた。


さっきと同じように出来る限り強めにかけたつもりなんだが、クレハの震えはさっきより小さいし、ユリアは初めてだろうにクレハと同じ程度にしか震えてないように見える。

もしかしたら精霊と合体してる恩恵とかがあるのかもな。


ただ、2人ともまだ腰が引けてるから、戦いになるかは怪しいが。


俺が近づこうと足に力を入れたら、ユリアの視線が下に動き、嫌な予感がしたから一度斜めに移動した。そしたら俺がもといた場所とユリアとの間に土の棘が生えた。


あの棘の鋭さからして本気で殺す気みたいだな。


棘を生やすことに集中したせいかユリアは斜めに跳んだ俺を見失ったようだが、クレハは俺から視線を外すことなく、俺が近づくのに合わせてレイピアを振った。


レイピアは突き専用の剣だと前は思っていたが、クレハやジャンヌが持っているレイピアは一応刃もついているのは知っている。


だからクレハの間合いのギリギリ外で止まったんだが、クレハが大きく踏み込んできたせいで予想以上にレイピアが伸びて首を狙ってきた。


止まるつもりで近づいていたとはいえ、この状態から後ろに退がるのは厳しいと思い、視線を外すのは嫌なんだが仕方なく前に屈んだ。


後ろ髪が風に揺られるのを確認しつつ、踏み込もうとしたところで目の前に空気の塊が見え、咄嗟に横に跳ぶとその空気が破裂した。


思ったほどの威力はなかったから、そのまま殴っても平気だったみたいだが、クレハが風に押されて後ろに軽く飛んだから空振ってた可能性もあるし、攻撃を中断して正解だっただろう。


次はどう攻めるかと考えようとしたら、合体しているテンコから若干怒っているような感情が流れてきた。


「テンコ、どうした?」


気のせいかもしれないが、一応クレハたちから距離をとってテンコに確認した。


「精霊、邪魔する。黙らせる、いい?」


今のはユリアが精霊を使った技だったのか。でも、風ってことは使役してる精霊を使ってるわけじゃないから、テンコなら黙らせられるってことか?だとしたら精霊使いからしたらテンコは敵にしたくない相手だな。

だが、これは強いやつを相手にしたときを想定した訓練だっていってたから、出来ることはやるべきか。


「じゃあ、頼んだ。」


「はい。」


俺がテンコとのやりとりで少し止まっていた間、クレハもユリアも攻めてはこなかった。

多少動けるようにはなったみたいだが、まだいつも通りに動けないからヘタに追わないようにしてるのかもな。


まぁ、出来ないのに馬鹿みたいに突っ込むよりは賢いが、そんなぎこちない動きで俺にカウンターを決められると思ってるならナメすぎだろ。


まずはユリアから潰すことに決めて距離を詰めようとしたところで、テンコが何かをしたような感覚があった。だが、そのせいでとくに違和感が生じたわけではなかったから、そのままユリアとの距離を詰めると、ユリアが驚いた顔をしていた。

あぁ、また精霊使って攻撃しようとしたのをテンコに邪魔されたのか。そりゃ驚くわな。


ユリアは慌てて防御姿勢をとりながら水の膜を張ろうとしてたみたいだが、水が集まる前に俺は右手でユリアのクロスした腕の上から殴りつけた。


ガードされたはずなのに余り抵抗を感じず、ユリアは地面を削るように転がった。


殴る角度を意識しなかったから、身長差のせいで斜め上から殴りつけてしまい、短い血の道を作っちまった。

これは見てるだけで痛い。


その光景から目をそらすようにクレハに視線を向けたら、既に距離を詰めていて、攻撃体勢に入っていやがった。


カウンター狙いだろと決めつけて油断してた。


だが、万全でないクレハの剣速は目で追える程度しかなく、半歩後ろに退がって避け、即座に距離を詰めて脇腹を狙った。


クレハが体を捻って避けようとしたのを無理やり腕だけで追ったせいで、引っかけるように殴ってしまい、クレハの脇腹が服ごと少し抉れた。


そういやクレハの革装備以外はただの服なんだよな。スキルを使ってないのに服が簡単に破れたところを見るに防具に被膜の加護は付与されてないんだろう。


クレハの顔が明らかに歪んだが、踏ん張りをきかせて剣を返してきた。そのせいで脇腹から血が噴き出すが剣速はさっきより速い気がする。でも、それでもまだ俺の観察眼で追える程度だから、ガントレットでレイピアの刃を握り、引き寄せながら腹を殴った。


一瞬レイピアが引っ張られる感覚があったが、殴るために力が入ってレイピアの刃を強く握っていたせいで、クレハがレイピアを手放して転がっていった。


レイピアの持ち手の構造がよくわからないが、凝った装飾のせいで簡単に手放せなかったのか、血がこびりついてやがる。見間違いじゃなければ肉片が付いてるようにも見えるが、その肉片が一瞬指に見えた気がしたから即座にレイピアを放り投げた。


傷はアリアが綺麗に回復してくれるから平気だといっても、グロいのなんて出来れば見たくはねぇからな。見慣れてはきてるから我慢はできるが、わざわざ見たいわけじゃねぇし。


今回はアリアが離れているから声が聞こえないが、吐血しているクレハを淡い光が包んでいるから、魔法を使ったんだろう。


後ろでユリアが動く気配がして振り向くと、さっきサーシャに使ってた水の針が壁に見えるほどの量で飛んできた。


大きく横に避けるしかないかと思ったら、テンコが俺とユリアの間に突風を発生させ、勢いを失った水の針が落ちて地面に染み込んだ。


精霊使い相手のテンコはもはやズルだな。


というか、もう夕日もほぼ沈んで暗いからそろそろ終わりにしたいのに、こいつらは元気過ぎんだろ。既に疲れてたうえにこれだけ痛めつけてんのに諦めないのは凄えと思うが、俺はもう疲れた。帰りたい。


たしか恐怖を与えるのが目的だったよな?


なら2人には悪いが、完全に心を折ってやれば諦めんだろ。


チマチマやるよりは2人のためにもなるだろうしな。


精霊術の身体強化を使い、会心の一撃のスキルを全身に纏わせてから、一歩でユリアに近づいた。

左手でユリアの肩を掴み、右手でユリアの左腕を握ったが、ユリアは無抵抗だ。


ユリアはさっきまでの速度でも追いつけなかったのだから、今のは気づいたら掴まれてたって感じだろうな。


…すまん。


俺はそのままユリアの肩から左腕を引きちぎった。


引きちぎった勢いのまま俺の後ろにユリアの左腕を放り、その右手でユリアの左脇腹を破裂させる勢いで殴ろうとして、ギリギリでやめた。


だが、寸止めでも身体強化にスキルまで使っていたせいで、ユリアは風圧で転がっていった。


アリアなら大丈夫だろうとユリアの体を上下に分けようかと思ったが、アリアがどこまで治せるのかを俺が知らないことに途中で気づき、なんとか止まることができた。ちょっと危なかったわ。

アリアが腕を繋げられることは知ってるから、腕を千切るくらいなら大丈夫なはずだ。


次はクレハだな。


視線を向けると、クレハが肩をビクリと跳ね上げさせたが、剣は構えたまま必至に俺を睨んでいる。


『エスプロジェ』


「…終わりにしましょう。リキ様、ありがとうございました。」


クレハに向かって踏み込もうとしたところで、アリアが終わりを告げた。


やっと終わったな。さすがに疲れた。


クレハはいつのまにかセリナに大きな布で包まれ、その上からかるく抱きしめられ、ユリアに目を向けると魔法か薬かは知らんが眠らされているみたいだ。


アリアは捨てられた左腕を拾ってからユリアのもとに行き、傷口の汚れをイーラに綺麗にさせてから魔法でくっつけ始めた。


セリナはあやすようにクレハに小声で何かをいっているようで、クレハはなぜか泣いている。同い年なはずなんだが、セリナの方が見た目的にも精神的にもお姉さんっぽいな。


というか、いつも通り俺が悪者みたいな雰囲気だ。


まぁいいけど。


戦闘が終わったからか、テンコが体から出てきて、ユリアを綺麗にし終えたイーラが俺に近づいてきた。


隣に並んだテンコと近づいてきたイーラの頭をなんとなく撫でながら、惨状を眺め、息をついた。


やっとユリアとクレハの訓練が終わった。


これで2人が冒険者をやめるとかいいださなきゃいいけどな。


…まぁ、そうなっても俺は知らん。



過ぎてから気づいたんですが、どうやら初投稿から3年経ったみたいですw


飽きっぽい私がここまで続けられたのは裏魔奴を読んでくれてる皆さんがいたからです。ありがとうございますm(_ _)m


これからもまだ長くなりそうですが、最後まで読み続けてくれる方が1人でもいてくれたら嬉しいなぁなんて思ってます。


ではあらためて…



3周年おめでとう!!!


あとがきに余計なこと書いてすみません_:(´ཀ`」 ∠):

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] テンポがいい。 一話の長さが絶妙。 [気になる点] こっちが気になる話を 主人公が興味ないから そのネタの話がそこで終わる。 伏線回収の楽しみが増える! [一言] 3周年おめでとうござい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ