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第3話『無理は伝わる。』
家に帰っても、大好きな食事の時間でも、愛のことが頭から離れない序美。
「愛…」
気がついたら、愛の名前を呟いている。
すると。
〜♪
電話がかかってきた。
表示を見ると来人からだ。
『序美ー元気かー?俺、やっと仕事終わったー』
「……」
いつもなら嬉しい来人からの電話。
でも、今は。
序美はギュッと携帯電話を握り締める。
『…序美?どうした?』
反応がないため、心配する来人。
序美はこう言った。
「夕飯食べたばかりだったから満腹感に浸ってたのー♪ごめんね♪」
無理矢理いつものような明るい声を出す。
そっか、と返事をする来人。
「来くんごめんね!今からお風呂入るから」
『あぁ、そっか。わかった。
……序美』
「ん?」
『無理するなよ』
「─────」
そう言うと、来人は電話を切った。
携帯電話を見つめ、苦い笑いを浮かべる序美。
「……お見通し、か…」
ポツリと呟いた。