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裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ企画進行中】  作者: 葉月二三
裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

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その体力が羨ましいわ


令和最初の投稿!


これからもよろしくお願いします!




何故か俺までイーラと訓練することになった三日間が終わり、今日からはユリアとクレハのレベル上げをするらしく、まだ日が出きっていない薄暗い時間にもかかわらず、俺らはダンジョンまで来ている。


今回はアラフミナ首都の東側にあるダンジョンなんだが、さすがにこの時間だと人がほとんどいない。


ここのダンジョンにくるのは久しぶりな気がするが、正直にいえば俺はあまり来たくなかった。


ここにくると嫌でもクリアナのことを思い出すからな。まぁ、今は自分の部屋があるし、この前アリアからもらったお香もあるから、そこまでの問題ではないんだけどな。


加護の付与時間の短縮方法を聞き出すためにマリナを利用したことに関しては申し訳ないと思わなくもないが、マリナが願ってた付与師のジョブを取得させてやったんだから、文句をいわれる筋合いはない。そもそもクリアナに選択肢は与えてやったんだから、感謝こそされ恨まれる意味はわから……なくはないが、筋違いだ。


そんなことを思いながらアラフミナの首都の方を見ていたら、だいぶ遠くにアリアとユリアが見えた。

薄暗くとも遮蔽物がなくて見晴らしがいいから2人が見えているというだけで、距離はまだまだあるんだが、あれくらいならあと10分もかからずに着くだろう。


この世界でも走って体力をつけるという概念はあるらしく、今日もダンジョンまでは自分の足で走ることになった。


戦闘技術に関しては訓練の必要性も理解できる。でも、速度や体力に関してはこの世界ならレベルを上げれば簡単に上がるだろうと俺は思うんだが、アリアがわざわざレベルを上げる前にこんなことをするってことは意味があるんだろうな。

ただの嫌がらせやイーラの変身を隠すためだけならアリアまで一緒に走る必要がないからな。


今回はパーティーを組んでレベル上げをする予定だから、アオイは来ていない。

メンバーは俺とアリアとイーラとセリナとテンコとユリアとクレハだ。7人だが、テンコはパーティー組めないし、経験値を取られることもないから問題ない。


そんで、登山と同じで自然と競争することになった。

だが、今回は登山でなく多少の高低はあるがほぼ平坦な道だし、距離も首都を経由するから草原を突っ切るよりは遠くなるといっても、15キロあるかないか程度だろうからそこまで遠くない。…あらためて考えると感覚がおかしくなっちまってるが、本気で走るなら15キロが今はたいした距離じゃねぇんだよな……。


だから、今回は俺も本気で走った。


大人気ないが、テンコと合体し、さらに精霊術による身体強化までして、ガントレットも装着しての全力だ。


PPも残り1割くらいになるまで使ったにもかかわらず、セリナと僅差での1着だった。

セリナってこんなにも速かったんだな。いつも思うけど、こいつらの成長はおかしいだろ。

たしかセリナの靴にも俺の靴と同じく駿足の加護はあった気がするが、俺はテンコの力を使ってんのに僅差とか、種族差ってここまで違いの出るもんなのか?


せめてもの救いはダンジョンに着いたときに俺と同じくらいセリナが死にそうになってたことだな。これでセリナが余裕そうな顔だったら、いくら勝負で勝っててもいたたまれなかっただろう。まぁ、なんとか威厳は保てたか?どのくらいテンコの力を借りたかはセリナにはわからないだろうしな。

まぁ、テンコの力を使いすぎて、テンコは既に俺の外に出てるから、バレてる可能性もなくはないが、あえて俺は何もいわなかった。


テンコは力を使いすぎたのか、地面で大の字になって寝ていた。

こんなことに力を使いすぎて悪いと思ったが、テンコの状態を気にする余裕なんかなかったから、死んではいないことだけ見て確認し、放置した。


俺とセリナのえずきがおさまった頃にイーラが到着したが、まだ息の荒い俺たちと違ってイーラは全く呼吸を乱してなかったし、疲れた様子もなかった。ただ、それでも今のところの人型での全力らしく、差をつけられたことを悔しがっていた。

俺からしたらその体力が羨ましいわ。


俺とセリナの息が整ってからさらに少しした頃にクレハが到着し、今は遠くに見えたアリアとユリアを待っているところだ。

アリアはあえてユリアに合わせて走ってるっぽいな。


「やっぱり本気のリキ様にはまだ勝てにゃいにゃ〜。」


俺が腕を組んでアリアたちが走ってくるのを眺めていたら、隣に並んだセリナがなんともいえない表情で話しかけてきた。


今回のはテンコの力をフルに借りたからズルみたいなもんだが、バレてないみたいだし、馬鹿正直にいう必要はねぇか。


「今回は障害物もなくただ真っ直ぐ走るだけだったから勝てただけだ。それに自分より上がいた方がやる気が出んだろ?つってもセリナなら俺なんてすぐに超えられると思うし、これからも励め。」


「はい!」


やけに元気のいい返事をしたセリナの頭をガントレットをはめたまま軽く撫でたら、セリナは気持ちよさそうに目を細めた。


「どうやったら人型でそんなに速く走れるの?」


イーラが俺に抱きついて質問してきたから、セリナの頭から手を離し、イーラの両肩を掴んで引きはがした。


「イーラは別の体で速く走れんだったら、人型で出来ない理由がねぇし、あとは慣れだろ。スタミ…PPが足りないわけじゃねぇから、セリナの動きを真似したらいいんじゃねぇか?」


「セリナの真似?セリナ〜ちょっと走ってみて〜。」


「しょ〜がにゃいにゃ〜。」


イーラが俺に首を傾げたあとにセリナの方を向き、急に頼んだんだが、なぜかセリナは嬉しそうにニヤニヤしながら走りだした。


何もない方に走り出したと思ったら、しばらくしたところでほぼ停止せずに直角に曲がり、また同じくらい走ったところで直角に曲がった。その後は緩やかなカーブで戻ってきたが、あの曲がり方は有り得ないだろ。いや、実際目の前でやっているんだが、それでも有り得ないといいたい。


イーラがさっそくセリナの真似をしようと走り出したが、曲がろうとしたところで失敗して転がっていった。


イーラは起き上がったあと、やっとあの曲がり方がおかしいことに気づいたのか、首を傾げてからセリナを見た。


「セリナ、もう一回やって!」


「しょ〜がにゃいにゃ〜。」


それからセリナがやるのをイーラが真似しようとしてるんだが、あんな物理法則を無視したかのような曲がり方を一朝一夕で真似できるわけがない。というか、そんな技を真似する必要ないから、普通の走り方とか体の動かし方を真似しろよ。


セリナは自分が優位に立てているからか、やけに嬉しそうにイーラに教えている。


「あの…私もセリナさんの真似をしたらもっと速く動けるようになりますか?」


俺がイーラとセリナのやり取りを見ていたら、息を整え終えたクレハが近づいてきて声をかけてきた。


「どうだろうな。種族が違うから絶対ではねぇけど、参考にはなると思うぞ。ウチではたぶんセリナが1番速いし、体の使い方が上手いのは間違いないだろうからな。ただ、あの直角移動は無理に覚える必要はねぇぞ。あんなん簡単に出来るわけねぇから、現段階ではなんの参考にもならねぇ。むしろ体に変な癖をつけかねねぇから害悪ですらあるかもな。」


「えっと…だとしたら、イーラさんを止めなくていいんですか?」


「イーラなら変な癖がついても問題ねぇから好きにさせとけばいい。」


イーラは変な覚え方をしたところで、もともとあの形が本体なわけじゃねぇから、いざとなれば形を変えて覚え直せばいいだけだろう。だから好きにすればいい。それにイーラならあんな人間離れした動きも出来るようになりそうだしな。それならそれでいい。


「カンノさんがそういうのであれば…。」


俺がいいたいことを理解したわけではないようだが、余計なことをいうのはやめて、クレハはセリナを凝視し始めた。


見てるだけでわかるのかとクレハに目を向けると、踵を上げたり腰を少し捻ったり腕をピクリとさせたりと微妙に動かしていた。

それだけで体の動かし方を把握出来んのか?


そんな疑問を抱いたら、俺に見られてることなど気にせずにクレハが急に走り出した。

しばらく走ったあとに止まり、またセリナを凝視しながら体を動かしてから戻ってきた。


「今まで使っていなかった筋肉まで使うのでまだ完全には真似出来ませんが、慣れたらPP消費を少なくできるうえにさらに速くなりそうですね。こういう細かい部分まで人から学ぶという発想がなかったので、ありがとうございます。」


…今のでセリナの動きを真似できるようになったのかよ。なんでそんな才能あんのになかなか強くなれないんだ?逆に不思議だよ。


「ずいぶん目がいいんだな。なら、これから人の戦闘なんかを見る機会があったら、武器の使い方だけじゃなくて、動きそのものも真似してみるといいんじゃねぇか?真似したうえで自分が使えそうなものだけ取り入れればいい。」


「はい。カンノさんのおかげで体の動かし方を自覚するのだけは得意だったことを思い出せました。ありがとうございます。」


なんかクレハがいってる意味がイマイチわからないせいで、話が噛み合っていないような気がするが、アリアとユリアが到着したから話は終わりだ。


「…お待たせしました。」


「ハァ…ハァ…お待たせ…ハァ…して、ハァ…すいません…。」


アリアは汗ばんではいるが、息切れすらしていないのにユリアはだいぶしんどそうだな。

だが、ある程度はペースを考えて走ったのか、なんとか喋れてはいる。


「いや、俺らは勝手に本気を出しただけだから気にすんな。」


「…はい。」


アリアは俺に軽く頭を下げたあと、クレハとユリアを交互に見た。


「…ユリアさんの呼吸が整い次第ダンジョンに入りますが、その間にあらためて今日の予定を話すので聞いてください。」


「「はい。」」


「…昨夜話した通り、2人には現在のジョブをレベル上限まであげ、神殿にて上位のジョブに変更してもらいます。変更予定のジョブは昨日聞いた2人の希望通り、ユリアさんが『精霊術師』、クレハさんが『聖戦士』になってもらう予定です。ただ、クレハさんの『聖戦士』に関しては確実に取得できるとは限らないので、その場合は別のジョブについてもらうことになります。クレハさんはそれでいいですか?」


「はい。」


「…ユリアさんは現在『精霊使い』のため、クレハさんより先にレベルが上限に達してしまうと思いますが、クレハさんが上限に達するまで付き合ってもらうことになります。いいですか?」


「はい。問題ないです。」


その後、ユリアが落ち着くまでの短い休憩となった。


「…では、既にパーティーは組んでいるので、ダンジョンに入りたいと思います。」


「「はい。」」


アリアを先頭にユリアとクレハがダンジョンに入っていくのを見ながら、まだ寝ていたテンコを抱えて俺らもついていった。

テンコはまだ力が戻っていないからか俺に入ってはこないで、デフォルメ狐になって首に巻きついてきた。

まぁ手が塞がらないならこれでいいか。


ダンジョンに入るとアリアが『リスタート』を使ったようで、どこかと空間が繋がっていた。


いきなり俺らの攻略済み最下層まで下りる気か?ならセリナを先頭にした方がいいんじゃね?


まぁここの40階くらいなら今さらたいした危険もないかとアリアが先頭のまま空間を潜り、『ダンジョンマップ』で確認すると上から3番目だからここは地下2階のようだ。


いきなり1階飛ばしで下りたから、ここに初めて来たユリアとクレハには今何階かわからないだろと思ったが、そもそも2人はジョブが冒険者じゃないらしいから『ダンジョンマップ』は使えないんだったな。


全員が空間を潜り終えたのを確認したアリアが走り出したから、俺らもそれについていく。


この階は全く魔物がいねぇなと思っていたら、アリアが壁に入っていった。


迷いなくそのままの勢いでアリアが壁に入っていったことにクレハとユリアが驚いて一瞬止まったが、2人も入っていき、俺らも入った。


中には歩く骸骨が2体いた。

どちらも武器や防具どころか服すら着ていない。


前はかなり大量にいた気がするが、最近誰かが倒しきったばかりか?それとも俺らが全滅させてからこれしか死人が出てないって可能性もあるか。


「…それではクレハさん。昨日教えた『ホーリーピラー』で2体とも倒してください。」


「はい。」


「我求む。彷徨える者を包み、救済せよ。」


『ホーリーピラー』


クレハが魔法を使うと、タラタラと歩いていた1体のスケルトンを光の柱が包み、光が収まるとそこには何もいなかった。

スケルトンが弱すぎるから今の魔法の威力がイマイチわからんけど、名前からしてアンデッド系に強い魔法っぽいな。ただ、救済せよとかいってたけど、滅してるよな。


というか、詠唱の短縮の勉強をしてたみたいだが、短縮してもわりと普通に詠唱が必要なんだな。

SPで『詠唱破棄』を取れることは教えてやらんのかね。


クレハがもう一度『ホーリーピラー』を使って残り1体を倒し、新しいのが現れないことを確認してからまたアリアが『リスタート』を使って、空間を潜っていった。


ん?このためだけに地下2階にきたのか?


クレハとユリアも不思議そうな顔をしながらもアリアに続いて空間を潜り、俺らも続いた。


まぁアリアがやることだからなんか理由があるんだろ。だから俺はアリアに指示されるまではただついていけばいいだけだ。


俺が思考放棄するなんて、いつものことだしな。


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