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第9話『それぞれの闘い。』
「……」
序美が自分と葛藤している頃、愛もまた、自分自身と闘っていた。
出かける準備はすべて終わり、あとは家を出るだけ。
「……」
靴を履き、玄関に立つ愛。
ドアノブに手をかける。
「っ…」
けれどドアを開けることができない。
ドアを開けたら最後、序美との待ち合わせ場所に向かわなければならない。
でも、こわい。
「……」
かれこれ30分、愛は玄関にいた。
虚ろな瞳でチラッと腕時計を見る。
もう出なければ時間に間に合わない。
けれど、頭ではわかっていても、手も足も動かない。
「こわいよ…こわい…っ」
か細い声を上げ、その場にしゃがみ込む愛。
序美にメールして、今日は行けないと言ってしまおうか。
そんな考えが浮かんだ。
でも、愛はハッと気づく。
「序美は真正面から向き合ってくれている。…私が逃げてどうするの」
愛はゆっくりと立ち上がり、玄関のドアを開けて歩き出した。
「大丈夫。きっと大丈夫」
その表情は決意に満ちていた。