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第16話『肝心なこと忘れてた。』
序美と愛の絆がより確かなものになってから1週間が経ったある日。
序美は専門学校帰りの電車の中にいた。
そこへ、女性2人組が乗ってきた。
しっかりと手をつないでおり、明らかに友達という雰囲気ではない。
『もしかして…恋人?』
そう思いながら、無意識にじっと見つめてしまった。
すると、一人の女性とバチッと目が合い、序美はすぐ目を逸らした。
その後も気になり、チラチラと盗み見る。
二人はとてもしあわせな表情をしていた。
そんな二人を見ながら、序美はふと思った。
『愛と恋人さんも、ああいう感じなのかな』
それと同時にハッと気づいた。
『そうだ!
恋人さんの名前、まだきいてない!』
肝心なことをすっかり忘れていた。
それよりも違うことで頭がいっぱいで。
『夜になったら愛に電話しよう!』
そう決めた序美だった。