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裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚【コミカライズ企画進行中】  作者: 葉月二三
裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

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戦争参加者




村に着くと、門の前にはテンコとヒトミが立っていた。

サーシャには用があるっていっちまったから、臨時の門番ってわけか。


「お帰りなさい、リキ様♪」


「おかえり、なさい。」


2人とも昼は昼で仕事があっただろうに元気そうだな。


「ただいま。悪いが引き続きサーシャの代わりを頼むぞ。」


「「はい。」」


門をくぐり、2つしかない建物のうちの1つ、俺が住んでる家のドアノブに手をかけたとき、アリアが話しかけてきた。


「…この後、ケモーナ王国との件で話し合いをする予定でしょうか?」


ドアノブから手を離し、振り返る。


「その予定だが、どうした?」


そういやアリアにはいってなかったな。もしかしてもう眠いのか?


「…今回の話し合いの参加者を教えていただいてもいいですか?」


「ん?べつにかまわないが、俺とアリアとイーラ、セリナとアオイとサーシャの予定だが、なにかあんのか?」


「…サラも参加させてはもらえませんか?」


最近アリアはサラにいろいろ教えているようだから、会議的なものにも慣れさせたいってやつか?


「べつにかまわない。じゃあ食堂で待ってるから、サラとついでに龍娘も呼んできてくれ。」


龍の鱗は最高級の防具に使われるほどだっておっさんがいってたからな。本人がやる気があれば戦争に参加させても簡単には死なないだろ。龍だから戦闘自体は期待できそうだしな。


アリアに答えつつドアを開け、食堂に向かう。


「…はい。それでは一度失礼します。」


アリアは軽く頭を下げ、トテトテと小走りでサラのところに向かったようだ。







全員がテーブルについたのを確認し、会議を始める旨を伝えた。


「今回の件は他のやつらに伝えることを許さない。ことが済むまではここにいる者のみの極秘事項だと認識しろ。いいか?」


「「「「「「「はい。」」」」」」」


龍娘も含め、全員が返事をした。


「まずは本題からだが、10日後にケモーナ王国と戦争をすることになり、俺とセリナは参加しなければならなくなった。他の参加者は自由に決めていいといわれたが、今回は討伐とかではなく戦争だ。だから大人数の敵との乱戦になる可能性が高い分、普段の討伐以上の死の危険があると思う。イーラとサーシャと龍娘には参加してほしいと思っているんだが、そこまで踏まえたうえで決めてくれ。もちろん強制はしない。」


「…待ってください。」


アリアが反論とは珍しい。


「なんだ?」


「…わたしも参加します。」


「ダメだ!」


アリアがふざけたことをいうから、つい語気を強めてしまった。


「…なぜですか?」


「さっきもいったように簡単に死ぬ危険のある場所なんだ。だから体の作りそのものが簡単には死なないようになっているやつしか連れていく気はない。もちろんイーラたちだって不死身なわけではないから、同意がなければ連れていく気はないしな。」


だから最悪は俺とセリナの2人だけになる。


「…わたしも簡単には死にません。自衛手段は持ち合わせています。それに不意な攻撃に対しての防御手段もあります。」


それはルモンドなんちゃらのことか?

だとしたらその魔法を過信しすぎだ。確かにイーラとMPを共有すればほぼ無敵かもしれない。だが、あれは2人選ばなければならないうえにその後の攻撃手段がない。

ならいてもMPを食うだけの邪魔でしかない。


いや、アリアはそんな一つの魔法を過信するタイプではないか。他にも何かしらの手段があるのだろう。

だが、仮令そうでも連れていきたくはない。


「なら俺に勝てるのか?俺自身死ぬ可能性があるのに俺に勝てないようじゃアリアの言葉を信じれないぞ?」


「…リキ様に勝てないことは認めます。ですが、今回の戦争では必ず役に立ちますので、行かせてください。」


どうしたものか。

確かにアリアの支援魔法があるかないかでかなり変わってくるだろう。

アリアがいうように間違いなく役には立つ。だが、どうしても不安が残る。イーラやサーシャのように半壊しても再生出来るわけではないし、俺がいつでも護れるとは限らない。


でも、ここまで頑なに主張するアリアは珍しい。


「…もし肉体的なことを気にしているのでしたら、イーラの作る龍の鱗の装備で全身固めます。それならヴェルデナーガさんと同等の防御力を得られるかと思います。」


実際アリアは強い。頭ではわかっているんだが、どうにも認めたくない気持ちが強い。たぶんアリアの最初の弱ってる姿を見ているからか?

だとしても…いや、ここは認めよう。

かかってるのは俺の命だけじゃない。アリアがいるかいないかで生存率もかなりかわってしまうだろう。


龍の鱗で装備を固めて後方待機させれば大丈夫だろうしな。


「わかった。龍鱗の全身鎧で手を打つ。実際アリアがいた方が助かるしな。あと、ヴェルデナーガって誰だ?」


「僕だよ。」


龍娘が会話に割り込んできた。

こいつの名前はヴェルデナーガっていうのか。名前が長いな。


「そうか。ならこれからヴェルって呼ぶがいいか?」


「ん?愛称かい?本当は親からもらった名前を略されるのは好きではないけど、なぜか嫌じゃない。そうだね。ヴェルって呼んでくれ。」


「じゃあヴェル、あらためて聞くが、今回の戦争に参加してくれるか?ただ、先にいっておくが、ヴェルの場合は戦闘に参加するなら俺の戦闘奴隷となってもらう。悪いが一度奴隷になったら一生俺の奴隷のままだ。それでもいいならだがな。」


「前にもいったと思うけど、僕は君の奴隷になるのはかまわない。戦闘も好きだ。この戦争が終わった後も僕を戦闘奴隷として冒険に連れてってくれるなら、是非とも参加したい。」


予想外の反応だ。

自分で誘っておいておかしな話だが、奴隷にされるうえに戦争に参加させられるとか普通は断るだろ。龍族は種族的に戦闘狂なのか?


まぁ俺としては願ったり叶ったりだが。


「なら頼む。俺の奴隷になるにあたり、絶対に守ってもらうことが2つある。一つは“俺を裏切らない”こと。もう一つは“俺の命令は絶対”だ。」


いいながら席を立ち、歩いてヴェルの前までいき、座っているヴェルの頭に手を置いた。


何をされるのかわからないヴェルは少し緊張しているのか固まっている。


「その2つを守れるのであれば受け入れろ。」


奴隷契約を発動して胸を選択すると、少し抵抗を感じた。

前に拒まれたときはしばらく黒い何かが蠢いて戻ってきただけだったから、抵抗という感覚はなかった。ということは拒まれたとかではない別の原因があるのか?


そんなことを考えていたら、いつの間にか抵抗がなくなり、俺の右手から黒い何かがボトボトと落ちていき、ヴェルの胸に集まり、蠢き始めた。


ヴェルは初めて見る黒い何かに嫌悪感を抱いているようだ。そりゃそうだよな。普通に気持ち悪い。


しばらくして、黒い何かはヴェルの中に入っていった。


奴隷画面を確認して驚いた。なんだこの奴隷の数は…そうか、ガキどももまだ俺の奴隷だったな。早く自衛出来る程度のレベルまで上げさせて解放してやらねぇとな。


あらためてヴェルのステータスを確認する。




ヴェルデナーガ 14歳

龍族LV12

状態異常:なし

スキル 『人族化』『龍の息吹』『硬化』『肉体強化』

加護 『龍』『成長補強』『成長増々』『状態維持』『成長促進』『奴隷補強』




ステータスも人間と同じ表記なんだな。

アリア曰く龍族はどちらかといえば人間だっていってたしな。まぁ物理系のステータスは人族のLV12と比べたらかなり高いと思うけど。


見たことないスキルは4つか。


龍の息吹…吐息を攻撃に変換する、龍族固有スキル。


硬化…体表を硬化させるスキル。


肉体強化…肉体を強化し、物理ステータスを上げるスキル。


龍…龍に見守られ、与えられし加護。




龍の息吹ってあの口から火をはいて森の一部を丸焦げにした凶悪スキルか⁉︎ヴェルも使えるのかよ…。


それに硬化と肉体強化か…間違いなく近接戦闘向けだな。でも龍の姿になれば空を飛べるのにもったいないな。


「ヴェル。龍の息吹の攻撃範囲はどの程度なんだ?」


「どうだろう?風向きにもよるけれど、龍の姿ならこの村の端から端…いや、その半分くらいなら届くかな?全力でやったことないからわからないけど、今試そうか?」


「ふざけんな。この家を壊す気か?」


「…ごめんなさい。」


少し語気を強めにいったせいか、ヴェルは項垂れてシュンとした。

意外と打たれ弱いのか?


「べつにいい。今度試してもらうが、今は話を先に進める。」


そういって俺は席に戻った。


「話がそれたが、イーラとサーシャにも確認を取りたい。」


「もちろん行くよ!」


「我も参加する。」


まぁ2人は参加するだろうと思ってた。

もちろん断られたら仕方ないという気持ちもちゃんとあったが、戦闘大好きなこの2人が断ることはほぼないだろうと思っていた。


「ありがとう。今回の参加メンバーは以上だ。続いて作戦を決める。」


「ちょっと待ってくれ、リキ殿。妾がこの会議に呼ばれたのは戦争に参加するからではないのか?」


俺の進行を遮るようにアオイが質問をしてきた。

確かになんの説明もしないで連れてきたのだから、今の流れからしたらそう思うわな。


「いや、アオイには村に残ってもらう。いざという時のために。ここに呼んだ理由はその可能性がそこそこあると思っているからだ。」


「どういうことじゃ?」


「そうだよな。まずは今回の戦争がなぜ起こったのかから話すべきだよな。まぁ単刀直入にいえば、ケモーナ王国第一王女の婚約者を俺が殺したから恨まれたってわけだ。」


「違う!殺したのは私だし、今回は私の責任…。」


セリナは最初こそ強い口調で反論したが、最後は俯いて声が小さくなっていった。


「実際に手にかけたのがそうだとしても、俺が命令をして、結果あのクズ野郎が死んだ。べつにそれに関しては俺は悪いとも思ってねぇし、それによって今回の戦争になったんだとしても後悔してねぇ。だからこれは事実としてこういうことがあったってだけの話をしただけで、それ以上はどうでもいい。ただ、ケモーナ王国の第一王女はこのクズ野郎が心底好きだったみたいなんだよ。んでどうやって調べたのかわからんが、そのクズ野郎を殺したのが俺たちだとバレて、戦争になった。」


「…戦争の理由はわかったが、それがなぜ妾を村に残す理由になるのじゃ?」


ん?あぁ、肝心のセリナの話が抜けてたな。

そういやセリナの事情を知ってんのは俺とアリアとイーラだけだったわ。


「すまんな。話す順序を間違えた。」


あらためて頭の中でどう話すか考える。


「まず、そうだな。第一王女が惚れていたクズ野郎は第一王女よりセリナに興味があったらしい。それがバレたんだけど、そのクズ野郎はセリナが魅了の能力で誑かしたとかほざいたわけだ。それを真に受けた第一王女は王に頼んでセリナを奴隷にした。処刑ではなく奴隷を選んだのは苦しめたかったからだろうな。だがセリナを俺が買ったから、虐待しないどころか復讐まで手伝っちまったわけだ。まぁ姫様から戦闘奴隷になっただけでも十分に苦しんでるとは思うが、わざわざアラフミナ王国を敵に回してまで俺らを殺そうとするってことは第一王女は満足してなかったってわけだ。もちろん婚約者を殺された恨みってのもあるだろうが、そんな第一王女が戦争で俺とセリナを殺すだけで満足いくと思うか?俺とセリナの情報を掴んでるってことはたぶんこの村も知ってるだろう。だから、第一王女は戦争で俺がいないうちにこの村を襲う可能性があるんじゃねぇかなって思ったわけだ。もしそうされた時に村人たちを護れるやつが1人もいないのは困る。もちろん他のやつにも自衛できる程度の訓練はさせるつもりだし、他の仲間もそれなりに強くなったとは思っているが、念には念をだ。ぶっちゃければ村が襲われることがあろうがなかろうがアオイが残ってくれれば俺が戦争に集中できるっていう理由だ。」


「…ケモーナ王国はずいぶん腐った国のようじゃのぅ。トップがそれでは滅ぼしてあげたほうが民のためになりそうじゃ。まぁリキ殿を敵にまわした時点でいつかはそうなるとは思うが、今回はこの村の護りに徹するとしよう。」


なにいってんだ?

いや、了承したのだから戯言はスルーでいいか。


「頼んだ。…では作戦を立てたいと思うんだが、今回出てくるケモーナ王国最強の戦士と騎士団団長、副団長と第三王子の近衛騎士団と第七と第八部隊だったか?セリナはそいつらのことを何か知ってるか?」


セリナは目を丸くした。


「にゃぜSSランクににゃった冒険者がわざわざ戦争に参加してるの⁉︎」


「知らねぇよ。戦うのが好きなんじゃねぇの?んで、知ってんなら全て話せ。」


「彼は大剣使いで接近戦を得意としてる。ただ、身体能力が異常に高いから、ある程度間合いを取っていても気づいたら切られてたって反応をする賊が多かったよ。彼のことは強いということしか知らにゃい。団長は頭がいい。戦闘能力も高かったけど、ケモーナ王国最強の戦士や副団長と比べたらだいぶ劣るらしい。でも私はその頃戦いなんて無縁だったから、そんな上の次元の人たちの強さの違いなんてわからにゃかった。だから戦闘能力にゃんかは聞いた話にゃんだよね。でも模擬戦とかで団長が副団長に負けたところは見たことにゃい。副団長は王の付くジョブである獣王を持っている戦闘狂だよ。獣化した副団長はただただ怖かった。噂では1人でミノタウルスを無傷で倒したって聞いたけど、今思えばそれ自体はたいしたことにゃいね。でももしかしたら獣化したときの純粋にゃ筋力はケモーナ王国で一番かもしれにゃい。兄の近衛騎士はわからにゃい。あと騎士団の第七と第八部隊については詳しくわからにゃいけど、数字が小さいほど強い騎士が集まってるって聞いたよ。私が知ってるのはこのくらいだよ。」


思った以上の情報だ。

というかミノタウルスを無傷で倒したのをたいしたことないっていったか?こいつは…。


「…ケモーナ王国に魔導師はいますか?」


俺がセリナの情報を頭の中で整理していると、アリアが質問をした。


「いるけど全部で100人くらい?でもあんまり強いイメージはにゃかったかにゃ?あっ!団長は魔法も使うよ!」


「…ありがとうございます。」


アリアはそれだけ聞いて話し終えた。

それにしても聞いた感じでは団長は厄介そうだな。

副団長は力押しっぽそうだからどうとでもあしらえる気がするが、ケモーナ王国最強の戦士とやらはそうはいかねぇよな。


「そういやさっきのセリナのいい方だとジョブに王が付くのは珍しいように聞こえたが、貴重なジョブだったりするのか?」


「王が付くジョブは私は最上級のジョブって聞いてるよ。といっても私は父の“王”と副団長の“獣王”しか知らにゃいけどね。」


「…わたしが知る限りでもその2種類と昔の大災害の元凶とされた人間が所持していたとされる“破壊王”だけです。ただ、自分のジョブやスキルなどを隠す人は多いので、知られていないだけでもっと沢山あるのかもしれません。でも、他の王が付くジョブも王を超えるジョブもどの本にも書かれていませんでした。」


元凶とされた人間?大災害って毎回魔族がなんかするってわけではねぇのか?

まぁ今はそんなことより、王が付くジョブがいいジョブだってのは朗報だな。


「じゃあ俺が持ってる“魔王”もいいジョブなのか?」


全員の視線が俺に集まって、時が止まったように静かになった。


「リキ様!お揃いだね!」


静寂を破ったのはイーラだった。

無意味に抱きついてきやがったから、それを引き剥がして席に戻らせる。


「…リキ様は魔族だったのですか?」


アリアが恐る恐るといった感じで聞いてきた。


「ちげぇよ!そっちの魔王じゃねぇ。魔法関係で得たから魔法の王的な意味じゃねぇの?」


「…初めて聞きました。ですが、魔法の王という意味であるなら、間違いなく魔導師より上のジョブになるかと思います。つまり現在最高の魔法系のジョブではないでしょうか。さすがリキ様です。」


そうか。ならもうちょいレベルを上げたらファーストジョブにするか。


「すまん。話が逸れた。それで作戦なんだが…。」


さて、どうしようか。ヴェルに空から龍の息吹で攻撃してもらうつもりだったが、魔法を使うやつが100人もいるなら1人で空を飛ばせるのは危険だよな。


「…発言いいですか?」


俺が考え事をしていたからか、遠慮気味にアリアが確認してきた。


「どうした?いい案でもあるのか?」


「…はい。ただ、その前にリキ様の優先順位を教えてもらえますか?」


優先順位?


「どういうことだ?」


「…戦争さえ終わればいいのか、相手を全滅させなければいけないのか、他にもこちらの被害はどこまで許容できるかなどを知りたいです。」


そういう意味での優先順位か。

誰も死なないことを絶対条件にしたいが、戦争でその考えは甘すぎるだろ。だが、誰も死なせたくない。


「この戦争に負けることになったとしても誰も死なないことを第一にしたい。甘い考えなのはわかっているから、あくまで理想だ。相手に関してはどうでもいい。全滅させることにこだわるつもりはない。」


「…わかりました。それでしたら、サーシャが第七第八部隊、わたしは援護と牽制、ヴェルが空からの龍の息吹で敵の数を減らし、その間にリキ様とセリナさんとイーラで第三王子に近づき、イーラが近衛騎士、リキ様にその他の強敵を牽制していただき、セリナさんが素早く第三王子の首を取る。それが一番効率的かと思います。ただ、これだとリキ様の負担が大きくなってしまいますが、ケモーナ王国最強の戦士はリキ様以外が対峙すれば、ほぼ間違いなく殺されます。セリナさんなら少しは凌げるかもしれませんが、他の人が第三王子の首を取るまで持ちこたえられる可能性は低いかと思うので、この形が一番かと思いました。」


それぞれ対応する相手をあらかじめ決めておくってことか。


俺が一番危険なやつを相手するのはかまわないが、セリナが少ししか凌げないやつを俺が凌ぎ切れる気がしねぇ。だが、セリナの速度ならすぐに第三王子を殺せるだろうから、その数秒なら耐えられるか?


「いろいろ確認取りたいことがある。俺もヴェルの空からの攻撃は考えたが、相手に魔導師がいるならいい的にされるんじゃねぇか?」


「…今回、魔導部隊が出てくるという話がなかったので、魔法を使えるものはいても数人…多くても十数人かと思います。それに魔導師にも満たない魔法使い単体では空を飛ぶヴェルにダメージを与えるのは困難かと思います。もし複数人による大規模な魔法の発動が見られたら、わたしが止めるので問題ありません。」


そういやこの世界では無詠唱は珍しいんだったな。無詠唱でなければアリアが介入できるってわけか。その自信はたいしたもんだな。

他のやつがいっても納得しきれなかったかもしれねぇが、アリアがいうんなら間違いなくなんとかするんだろうな。


「わかった。ならヴェルには空から攻撃をしてもらう。他には第七第八部隊がどの程度いるのかわからねぇが、サーシャ1人で大丈夫なのか?」


「我は魔王だぞ?その程度出来んと思うか?」


「…サーシャのいう通り、普通に戦ってもなんとかなるとは思います。ただ、今回は確実性を取りたいので、サーシャには魅了を使わせ、第七第八部隊には仲間同士で戦ってもらおうと思っています。」


…考えがエグいな。だが、相手に同情などするつもりはない。


「じゃあ第七第八部隊はサーシャに任せるが、逃げるやつが出ても深追いはするなよ。余計なことして死ぬことは許さない。イーラとサーシャは今回に限り遠慮をする必要はない。持てる限りの力を以て敵を殺せ。ただ、全員禁忌魔法の使用だけは禁止する。」


イーラは暴走したら仲間ごと食いかねないからな。


「あと、今回は人間相手の殺し合いだ。イーラとサーシャに関してはなんの心配もしてないし、アリアは直接参加させるつもりはない。だが、セリナには自分の兄弟、ヴェルには多数の人間を殺させることになるが、殺せるか?」


「僕は大丈夫だよ。戦う気のないものを嬲るのはあまり好きではないけど、自ら命をかけた戦いに身を投じたものを殺すことにためらいを持つ意味がわからない。それが仮令同族だったとしても。」


龍族はまた考え方が違うのか、ヴェルがそう育てられただけなのかはわからないが、都合がいい。まぁしかもこのいい方だと人間は同族だと思ってないっぽいから、そこまで気にする必要はなさそうだ。


「兄は嫌いだったけど、今回は復讐のつもりはにゃい。でも、相手を殺さにゃきゃ私や仲間、最悪リキ様が殺されるのだから躊躇うつもりはにゃい。だから私も大丈夫。」


念のため識別で確認すると『本音』と出た。


「そしたら戦争の作戦についてはアリアの案でいく。当日に相手の出方によって多少の変更はあるだろうが、その時は俺の指示に従え。」


「「「「「はい。」」」」」


今度は戦争までにやることだな。

最悪俺が帰ってこれなくても村は生活を続けられるようにしとかねぇと。


「今後の予定だが…まず、戦争参加組は山ん中のダンジョンでレベル上げや戦闘訓練を行うのはもちろんだが、村のガキどもにも自衛できる程度にはレベル上げや戦闘訓練をダンジョンでさせるつもりだ。ガキどもに付き添うやつも必要だから、全員でダンジョンに行くつもりだが、畑は10日とか放置しても大丈夫なものか?」


確かああいうのって毎日何かしらやるもんだよな?都会育ちの俺にはよくわからんが、田舎のイメージでは毎日お婆ちゃんが畑を弄ってるイメージがある。


「…よくはないと思います。」


アリアが遠慮がちに答えた。

ダメではないけど良くはないか…そういやドライアドやトレントに魔族がいるっていってたよな?俺のイメージでは植物系だから、畑仕事とかやらせられるんじゃねぇか?


イメージと実際が違ってドライアドたちに畑の知識がなかったとしたら覚えさせればいい。魔族なら知能があるはずだしな。


「そしたら明日の昼まではいつも通りに仕事をさせておけ。俺はその間にドライアドやトレントのやつらと話をつけてくる。んでドライアドやトレントが俺の使い魔になったとしたら、そいつらに畑仕事をやらせて、全員でダンジョンに潜る。だからメンバー分けはアリアとサラで決めておいてくれ。ただ、俺とイーラとセリナとサーシャとヴェルはそのメンバーに含めないようにしといてくれ。」


「「はい。」」


他には…そういやガキども用の武器も必要じゃねぇか。


「あと、ガキどもが畑仕事に行く前に使いたい武器を聞いといてくれ。アリアとサラが勝手に決めてもいいぞ。」


「…聞いておきます。」


とりあえず話しておくのはこの程度か?


「他に何かあるやつはいるか?」


全員を見るが、特にはないようだ。


「そういや俺をフォーリンミリヤまで飛ばしてくれたエルフどもはどうした?」


「…リキ様に禁断魔法を使用したことにより既に死んでいたため、凍らせた状態で家の裏に保管してあります。」


凍らせて保管?

確かに状態維持するには適切なのかもしれないが、8歳の子どもが普通思いつくか?

いや、結果正しいことをしているのだから、余計なことをいうべきではないか。


「ならキャンテコックに連絡しておいてくれ。エルフは仲間と思うと約束しちまったから、死体があるなら返してやるべきだろ。いらないっていわれたら山のどっかに墓でも立ててやるとしよう。」


あいつらは俺が奴隷にしたことへの復讐をちゃんと俺だけに返してきたし、俺は結果無事だった。それなら死んだ後までどうこうするつもりはない。もちろんキャンテコックとの約束がなきゃイーラとサーシャに処理させたが、仲間と思うことにした以上、墓くらいは立ててやるべきだろう。


そもそもキャンテコックとの約束がなけりゃエルフの里を潰しにいってたかもしれねぇけどな。


まぁ復讐自体はありだと思ってるし、こいつらが俺に殺意を向けた理由も理解出来なくない。殺意を向けた相手は殺すつもりだが、既に死んでいるんだから、もうどうでもいい。

だからアリアたちが死体を放置してきたならそれはそれで良かったし、その場でイーラが食ってても問題なかった。

ただここにまだ死体があるから、最低限のことはしてやろうというだけのことだ。


「…はい。」


アリアも俺がそうするだろうとわかっていたっぽいな。

じゃなきゃわざわざあそこから死体を持ってきたりはしねぇか。


…ちょっと待て。


「さっき禁断魔法ってアリアがいったと思うが、なんだそれ?」


危なく流してしまうところだった。

まぁ聞き忘れたら忘れたで気にしなかったとは思うが、せっかく思い出したのだから聞いておこう。


「…使用を禁じられた魔法のことです。」


「禁忌魔法と何が違う?」


「…禁忌魔法は強力すぎるがゆえに遥か昔のエルフによって封印され、世界に1つずつしか存在しなくなった魔法です。禁断魔法はその禁忌魔法を他の人が使えるように、人間の手によって生み出された魔法の総称です。副作用が強すぎて使用を禁止されたため、それらの魔法は禁断魔法と呼ばれるようになったと本に書いてありました。」


つまりは禁忌魔法は魔法名として使われてるけど、禁断魔法はその生み出された魔法をそう呼んでるだけってことか?


「アリアはあの魔法が禁断魔法ってよくわかったな?」


「…魔法名の意味がわかったので、禁断魔法と判断しました。」


…ん?


「どういうことだ?」


「…魔法は初級・中級・上級魔法と例外である禁忌魔法以外は魔法名だけでは意味がわからないものになっています。ですが、人間の手によって作り出された禁断魔法は全て意味のわかる言葉となっています。今回でいえば『呪い』と『転移』です。」


……んん?


「いや、ファイヤーボールとかも火の玉だってわかんじゃん。」


「…確かに今では同じ名前が使われている魔法の法則性を読み解き、言葉の意味がわかりましたが、初めて聞いた場合は全く意味がわからないと思います。」


………んんん?…確かに訳わかんない名前の魔法もあるけどファイヤーボールは…あぁ、この世界では英語とかは使われてないのか。

たまに当たり前のように使ってたりするから気にしてなかったが、それも魔法を解読したおかげだったり…あとは昔の勇者が使ってた言葉が広まったとかか。

まぁその辺はどうでもいいが、漢字表記出来そうな名前の魔法は禁忌魔法並みに危険だと思えってわけね。思ったところで発動されたら手遅れだろうけど。


「なんとなく理解出来た。ありがとう。話がそれて悪いな。それじゃあ今日は解散だ。」


「「「「「「「はい。」」」」」」」


今日は本当に長い1日だったな。


早くシャワー浴びて寝よう。


そう思いながら俺は立ち上がり、先に食堂から出た。

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